学校一の美少女である神田さんに誤送信で「好き」だと送ってしまった結果。
製作時間2時間の超大作。
疲れました。
拙い文章ですが最後まで読んで頂けると嬉しいです!!
この学校に通っている男子生徒全員に「女子生徒で誰が一番可愛いか」と言う質問をしたら八割の男子生徒はこう答えるだろう。
神田咲希と。
そんな僕─鈴木圭太─も誰が一番が可愛いかと聞かれたら迷う事無く神田さんと答えるだろう。
高校に入学して半年しか経っていないのだが神田さんの名は全校生徒にまで轟いている。
「一年にすげえ可愛い女の子がいるらしいぞ」
と、噂に噂を呼んでその噂の女子の名前が神田咲希だと言うのが広まるのにそう時間はかからなかった。
噂によると入学半年で既に10人以上の男子生徒が告白したようだ。
バスケ部のキャプテンに野球部の次期エース、サッカー部の期待の新人に吹奏楽部の貴公子、科学部のマッドサイエンティスト……etc。
彼ら以外にも数多くの男子生徒が告白したようだが全て玉砕。
そして神田さんは難攻不落の美少女だとか実は女の子が好きだとか……また噂が広まった。
バスケ部のキャプテンだとか野球部の次期エースだとか科学部のマッドサイエンティストだとか、彼らが告白して振られているのではこの学校には神田さんに釣り合う人なんて居ないのではなんてことも言われている。
まあとにかく神田さんの一挙手一投足が噂として学校中に広まるくらいには彼女の人気は絶大だ。
対して僕はどうだろうか。
見た目は悪くは無いがカッコイイとも言えない平凡な顔だ。
学力ではどうにか10位以内をキープしているが神田さんは一学期の中間・期末テストともに1位の成績を収めている。
運動能力も僕は平均の域を出ない。
ちなみに神田さんは物凄く運動神経が悪いらしい。
だがそれすらもギャップ萌え〜とか言われているくらいだ。
まあ簡単に言うと僕と神田さんが男女の恋仲になるなんて釣り合いが取れていないのだ。
学力以外平凡な僕、それに教室の隅で陰キャ生活を過ごしているような僕が神田さんにお近づきになれる事すら無いとクラスメイト達には思われているだろう。
そもそもクラスメイト達は僕の事を認識しているのだろうか……いやされていないだろうな……。
昔、一人、友達と呼べる人がいた気がするんだけど思い出せない……。
もう今ではクソ陰キャぼっちだ。
まあこんな感じで一見、僕と神田さんに関わりがある様には見えないだろう。
だがしかし僕のスマホには『SA☆KI』と言う連絡先が登録されている。
そう、これは神田さんの連絡先なのだ。
男子生徒達が喉から手が出る程欲しい神田さんの連絡先が何故か僕のスマホには登録されているのだ。
まずはその時の話をしよう。
そうあれは入学して1ヶ月経った頃だ。
「えーっと図書室図書室っと……あ、ここか。」
僕はホームルームで行われた委員会決めで図書委員になった。
元々、本は好きだしなにか委員会に入らなきゃいけないのなら図書委員になりたかったんだ。
そして人気の無かった図書委員に無事に入ることが出来てその日が初の当番の日だった。
昼休み、誰もいない廊下を抜けて図書室を見つけ扉を開け入ろうとした。
「あ、君も図書委員かな?」
「え?」
突然、後ろから声がかけられ驚きながらも振り向いた。
「あ、神田さん?」
「ふふ、覚えてくれてたんだ。」
「あ〜、まあ、うん。」
覚えてるも何も入学から1ヶ月が経ったこの頃には既に神田さんの名は全校生徒の間に広がっていた。
陰キャで友達のいない僕でもクラスメイトの噂話で顔と名前位は知っていただけだ。
「じゃ、ほら、図書室入ろ? 鈴木君」
「え、僕の名前……知ってたの?」
「んえ? 覚えてたわけじゃないの?」
「えーっと神田さんの名前と顔くらいはこの学校の生徒なら誰でも知ってるんじゃないかな」
「あ、あ〜。そうだよね……うん、そうだよね……。」
あれ? なんか神田さんが落ち込んでしまった。
僕、何かおかしい事言ったかな。
「あ、あれだよ。名前覚えてたのは沢山友達作りたいと思って色んな人の名前を覚えようと思ってたからなんだ!!」
「へぇ〜、そうなんだ。」
そういうのって普通クラスメイトの名前を覚えるだけじゃないのかなと思いつつも僕は相槌を打った。
