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新・暁星堂騒動記 相続したのは魔法物件でした  作者: 星乃まひる
とある錬金術工房の営業日記
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青の洞窟 2

いざゆかん青の洞窟

お互いの準備にさらに1日時間を取って2日後、ジョルジュは荷物を持ったゴーレムを連れて現れた。

店から応接室に入るとゴーレムが着せられていたフード付きマントを外す。


「フラン。」


ルクーが出した燃えないミスリルガラスのお盆を見てシャンタルが声をかけるとゴーレムからガクッと力が抜けて中から七色に光る羽根のフェニックスが飛び出てくる。

「エマ、シャンタル。久しぶり!ねぇ、僕テーブルなんて燃やさないんだけど。」

契約を結ぶ火の精霊は多くがサラマンダーなのにジョルジュの契約精霊フランは世にも珍しいフェニックスだ。

様々な伝承もあるフランは密猟者に狙われることが多いので外出する時はゴーレムに憑依していることが多い。

もっとも精霊のフランを捕まえられる密猟者もそうそういないだろうけれど。


「フラン。元気そうで何より。久しぶりだね。」

不満そうな声を上げるフランに挨拶代わりに魔石を一つ差し出すとパクリと食べてくるんと回った。


室内を飛び回るフランにシャンタルもふわりと浮き上がり、子犬から精霊体に姿を転じる。

「フラン、またそのように飛び出したらゴーレムが急に制御をなくす!工房には貴重な素材も危険なものもあるのだぞ。」

「あ!ごめーん。でも大丈夫。ほら翼のフレア、もう出てないでしょ?」

フランは好奇心旺盛で可愛らしい性格でシャンタルによく精霊としての心得を説教されている。


「すまんな。シャンタル。フラン、よく聞いてくれよ。」


そんな可愛らしい精霊同士の交流を横目に怪しまれないように普段着を着ていたジョルジュが魔法鞄から次々荷物を取り出す。


ジョルジュが身につけたのは魔獣皮の黒い簡易鎧とブーツだ。

微かな動きにも音をたてる金属鎧は探索や狩りには向かない。もちろんジョルジュの加工だから革製でもただの装備じゃないんだろうけど。

私の方も探索と採取だから同じように上半身の革鎧にブーツだ。



3階に上がり扉を開くと何も無い部屋が広がる。

呼吸をひとつすると蝶番よりの位置に足を踏み出す。靴が触れた周囲に青い魔方陣が浮かび上がり私の体を包み込んだ。


光の幕が外れた途端に寒風が頬に突き刺さる。

「やっぱり寒い!!」

ガタガタ震えながら鞄を探っていると青い光に包まれてジョルジュが姿を現した。

かじかむ指先で小瓶の蓋を取り一気に飲み干し、ジョルジュにも同じものを差し出した。


「アガーの実で錬成したの。温まるから飲んで。あ、一気に飲まないと唇焼けるよ。」

「腹は大丈夫なのかよ?」

寒そうにしていたはずの私がケロリとした表情に変わったのを見たジョルジュも一気に飲んで軽く眉を顰める。

「・・・すごいな。腹と喉だけじゃなくもう全身温まってきたな。・・・味がちょっとではあるが。」


冬山に生えているアガーという木の実だ。ほんのわずか料理にかければスパイシーな辛みを楽しむことが出来る。

古い文献頼りに錬成してみて効果はてきめんだけど味の改良まではまだ到達できていない。

「すっごく効くけどこれ、需要あるか?」

顰めつらでジョルジュが聞く。

「うーん、ブルグじゃあんまりね。・・・山岳警備隊になら売れるかな?」

「そだな。でも効果あるな。もう温まってきた。爺ちゃんとの探索の頃に欲しかった。ここだけは夏にしか来なかった理由がわかるよ。」

ジョルジュがそう言うと短剣を柄から取り出せるように紐を緩めて歩き始め私もそれに続いた。


自ら光を放つフランとシャンタル、その次を私が歩き、しんがりはジョルジュが進む。

水音が聞こえるがこの洞窟の水源はまだ誰も探索していないという。

私たちがいきなり現れて誰かの目の前に登場するようなことがないようにちょっと狭いくぼみに設定された転移先は入口から3日行程の場所らしい。

もっとも青の洞窟は夏場は探索者も多く見かけるが、冬場はほとんどが洞窟内一泊程度の位置までしか潜らないらしい。



途中で洞窟内でしか繁茂しないような魔力草なんかを採取しながら奥へとゆっくりと進む。

パールスライムは水場を好むのでさらに水だまりを求めて先に進むとやがて対岸まで10メドルほどのため池サイズの場所にたどり着いた。


「このあたりならいるかな?」

声を潜めて尋ねる私にジョルジュが軽く首を傾げる。さっきまで鞘に入れていた短剣の柄に手をかけている。


合図されたフランが光を微かに放ちながら水面すれすれの高さで飛び回った。

フランの光を反射して水面がチラチラと揺れるのはそこにパールスライムがいる証だ。

私とジョルジュは顔を見合わせて頷くと、ジョルジュは前に進み出て私は水が届かない位置までシャンタルと下がった。


パールスライムは伸縮する触手に毒がある。水からはよほどのことがないと出てこない習性だからこれでほぼ安全距離を保てたことになる。


「エマはどんだけいるんだ?パールスライム。」

一方ジョルジュの方は膝くらいまでざぶざぶと水に入り込んでいくと、むんずとばかりに子犬ほどの大きさのスライムを掴み上げた。水面がざわざわと波立つ。

掴み上げられたスライムが触手を伸ばしてくるけれどジョルジュの顔には触れることが出来ずにきゅっと丸まった。

どうやら魔物の忌避薬を口覆いに使っているらしい。これなら比較的安全にスライムを捕獲することが出来るはずだ。


「麻痺の毒と体液が欲しいから生体を3体に魔石用に3体かな。ジョルジュは?」

スライムを渡された時のために私も手袋の防護機能を上げると呼吸を察知されないように口覆いの布を装着した。

「薬品を作るのは外注にしたから生体はいらなくなったな。魔石にしとくか。10体ほど頼む。」

「ええっ!多くない?てか発注なら私足りないかも。」

「了解。ちょっと逃げ出し始めたかな。」

そう言うと私の準備が整ったのを確認してスライムをぽーんと投げてよこした。

私は受け取るとそれを素早くひっくり返してまずは中央でうごめくのようなものに杖で魔力を流し込んだ。

これで魔力を飽和状態にしてスライムの動きを封じる。仮死状態にしても触手は危険だから慎重に作業し一息つく。動きを止めたスライムを広げておいた布の上に置く。時を止める効果があるので触れたものは溶解することも動くこともない。



その合間にスライムを2体ほど倒したジョルジュが私の作業の進み具合を見てはスライムを投げる、という作業を数回続けた。

「相変わらずいい手つきだな。」

「無闇な殺生は資源の無駄。スライムは環境保全の基本だからね。」


他の魔物が襲ってくることも変異個体に遭遇することもなく狩りは平和に終わることが出来た。



ひとまず順調に目的のパールスライムの採集は終了。


新キャラ(?)はジョルジュの契約精霊フェニックスのフラン。

精霊が捕獲されるのか?というツッコミはできればなしで

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