魔力過多症 5
☆☆お薬、のめたね。☆☆☆
「いやぁよ!!お薬嫌いだもん、ルカ元気だからいらない!!」
マルタに部屋から抱いて連れてこられたルカはこの頃急に開花したミモザの花の花粉が辛いのか真っ赤に充血した目で呼吸も辛そうだった。
素材集めから戻った後、シャンタルに手伝ってもらいながら2日かけて魔力調整ポーション試作品を仕上げた。
ちょうどミモザの花の開花期が近かったから、家を訪ねてみたら案の定ルカは寝込んでいた。
外部マナを遮断するためのコバルトブルーの瓶からひとさじ掬い出して口元に運ぶと、当たり前だけどルカは激しくイヤイヤした。
「ルカ、言う事聞きなさい。」
マルタが怖い顔をしてそう言うけれど、まぁ嫌がるのは仕方ない。
私はぷっくりと頬を膨らませてそっぽを向くルカの方に近づいて顔を寄せる。
「大丈夫。これは前のと違ってエマが改良したからね。」
にこりと笑うとルカは呼吸が辛いのか荒い息を一つついた。
「うん。そりゃママのクッキーみたいに甘いって言われたらさすがに負けちゃうけれどね。」
私の笑顔にルカの表情からちょっと残念観が伝わってくる。
そんなルカを子犬の姿になってついてきたシャンタルがつぶらな瞳で励ますようにそっと見上げる。
まるで「おくすり、のんでくれたらうれしいな。」とでも言いたげなその様子にルカはぐっと息をのんだ。
「わかった・・・。エマ、おりこうに飲めたらシャンタルと遊んでもいい?」
「いいよ。シャンタルもルカと遊びたいって着いてきたんだから。じゃ、がんばろう。」
差し出された薬はスプーンの上でとろみのある琥珀色をしてルカが開いた口に私はスプーンをそっと差し入れた。
ぎゅっとつぶられていた瞼がぱっと開く。
「おいちい。ママ、このお薬ならルカ頑張れるよ!!エマ、エマ。もう少しちょうだい。」
目をきらきらさせてルカが可愛いお口を開けるけれど、薬は薬、用法容量はきっちりとお守りください、なものなので蓋をしたらマルタに渡す。
ルカの瞳が本当にがっかりとした表情を浮かべているので味については満点でもいいかもしれない。
魔法薬の特徴でもある速攻効果発生でルカの呼吸はみるみる楽になり、目の充血も取れてきた。
体が楽になったルカはもうベッドから抜け出してシャンタルの毛並みを撫で始めている。
「シャンタル~。ルカすっごくがんばったよね?ね。」
なんて言いながらシャンタルを撫でているルカを見てマルタがしみじみと言う。
「・・・すごいわ。薬なのにルカがこんなにも食いついてるなんて。」
「効果は研究済みだしシャンタルと作ったから問題ないけど、ルカの反応見たらお味の方も大丈夫みたいだね。」
私はそう言いながら用法容量を書いた説明書をマルタに渡す。
「エマ、本当にありがとう。これ正式に発売したら教えてね。」
「もちろん。そうなったら魔力過多症に悩むお母さんたちに教えてあげてね。」
これからレシピをギルドに登録して特許をもらおう。そうすれば私以外の錬金術師や薬師が活用して魔力過多症の子供たちも楽になるだろう。
(すぐにマスターするには素材が足りないからそれまではまぁ独占。素材が普及する季節がきたらレシピ使用料で地道に稼がせてもらえるかな。)
はしゃいで遊び始めた我が子の姿にマルタの顔に柔らかい笑みが浮かぶのを見ながら私も満足の笑みを返した。
新 暁星堂の第1章でした。
次は月曜日更新の予定です。