まあどうであれ図書委員の時間は神田さんと居られると思うとこれは役得なのではないだろうか。
それから図書委員としての仕事として本の貸出管理をするために神田さんの隣に座った。
と、言っても図書室にやってくる生徒なんてほぼいない。
だから僕と神田さんは色んな事を話した。
神田さんは本以外にもアニメとか漫画も好きだって言うから今季の覇権アニメはこっちだ、いやいやあっちだ。などと、色々な話をした。
「あ、そろそろ昼休みも終わる時間だ。片付けて教室戻ろっか」
「あ〜、もう終わりかぁ。」
「あ! そうだ鈴木君!! 連絡先、交換しない?」
「え?」
本当に唐突になんの脈絡も無く連絡先交換のお誘いが神田さんから提案された。
僕は驚いて神田さんの方を向いて固まってしまった。
「い、いや、ほら、図書委員の仕事とかで連絡事項とかあれば便利でしょ?」
「ふふ」
腕をパタパタとさせながらそういった神田さんに思わず僕は笑ってしまった。
「あ〜笑った〜ひどーい」
「いや、ごめんごめん。連絡先の交換ね。僕でよければ良いよ。」
「えへへ。やった! ありがと!」
と、こんな感じで僕は神田さんと連絡先を交換する事が出来たんだ。
あれから半年近く時は流れているが未だに僕の連絡先に神田さんがいるのが信じられない。
他の男子生徒で神田さんの連絡先を持っているという人は一切聞かないしこれは物凄くレアなのかもしれない。
さて連絡先を神田さんと交換した訳だが図書委員の仕事の連絡……という訳ではなく神田さんから毎日送られてくる何の変哲もない普通のメッセージに返信する日々である。
会話内容もアニメの話だったりラノベの話、その他にもこの前友達と行ったカフェのケーキがおいしかったなどなど。
さて、前置きが非常に長くなって申し訳ない。
事件は本当に何の変哲もないある日に起こったんだ。
その日も放課後、学校から帰ってきてから自室で勉強したりアニメ見たり、時々神田さんから届くメッセージに返信してたりしてたんだ。
事件は母さんが夕食の買い出しに行っている最中に起こった。
それは母さんから届いた一通のメッセージから始まった。
『あんた、ナス好きだったわよね?』
僕はその時勉強をしていてかなり集中していたからメッセージの方にあまり目を向けていなかったんだ。
だけど早く返信しなきゃなぁと思ってスマホをとってメッセージを送った。
『好き。大好きだよ。』
と。
この時、僕は過ちに気づかずに再び勉強を再開した。
そして過ちに気づいたのは勉強が一区切りついた30分程経った後だ。
この間、僕は勉強への集中力が限界突破していて通知音にすら気づかなかった。
そしてスマホを手に取って画面を見た時に気づいた。
『え……鈴木君? 突然どうしたの?』
『その、大好きって……』
『ねえ鈴木君?』
「……あ、間違って神田さんにメッセージ送っちゃったよ……しかも好きって……。」
僕はこの時、絶望した。
◇◆◇神田咲希SIDE◆◇◆
私が鈴木君と初めて会ったのは小学5年生の時だった。
その時の私はメガネを付けてて前髪も目にかかるくらい長かった。
その頃の私は人と関わるのが苦手で教室の片隅で一人、本を読んでいるような女の子だった。
鈴木君と初めて会ったのは公園だ。
その時お母さんと喧嘩して家出する!!と言って家を飛び出した時だった。
まあ小学生の家出するなんて本気の家出じゃなくて子どもらしく少し遠出して帰るだけの家出だったけどね。
そしてたまたま行き着いた公園に鈴木君はいた。
鈴木君はベンチに座りながら一人で本を読んでた。
私はその時、公園にほかの子どもも居なくて少し暗くなり始めた頃だったから同じ家出仲間だと思って親近感が沸いちゃったんだ。
そして普段自分から話すことなんて無いのにその日はお母さんとの喧嘩で気が昂っていたのか鈴木君に声をかけたんだ。
「ねえ、君はここで何してるの? 家出?」
「そうだけど。君は?」
「私は神田咲希。」
「ふーん。僕は鈴木圭太。」
「へぇ。圭太君よろしくね!! ねぇ、どうして家出したの?」
「母さんと少し喧嘩したんだ。そして家出してやるってね。」
当時、私は私と全く同じ理由で家出した鈴木君を見て仲間だ!なんて思っちゃってそれからも暫く色々なお話をしてた。
