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謙虚すぎる勇者、真の勇者を導きます!  作者: さとう
第四章・決戦の前、それぞれの思い

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新装備

 昨夜の飲み会は盛り上がった。

 この世界の成人は15歳からなので、ロランを除く全員が酒で乾杯した。

 もちろん俺もだ。というか、外見は16歳の少年クレスだが、中身は25歳の曽山光一だ。ゲームしながらビールを飲んだり、忘年会や同窓会で酒を飲むなんて当たり前だったからな。修行中に飲まなかった分、久しぶりの酒はとても美味しかった。

 

 マッケンジーの手配した酒場は小奇麗な居酒屋という感じだった。

 わざわざ個室を手配してくれたのは大いに助かった。なぜなら、酔っぱらったシルキーが歌いだしたり、ロランに無理やり酒を飲ませようとしたりで大変だったからな。

 さらに驚いたこと。メリッサ、酒癖がかなり悪くロランやマッケンジーに絡んで爆笑してた。


 マッケンジーはというと、酔うとかなり距離が近くなる。

 俺の隣に座り、しな垂れかかり、なぜか俺の太ももに触ったり、頬をすり寄せてきたり……耳を甘噛みされた時にはマジで死ぬかと思った。


 ロランはロランで腹いっぱいになると寝るし……みんな酔い潰れたせいで会計は俺が支払い、馬車を手配したり全員を部屋に連れて行ったりと大変だった。

 くたくたになった俺は部屋に戻るなり寝てしまい、起きると朝の三時頃だったというわけだ。習慣と言うのは恐ろしい、疲れていても早く目覚めてしまった。


「……よし!!」


 俺はジャージ……ではなく運動着に着替え、木剣を手に訓練場へ。

 久しぶりの早朝訓練だ。岩場の拠点では早朝訓練という名の筋トレしかできなかったからな。筋トレ後に朝食を食べて、そのままレベル上げだったし。

 木剣で素振りをしていると、気配探知に反応があった。


「おはよう。そして……久しぶりだな、クレス」

「シギュン先生!!」


 俺は木剣を下ろし、シギュン先生の元へ行って頭を下げる。


「おはようございます。そしてお久しぶりです。本来なら昨日のうちに挨拶するべきだったのですが……申し訳ございません」

「相変わらず謙虚で礼儀正しい奴だ。それに……強くなった」

「はい。ドラゴンの渓谷でのレベル上げは大成功です」

「そうか。ふふ、クレス、気配探知のスキルを得たな? 私がここに来るのがわかったのだろう?」

「はい。ドラゴンの渓谷では大いに役立つスキルでしたので、優先してレベル上げしました」

「……差し支えなければ、ステータスを確認してもいいか?」

「もちろんです。今の俺をシギュン先生に見てもらいたいと思います」



〇赤の勇者クレス レベル68

《スキル》

赤魔法 レベル46

剣技 レベル78

詠唱破棄 レベル45

格闘技 レベル58

短剣技 レベル57

弓技 レベル10

槍技 レベル62

斧技 レベル62

投擲技 レベル64

大剣技 レベル38

双剣技 レベル65

抜刀技 レベル68

馬術 レベル3

奴隷紋 レベル17

馬上技 レベル1

気配探知 レベル69



 俺のステータスを見たシギュン先生は、目を見開いた。


「す、凄まじいレベルだ……これほどの高レベル戦士は見たことがない。というか、歴代最強の勇者ですらレベル60と聞いたことがあるぞ」

「ロックドラゴンから始まり、ナーガドラゴン、トリケラドラゴンと強敵との戦いを繰り返した結果です。勇者のスキルと相まって、これだけの強さを得ることができました」

「ふ、もう私……いや、プラウド団長でも敵わんな。本当に成長したよ、クレス」

「ありがとうございます。ですが、これだけ強くなれたのも、プラウド先生やシギュン先生の教えがあったからです。俺はまだ、先生方から習うべきことが山のようにございます。これからもご指導、ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします」

「…………」

「わわっ!? し、シギュン先生?」


 なぜかシギュン先生に頭をガシガシ撫でられた。


「可愛い奴め。くそ、ああもう……いいか、そう言うことは言わなくていい」

「え?」

「とにかくだ。久しぶりに模擬戦を行うか。対ドラゴン戦ばかりだったのだろう?」

「はい!! よろしくお願いします!!」

「おっと、手加減はしてくれよ? まともに受けるだけで骨が折れそうだ」

「はい!!」


 木剣を構えたシギュン先生を相手に、俺は昂る気持ちを押えながら剣を構えた。


 ◇◇◇◇◇◇


 模擬戦を終え、俺とシギュン先生は汗をタオルで拭いた。

 シギュン先生、やっぱ俺好みだわ……年上女性の色香というか、精神が曽山光一だからなのか、汗を拭く女性ってすっごく綺麗に見えるんだよね。

 おっと、俺の性癖はどうでもいい。


「本当に強くなったな。クレス」

「そうでしょうか?」

「ああ。魔王封印も夢ではない。今世代の勇者がお前でよかったよ」

「…………」


 封印、か。

 封印なんて生ぬるい、討伐が目的だ。

 マッケンジーが何も言ってないってことは、何か考えがあるんだろう。ここで安易なことは言うべきではないな。

 

