懐かしい人の登場
あっという間に時は過ぎ私達は進級、2年生になった。
私は相変わらずアルフ様に毎日送り迎えしてもらい、アリシア様やダイアン様、ルッツ様とよく一緒に過ごしている。なんというか、すごく穏やかで平和な毎日。ずっとこんな風に過ごせたらいいのにな。
婚約者様がミリアさんに傾倒し、婚約解消となったエリス様は仲良しのシャルロット様、リーリエ様と以前より楽しそうに過ごしている。表情も明るくなり、わざと地味に装うことも止め、実は今彼女はかなり男子生徒に人気があるみたい!
彼女たちとも定期的にカフェ巡りをする程仲良しになった。
友達は増え、勉強も問題なし!私の学園生活は驚くほど順調である。
ちなみにミリアさんは……相変わらず。
最近は殿下と言い争いをする姿を度々目にするようになった。
「ミリア!どうして私の言うことを分かってくれないんだ!」
「何よ!ジャック様だって前はもっと優しかったわ!」
そして、1度目とは顔ぶれの違う取り巻きの男子生徒達に慰められている。
妃教育も相変わらず進みが思わしくないらしい。だから余計に、ミリアさんも殿下もピリピリとしているのかも?
2人のことをとても気にしていた王妃様は大丈夫だろうか?先日頂いた手紙では、あの香りのいいバラはあっさりと枯れてしまったのだと、少し落ち込んでいらした。ポプリを贈ると言ったのにごめんなさいと書かれてあった。
新種のバラは繊細で、きっとこの国の土や気候が合わなかったのだろう。最後にお会いしたときに疲れたご様子だったのも気になる。随分会えていないけれど、本来は手紙のやり取りをするのも憚られる立場なのだ。ひょっとすると、もうこのまま個人的にお会いすることはないのかもしれないとも思う。
私が平和で順調であるのと反対に、ミリアさんと殿下の2人や2人を取り巻く人たちに暗雲が立ち込めているように思えて仕方ない。
まあ、私が気にすることではないけどね?……でも、やっぱりたった3人、1度目の記憶を共有する者。いわば『同士』のような気持ちがあるのだ。
ミリアさんのことは正直前よりもっと好きになれないな……と思うし、殿下に情も全然ないけれど、それでもやっぱりどうせなら明るい未来を幸せに迎えてくれたらいいなと思っている。
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「私が生徒会ですか……?」
放課後職員室に呼ばれ、学年主任のセリーナ先生に言われた言葉に思わず聞き返してしまった。
「そうなのよ!最近殿下が忙しいらしくって、登校できない日が増えていてね。殿下が落ち着くまででいいから、是非レイスターさんに手伝ってもらえないかしらと思って」
3年生になるとその先の将来に向けての準備が忙しくなることが多く、生徒会は基本的に2年生が中心に運営している。今の生徒会長は殿下。確かにここ最近殿下をあまり学園で見ないなとは思っていたけれど、まさか登校していなかったとは。
それにしても……
「なぜ私なのでしょうか?殿下以外の生徒会の方はどうされたんですか?」
「もちろん、他の生徒会のメンバーは今まで通りなのだけど、殿下の抜けた穴が思いのほか大きくてね……レイスターさんに手伝ってもらえないかって言うのは、実は今いるメンバーからの提案なのよ」
「ええ……」
今の生徒会はほぼ殿下の側近が務めている。そんな中に私が入るなんて、またミリアさんが荒れそうな気がするんだけど……。
ミリアさんが手伝える程優秀であれば万事解決なのだろうけど、残念ながら妃教育同様、学園の成績もあまり奮わない様子。彼女には現実的に難しいだろう。
そんな時間があるならきっと教育の時間にするべきだろうしね?
「出来ればお願いしたいの!あなたは成績優秀者だし、皆からの人望もあるし」
じ、人望!私の心をくすぐることを言うわね……!1度目の記憶が色あせない私としては、クラスメイトや学園の生徒に声を掛けられたり頼られたりということが嬉しくて仕方ないのだ……!
ダメダメ!気を抜くと顔が緩んでしまいそうだわ……そっと気を引き締める。このままだと安易に生徒会の手伝いを引き受けてしまいかねない!手伝うにしても、できれば1度きちんとアルフ様にも相談しなければ。勝手に決めると多分拗ねる。
なんて思っていると、先生は気になることを口にした。
「それに、急遽留学生を受け入れることに決まってね……」
「留学生?この時期にですか?」
普通学年の始まりに来るものじゃないの?
「ちょっとね、調整に時間がかかってしまって」
「調整、ですか。どちらからいらっしゃるんですか?」
東のドリーミア王国?それとも南の共和国だろうか。これまで留学生を迎えた国は他にあったかしら……。
その時、どこか聞き覚えのあるような……ないような……?そんな声が聞こえた。
「ミラフーリスだよ、ルーシー」
はっと振り向く。そこには懐かしい人が――――えっ???
「久しぶりだね!会えて嬉しいよ!」
スラリと背が高く、アルフ様に負けず劣らず引き締まった体をしているのが制服を着ていてもよく分かる。肩のあたりで綺麗な金髪を一つにまとめ、にこにこと色気たっぷりの笑顔を浮かべる男性。とんでもなく美しい人だ。低くてちょっと甘い声は聞き覚えがあるようなないような、いや、やっぱりあんまりない気がする!
「えっ!?誰ですか!?」
「おい!わざとだろ!?俺だよ!――リロイだよ!!」
せ、成長期~~!!めちゃくちゃ仕事したな!?!?
「グライト王国語、上手くなっただろう?」
得意げな表情は確かに私の知ってるリロイ殿下だわ……!
見た目も声も、変わりすぎじゃない……!?
まるで美少女のようだったリロイ殿下は、すっかり色気溢れる男性に成長して立っていた。




