クラスメイトと仲良くなりました
1度目、友達もいなくてあまりにも学園で居場所のなかった私は何をしていたか?学生の本分、勉強に全力を注いでいた。他にやることもやりたいこともなかったし。楽しいことって1人だと虚しいだけだと知った時間。
そんな時間を経て2度目の今。
……授業へのやる気が全く起きない!!これでは駄目だとは思ってはいるのよ?でも、ただ1度やったことがあるくらいのレベルではなく、本当に全部頭に叩き込まれている。それしかすることなかったから!(自分で言ってて悲しい!)なので、全てが簡単すぎるのだ。すごく頭のいい人のセリフみたいだけど。教えてくださる先生方にも失礼だから、こんなこと思ってはいけないけど。正直退屈なのである。
「はあ……」
思わずため息をつくと、近くにいた令嬢達の目が、キラーンと音でも出そうな程鋭く輝いた!3人の令嬢が一瞬で私の周りに集まる。
「ルーシー様!お疲れですか!?」
「え」
「もしやお悩み!?」
「ええ?」
「思わずため息が漏れてしまうような時は甘い物です!よければ是非ご一緒しませんか!」
「えっ!」
次々と3人が代わる代わる口にする。これは……放課後デートのお誘い!?どうやら誘う口実を探してくれていたらしい!思わず気分が高揚する。
ちなみに彼女たちはいつも朝、かかさず挨拶してくださる優しい~!ご令嬢達!
「ちょっと!強引にルーシー様を誘うなどこのアリシアが許しませんことよ!」
あ、アリシア様!そうやって見咎めてくれること自体になんだか感激!でも嬉しいからいいのよ!むしろ……
3人のうちの1人が私の心を読んだかのようにアリシア様に近づく。
「もしよろしければ!アリシア様も一緒に行きませんか……!!」
「!!!」
「私達、アリシア様ともお近づきになりたいんですっ!」
「!!!!!……仕方ないわね、ルーシー様1人であなたたちと行かせるわけにはいきませんもの?私もご一緒してあげますわ!」
アリシア様……嬉しいのね。可愛い。
というわけで!初めて放課後にクラスメイトの女の子たちとカフェデートをすることになったのだった!1度目も合わせて数えたって正真正銘初めてだ。これは快挙……!
今日は一緒に帰れないと伝えたら、アルフ様はものすごく悲しそうな顔をしていた。うっ!でもごめんなさい……!女の子との約束は違えられないでしょう……!
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「私……趣味が欲しいんです」
放課後、カフェで各々注文したケーキを前に、ため息の理由を聞かれて答えた私の言葉に全員がポカンとした。え?そんなにおかしなこと言った?
「趣味がほしくてあんなに悩ましい声を出されていたの……?」
「てっきり特大の惚気話が聞けると思ってしまったわ……!」
「しっ!聞こえるわ?でも趣味が欲しくて悩まし気な声をだしちゃうルーシー様も……可愛い!」
「「それはそう」」
テーブルの向かいの席に座った3人がこそこそと何かを話している。
「何……?」
アリシア様は一切気にせずケーキを食べる。
「ルーシー様、このタルトすごく美味しいですわ!」
タルトか……これチーズケーキのタルト??確かにおいしそう。アルフ様も今度連れてきてあげよう。
3人は秘密会議が終わったのか私に向き直る。
「ルーシー様は今まで何か趣味はありませんでしたの?」
そう聞いてきたのは伯爵令嬢のリーリエ様。
「ありませんでした……今思えば、なかなかそれどころではなくて」
「ああ……お妃教育が……」
悲しそうに相槌をつくのは子爵令嬢のキャロライン様。
ごめんなさい、悲しいことは何もないのよ……。妃教育も忙しかったけど、ここ数年はすでに解放されていたわけだしね?
忙しかった理由は地味に色々ある。お父様の死の回避について考えたり……アルフ様のことがあったり……リロイ殿下に会ったり……そういえば、リロイ殿下は元気かな?
「あのように婚約解消がなされて、ルーシー様のお心が心配だったんです。……でも、無用の心配でした!バルフォア様と大変仲がよろしくて羨ましいですわ!」
きゃっ!っと頬を染めるのは同じく子爵令嬢のエリス様。
「ルーシー様、趣味を探すのはいいと思いますけど、自分との時間が減る!なんて、またバルフォア様が嘆かれるんじゃありませんの?」
アリシア様の言葉に確かにと思ってしまう。大げさに嘆き悲しむアルフ様の姿が想像できてしまったわ?
本当は趣味が欲しいと言うよりも何か楽しみが欲しいだけなのだけど。確かにアルフ様との時間が少なくなるのは私も少し寂しいわね……。私がそう言うと、キャロライン様がまた目を輝かせた。
「あの!バルフォア様とルーシー様のなれそめをお聞きしたいです!」
「!それは私も知りたいですわ!バルフォア様とルーシー様は今や令嬢たちの憧れの存在!」
ええ……?そうなの……?でもアルフ様、結構情けない感じの時も多いよ……?
なんて話していると、急にエリス様が黙ったことに気付いた。
「エリス様?どうかなさいましたか?」
「あっ……あはは」
苦笑いで彼女が指した方を見る。
「あら……」
なんという偶然だろうか。もうそういう縁なのか?
そこには向かいのカフェで誰かとお茶をしているミリアさんの姿があった。ん?ちょっと待て?一緒にいるの……同じ学園の男子生徒2人じゃ……???どゆこと?
にこにこと楽しそうな笑顔を浮かべるミリアさんと、その可愛さに少し頬を染めている男子生徒2人。
……正直、1度目によく目にしていた光景ではある。今回もまたなの?人気があるのはともかくとして、殿下の婚約者候補でありながら男性と出かけるのは有り?……2人じゃないからセーフか?でもミリアさんの立場を考えるならば、婚約者になれるかどうか、より周りの目を気にするべきなのでは?
じっと遠くの3人を見つめる私に、エリス様はちょっとばつが悪そうな顔をした。
「あの、2人の男子生徒のうちの1人、私の婚約者なんです……一応ですけど」
なんと……。