「あ、そういえば。シギュン先生はずっとジーニアス王国へいたんですか?」

「いや、何度かアストルム王国に帰還した。今回はお前がジーニアス王国へ戻ると聞いて来たんだ。ふふ、お前の性格ならきっと、早朝訓練を行っていると思ったぞ」

「あはは……」

「だが、前にも言ったはずだ。模擬戦をけしかけておいてこんなことを言うのは間違っているが……身体を休めるのも立派な訓練の一つだ。クレス、しばらく早朝訓練は禁止だ」

「えぇぇ!?」

「本当に真面目で謙虚な勇者だな……そこがいいところで、可愛いところでもある」

「か、かわいい?」

「ああ。お前は可愛い弟子みたいなものだからな。そうだ、弟子で思い出した。あのロランという少女は、お前の弟子なのか?」

「はい。未熟な身であることは承知しています。ですが、ロランは自分にとって大事な相棒なのです。俺が育ててやりたい」

「ふ……技だけでなく心も成長した。教えを請い技術を身に付けること、身に付けた技術を他者に教えることは全く違う。お前のためにもなるだろう」

「はい!!」


 シギュン先生は微笑み、俺の頭を撫でた。


「さ、朝食の時間だ。今日は身体の採寸と新しい装備を作るんだろう?」

「はい。ご存知でしたか」

「ああ。ここ数日、ブルーノ王国とアストルム王国のドワーフ職人が大勢出入りしているからな」

「そっか……」


 新装備か……ラスボス前の最強装備、カッコいいのがいいな。


 ◇◇◇◇◇◇


 朝食後。身体の採寸をし、データが職人たちに共有される。

 シルキーなど、スリーサイズや体重などを計られて心底嫌そうにしていた。でも詳細な情報が必要なので仕方ない。

 そして、鍛冶場に召集された勇者パーティー一同は、職人たちの質問に答えることに。

 職人は全員がドワーフで、ロランよりも身長が低い。だが全員筋肉質でかっこいい。職人って感じがして少し憧れる。

 俺たちは、今まで使っていた装備を前に、職人たちから質問を受ける。

 ちなみに、俺が質問を受けているドワーフは、俺の装備を作ってくれたロッコさんだった。


「お前さん、この剣を見ればすぐにわかる。ヒヒイロカネの剣をここまで酷使するとは、打った身としてはありがてぇぜ」

「あ、ありがとうございます」

「鎧……ヒヒイロカネ製だぞ、何に喰われた? 傷がついてやがる」

「ああ、これは天仙娘々……えっと、大きな虎に噛まれまして」

「トラだぁ? まぁいい。重さはどうだ?」

「軽くていいですよ。ドラゴンの爪にも耐えたことがあります」

「ふむ、もうちょい重量が増してもいいなら、ヒヒイロカネより硬い鎧が作れるが」

「……確かにそれもありですね。体力に自信はありますし、速度で戦うスタイルでもないので、防御力がさらに安定するのはありがたい」

「よし、わかった。ヒヒイロカネより硬ぇ素材はオリハルコンくれぇだが、オリハルコンは少量しかねぇのよ。あっちの細い兄ちゃんが『オリハルコンはロランの装備に』って言ってんだが……それでもいいか?」

「じゃあ、ロランの装備優先で。オリハルコンは惜しいけど仕方ないですね」

「わかった。その代わり、お前の剣と鎧はヒヒイロカネとタマハガネの混合素材で作ってやる。強度は申し分ねぇぞ」

「おお、ありがとうございます! ヒヒイロカネとタマハガネですか……」

「ああ。シンクノハガネっつう合金だ。ま、オレに任せておきな。デザインはどうする?」

「あ、じゃあ少しだけ変更を」


 と、ロッコさんと打ち合わせをする。

 大きなデザインは変えず、細かい部分を調整して、剣の素材をヒヒイロカネからヒヒイロカネとタマハガネのハイブリッドであるシンクノハガネに変えた。

 後は職人に任せる。完成が楽しみだ。

 さて、残りはシルキーたちだ。


「おめぇは魔法使いだろ? 杖は戦闘向きにしていいのか?」

「ええ。あたしは杖術も使うしね。鎧はいらないから、ミスリルで編んだローブをちょうだい。魔力を流せば硬質化する魔法式を付与しておいて」

「いいけどよ、なんで鎧はいらねぇんだ? 戦闘魔法使いは後衛でも胸当てくらい付けるだろ? 姉ちゃんのデカい胸に合わせたサイズで作ってやる」

「……いらない。だって、クレスが守ってくれるし。ドラゴンの渓谷で一度も攻撃もらわなかったし……あいつなら守ってくれる」

「……よくわかんねーが、わかったぜ」


 シルキー、何を言ってるのかよく聞こえないけど……なんか俺を見てる?

 マッケンジーは……お、まだ話してる。


「ボクの装備、修繕だけでいいよ。使い慣れた弓のがいい。マントもミスリル繊維で硬質化の魔法式付与をお願いね」

「ああ、わかったぜ。鎧はいらねぇんだな?」

「うん。クレスとロランちゃんがいれば、ボクが前に出る必要はないしね」

「ふん、信頼してやがるな」

「まぁね。ふふ、いい仲間たちさ」


 マッケンジーも俺を見てる……なんか視線が怖いな。

 残りはロランだ。


「え、えっと……剣は両刃で、刺突できればもっといいんですけど……私、斬るのと突くの、両方よく使うので。あと双剣はもう少し長めがいいです。逆に槍は短めで……その、槍は突くより投げて使ってたので」

「わかった。オリハルコン製で立派なの作ってやる。鎧は軽めのがいいんだな?」

「はい……いっぱい食べて鍛えたんですけど、どうも筋肉が付かなくて」

「ははは。まだ子供だしな、すぐにオッパイもでかくならぁ」

「お、おっぱ……ぅぅ」


 なんか赤くなった……何を喋ってんのかな?

 よし、これで装備はばっちりだ。

 装備を整えればいよいよ、魔王軍討伐へ向けて動く。

 もうすぐ、俺の真の戦いが始まる……絶対に負けないぞ。

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