そして本格的に空が暗くなり始めてそろそろ帰らなきゃなってなったんだ。
でも私はようやく普通に話せる友達が出来た気分でもっとお話していたかった。
だから私は鈴木君を呼び止めた。
「圭太君!!」
「なに咲希ちゃん」
「あのさ、明日もここでお話しない?」
「うん。いいよ。咲希ちゃん元気で沢山話しかけてくれるから好きだし。」
「えへへ。じゃあ約束!!」
「うん約束。」
そしてその次の日からも私はその公園に行って鈴木君と沢山お話した。
そして私は鈴木君が言ってくれた「元気で沢山話しかけてくれるから好き」を実行する為に鈴木君に沢山色んなことを話したんだ。
毎日毎日公園に行って鈴木君と沢山お話した日々は私にとってかけがえのないものだった。
だけどそんなある日、私は突然隣の街に引っ越すのが決まった。
鈴木君にお別れの挨拶も出来ずに私は隣街に引っ越した。
鈴木君と話せなくなって私は何日も塞ぎ込んだんだ。
多分、この時かな。
鈴木君の事が好きだったんだって気づいたのは。
何日も塞ぎ込んでたんだけど鈴木君のあの言葉を思い出したんだ。『元気で沢山話しかけてくれるから好き』って言葉を。
それからの私は学校でも積極的に色んな人に話しかけて転校先の小学校、それに進学先の中学校でも友達が沢山できた。
それに中学に上がってからは行動範囲が広がって色んなところに行けるようになったからもしかしたら鈴木君にも会えるかもしれないって思って容姿にも気を遣った。
そしたら中学の男子から告白されて戸惑ったけどね。
そんなこんなで高校の入学式になった。
クラス発表で鈴木君の名前を見つけたのは本当にたまたまだ。
一応同姓同名の別人の可能性もあるから鈴木君のクラスの横を通る時鈴木君を探したんだけどすぐに分かった。
だって鈴木君は昔も今も変わらず鈴木君だったからだ。
これは奇跡だーって家に帰ってから小躍りしたらお母さんに怒られちゃったけどね。
それに私が図書委員を選んだら鈴木君も同じ図書委員だったんだ。
もうこれは運命だと思って勇気を出して連絡先を交換した。
まあ残念な事に鈴木君は私の事覚えてなかったみたいだけどね……。
それから半年近く鈴木君とメッセージでやり取りして徐々に仲を深めて行く事ができてると思う。
まあデートとかはした事ないんだけどね……。
そして今日、家に帰って鈴木君にメッセージを送ったり本を読んでた時だった。
それは本当に唐突にやってきた。
『好き。大好きだよ。』
鈴木君からメッセージが突然送られてきて─
「うへぇえええええええええ!!!!」
─私は絶叫した。
◇◆◇鈴木圭太SIDE◆◇◆
あ、ああ……やってしまった。
僕は何で誤送信を神田さんに送ってしまったんだ。
しかもよりにもよって「好き。大好きだよ。」なんて文章送っちゃって……。
ど、どうしよう。とりあえず間違えたって言った方が良いのかな……。
い、いや、ど、どうしよう……ほんとに。
『鈴木君、そのこれって告白……って事なのかな?』
う、うわあああああ……ど、どうしたら良いのほんとに!!
ここでいや違う間違えたというのは簡単なんだ。
でも僕は神田さんの事をどうおもってるんだろう。
可愛いのは間違いない。
声に出して話すのがあんまり得意じゃないクソ陰キャぼっちの僕にも色んな話をしてくれて楽しいし。
『とりあえず会って話さない? 鈴木君の家から近い公園に集合ね!!』
あ、ああ……もう逃げられない……これはもう逃げられない。
どうなるんだろう。
会ってこっぴどく振られるのかな……。
そうなったら今まで築いたこの関係は無くなるのかな。
それは……嫌だな。
そうだな……もうここまで来たら後戻りはできないんだよな。
もう自分の気持ちにそっぽ向くのはやめよう。
僕は神田さんの事が好きなんだ。
「お待たせ。鈴木君。」
「いや全然さっき来たとこだから。」
ふ、ふぅ。遂に来た……。
緊張してきたな……。
「そ、それにしてもこの公園、神田さん知ってたの?」
「うん。小学生の頃にね、ずっと好きな男の子に会いに来るためによく来たんだ。」
「え、神田さん、ずっと好きな男の人いるんだ……」
「……うん」
え……これはもう振られるの確定じゃん……。
どうしよう……今からでも本当の事言うか?
