げんきになる本
ここは冬にも雪が降らないとある田舎町。
母1人子1人のお世辞にも裕福では無いけど2人仲良く暮らしている家族がいました。
普段はすごく明るく元気な母でしたがその日は朝から体調を崩し
ベットで眠っていました。
「母さん大丈夫?」
普段はご飯のお手伝いとかする6歳にしてはしっかり者のヤッカルでしたが母の初めての様子に朝からどうしていいのかわからずずっと傍で声をかけることしか出来ませんでした。
「ヤッカルごめんなさいね。少し寝たら治ると思うか…ゴホッゴホッ」
「か、母さん!」
ヤッカルはとりあえず母さんに何か食べさせないとと思い台所へ行きますが火の使い方とか分からず困り果ててしまいます。
「どうしよう…何か出来ることないかな」
ヤッカルは父さんが生前の時、困った事があったら本を読んで調べてご覧と言っていたのを思いだします。
「少しなら字も読めるからなにかのってるか見てみよう…」
病気の直し方ご飯の作り方火の起こし方何かないかと本棚にむかいます。
本棚を見るとたくさんの本が並んでいたのですがあまり字が読めないヤッカルは、とりあえずその中から【げんきになる本】と書かれた本を見つけました。
その本だけ手書きの手作りで。
「げんきになる本か母さんがげんきになれることが書いてあったらいいけど」
1ページめを見るとそこには
ヤッカルがげんきになるページ1-5
アンナがげんきになるページ6-10
と書かれていたので6ページ目にめくると【びょうきでげんきがない時は】と書かれたタイトルの下にトーマスおじさんの所に行ってみなさいと書いてあった。
トーマスおじさんは確かうちからちょっと行ったところに住んでる人だったことを思いだします。
「母さんちょっとトーマスおじさんのところに行ってくるね」
と慌てて外に飛び出しました。
外に出ると白い冷たいものが空から降っていました。
「なんだろ?空から何か?あめじゃないよね?」
初めて見る雪なのでヤッカルにはよくわからなかったけどとりあえず母さんが心配なのでトーマスおじさんのところに急ぎました。
「トーマスおじさんいます?」
おじさんの家の扉をノックして呼びかけると
「おーヤッカル1人でどうしたんだい?
「げんきになる本を読んで母さんが病気の時は、お、おじさんの所へ行きなさいって書いてあったの!」
「アンナさんが病気だって?よし急いで行こう!」
トーマスおじさんは家の中に戻りカバンを抱えてくると一緒にうちに来てくれました。
「アンナさん大丈夫かい?ちょっと見させて貰うよ。」
慣れた手つきで母さんを見てくれると
「疲れとこの寒さによる風邪だね。ここでは珍しく雪が降るくらい寒かったからねー大丈夫暖かくしてしっかり食べると治るよ。念の為薬もだしておこうかね。」
「すみませんトーマスさん。お金はまた持っていきますのでゴホッ」
「いいよ!アイツが生きてた時散々世話になったからね。それにげんきになる本に書いてあったみたいだから俺も嬉しくてね。」
とトーマスおじさんは少し照れながら言いました。
「すこい!この本ほんとうにげんきになれることがかいてある!」
ヤッカルはもっと母さんをげんきにさせたくて次のページをみてみます。
そこには【ヤッカルがそばにいてあげること】そして次のページには僕には読めない文字が所々に書いてあったから少し元気になった母さんに読んで貰うことにしました。
【アンナへ
君とヤッカルを残して先に逝ってしまう僕を許してくれ。
君と出会ったのはこの町で珍しく雪が降っていた日だったね。今でもよく覚えてる。君が坂の上から雪で足を滑らし転げ落ちる姿君は恥ずかしそうに落ちた荷物を拾っていた所を僕が手伝いしたのが初めて出会いだった。それから君と話しているうちに僕が君を好きになってしまってしつこいくらいにアピールしたのを覚えてるかな?アンナヤッカルの事をよろしく頼む。君とヤッカルに出会えたのは僕の宝物だよ。宝物にげんきのままでいて欲しくてこの本にげんきになる方法を書いておくね。】
それを読んでいた母さんが窓の外の雪景色を見ながら泣いていました。
「母さんにげんきになって欲しかったのに泣いちゃうなんて…」
と僕も泣きそうになりながらそう言うと
「ううん。すごーく元気を貰ったよ」
と頭を撫ででくれました。
「ありがとうあなた…」
Fin