……いや、もうここまで来てもらってそれじゃ申し訳ない。
せめてこの気持ちだけ伝えて潔く振ってもらおう……。
よっし!! 行くぞ鈴木圭太!!
「すーはーすーはー……。か、神田さん!!」
「……。」
神田さんはじっと僕の顔を見つめている。
ヤバい心臓が飛び出ちゃいそうだ。
「その、す、好き……です。」
な、なんだよこの陰キャ丸出しの告白は!!
人付き合いが苦手なクソ陰キャの末路か……。
友達も一人しかできたことないし。
……そう言えばあの子とはずっとこの公園で話してたんだっけか。
「ねぇ、鈴木君」
「は、はい」
「ちょっとそこのベンチ座ってよ」
「あ、え? わかった」
僕は神田さんの指示通りにベンチに座った。
懐かしい景色だな。
ここで僕はあの子と……。
「懐かしいね。よくこのベンチで私たち話してたよね」
「うん、そう……え?」
「覚えてない? 小学生の時、ここのベンチ座ってさ。二人で沢山お話したの」
「え、覚えてるけど……名前が思い出せなくて……」
「むぅ!!」
ひぃぇ、ごめんなさい。
頬をパンパンに膨らませて神田さんは僕を睨んできた。
「ご、ごめん。ここで女の子とお話してたのは覚えてるんだ。僕の……たった一人の友達。ほんとに神田さんなの?」
「も〜!! なんで忘れちゃうかなぁ!! はぁ……鈴木君らしいと言えばらしいけどさ。鈴木君が言ってくれた言葉今でも覚えてるんだよ? 『元気で沢山話しかけてくれるから好き』だって。」
ん? あ、ああ!! そんなこと言った記憶あるぞ!!
え、じゃあマジで神田さんがあの子なのか。
そう言えば……。
あ、あぁぁぁぁ!! 思い出した全部!!
「全部思い出した?」
「う、うん。ごめん、忘れてて」
「まあ良いけどさぁ。」
あ〜懐かしいなぁ。
て言うか、何か忘れてる気が……。
「あ! 告白の返事……。」
そうだった……。
俺、告白したんだ神田さんに。
懐かしすぎて少し忘れてた。
でも神田さんには好きな人がいるんだよな……。
この公園で毎日のように話してた男の子がずっと好きだってさ……。
「ふふ、じゃあ私も言うね?」
「あ、うん……」
「鈴木君、小学生の時からずっと好きでした。」
「え?」
「え? ってなによ。私言ったよ? 毎日この公園で話してた男の子がずっと好きだって。」
そりゃそうだけど……ん、ん〜……え、俺じゃんか!!
「はぁ。鈴木君、頭はそこそこ良いのに鈍すぎだよ……」
「あ、ごめん」
「ま、そういうとこも好きだけどね!!」
「お、おう……」
暗くて良かった。
神田さんにこんな好きだなんて言われたら顔真っ赤だよ。
「それじゃこれからよろしくね? 圭太君!」
「あ、あぁ。よろしく神田さん」
「もう。これから付き合うのに苗字呼びなんて他人行儀だよ!」
「あ、うん。わかった咲希。」
「よろしい!!」
まだ実感が湧かない……でも僕は神田さん……咲希と付き合うことになったんだな。
「じゃあ私、もう帰るね?」
「あ、うん。ごめんねこんな所まで来てもらっちゃって」
「ううん。ここは私達の思い出の場所でもあるんだからさ。」
「そっか。そうだね。」
「じゃっ、私行くね。」
「うん、じゃあまた明日、さ、咲希。」
「ふふ。じゃあまた明日ね圭太君」
「おう。」
今更ながら圭太君呼びが恥ずかしくて思わずそっぽを向いてしまった。
遅れてやってきすぎだバカヤロー
「ねえ圭太君。こっち向いて?」
「ん?」
僕は咲希の言う通りに咲希の方を向いて
「ちゅっ。」
「……え?」
「ふふ、じゃあね!!」
そう言って咲希は走って公園を抜けていった。
月明かりに照らされた咲希の頬はほんのり赤く染まっているように見えた。
そして僕は咲希の唇の感触が暫く忘れられずに暫く呆然と立ち尽くすのだった。
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