発覚!新事実!
ジョルジュが呼んだ警備隊にカッパを引き渡し諸々の処理は終わる。
「今日は暁星堂の開店準備の進み具合を確かめにきたのよ。だけどちょうど面倒ごとの処理もできたみたいで来たかいがあったわね。」
組合長は先程の氷の形相が嘘のようにおっとり笑った。
こうやってにこやかに笑っていると本当に上品なおばあちゃまなのだから人間とは本当に恐ろしいものである。
「私が来たのは馬鹿弟子の後始末だよ。ルクーを再起動したんだろ?様子を見せてもらおうと思ってね。」
ドーラさんはそう言うといたずらっぽくウィンクして見せた。
「工房内に限っての限定免許じゃ不便だろうからこちらで特例免許にしておくよ。エマ、国家錬金術師でよかったねぇ。」
「私は付与術のレベル確認と暁星堂の取り扱い商品の説明を聞きにね。このお茶、初めて飲む味ね。」
ヨランダさんはそう言ってお茶のカップをソーサーに戻す。
「あ。それはシャンタルの育てた植物をガンディーサの師匠に聞いた方法で作りました。」
「あら。スマローラさん(私の師匠だ)の謹製。それは幸運だったわ。」
ルクーを呼んでドーラさんの前に差し出す。
本当ならば規格外進化を遂げたルクーを人前にさらしてもいいものか?なところだけれど、
今までの様子から見ればジョルジュからドーラさんには話が言っているようだから腹をくくった。
「そのままでいいよ。久しぶりだね。ルクー。元気に動けるようになって安心したよ。」
ドーラさんはそう言うとルクーの手を取ってじっと魔力の流れを図っている。
「ドーラ、久しぶり。私の魔力はエマのに変わった。でも調子は悪くない。」
「どうやらそのようだね。うちの弟子の扱いはどうだった?」
「それも悪くない。ジョルジュはいい魔術具師になれる。」
「お。よかったね。ジョルジュ。扱いは悪くないらしいよ。」
「ゴーレムに褒められて、そこ、喜ぶところですかね?」
傍らに控えたジョルジュがやれやれという表情になる。
「だけどまぁ、本当に自分の意志で会話できるようになるなんてねぇ伝説の話だと思ってたわ。」
ヨランダさんはニコニコとルクーからお茶のお代わりを注がれている。
さすがこのくらいのキャリアの持ち主にもなると東方の付喪神、なる理論を知っていたらしくルクーの件はすんなりと受け入れられた。
「どうしてだかギルベルタとかのあたりではそういう事象は起こらないのよね。残念だわ。」
とおっとりと笑っているけれどそうやたらとモノが意識を持ったら困るのではないだろうか?
「ゴーレム起動免許は来月にモールで取得するとして暁星堂の店番以外にはあまり出さないようにね。」
ということでルクーの査定は無事に完了した。
「で、ダニエラから聞いたけどあんたの得意はあくまでポーションとかの薬品類なんだって?」
ドーラさんが椅子に座りなおしてそう尋ねてきた。
祖父の暁星堂は紙やインクの加工、頼まれたものへの付与術が中心だった。
「はい。師匠の影響っていうより学院時代からそちらが面白くなってきてしまって。でも付与術も続けるつもりです。紋章は引き継いでいるので。」
祖父から受け継いだ錬金術紋をを起動させれば私は
「クラウディオとフランチェスカはそちらが得意でしたものね。やはり血は争えないのかしらね。」
両親の名前を出してヨランダさんが懐かしそうにそう言った。
「まぁポーションは店によって特徴も違ってくるし、数があって悪いわけでもないからね。で、他には何かあるのかい?」
ポーション類の他はルクーが貯蔵していたハーブティーや薬草由来美容品などをいくつかあげてみた。
土の精霊のシャンタルは土の恵である草花の魔力の扱いにも長けている。きっと質の高い商品が提供できると思う。
狩りで遠征するのは疲れるからそういう時に役に立ってもらえればいいなと思う。お茶や美容用品なら定期購入のお客もつきやすくなるだろう。
ポーションに関しては師匠から習得してきた中であまりギルベルタには普及してない形態のものもある。
先日エリックの怪我に試した傷口に直接噴射する使用方法のポーションとポーション=水薬なのに、丸薬化に成功した携帯ポーションがある。
特に丸薬ポーションはまだギルベルタにはない形式だ。開店申請と一緒に特許申請も出しているのでおそらく主力にすることが出来るはずだ。
新商品の査定も無事に済んだ。これで暁星堂の再開店については問題はなくなっただろう。
商品の確認も無事に終わり、改めてルクーの淹れてくれたお茶で一息つきなおす。
「エマが暁星堂を継いでくれて本当にありがとう。おかげであのトンマーゾもうまく追い払えたし、大事な転移陣もまた使えそうでよかったわ。」
(・・・・・・・・・・今、ヨランダさんなんて言った?)
私の表情がよほど変わったのだろう、ヨランダさんは上品に、ドーラさんは豪快に笑いだした。
「この転移陣を知ってるのはジョルジュだけじゃないのよ。私とドーラも設置には協力したのよ。」
「そうそう。いくらヴィンスが魔法陣に詳しいって言ったって一人でできる事には限界があるだろ。素材とかいろいろさ。」
「よる年並で素材採取が大変で。」
「買い入れもいいけど活きのいいのが欲しいよね。」
「そういうわけでこの年より・・・痛っ・・・が設置したのがこの暁星堂の転移陣ってわけだよ。」
ジョルジュがやっと肩の荷が下りた、と言いながらそう教えてくれた。
そもそも祖父も含めたこの3人で年齢的に素材回収にいけなくなったグチから転移陣設置してみようという実験が始まったらしい。
理事の中でも私の親世代を巻き込まなかったのは、万が一への配慮なのか叱られるのが面倒だったのか?
前者なら素晴らしい思いやりとも言えるけど、たぶん後者だな。絹の錬金術師さんは怖い。
「転移陣の基礎理論でここ変更したらどう?」
「で、生物素材を私の工房で」
「転移陣構築の魔術具をウチで。」
「そうなったら金属素材の錬成が必要だからジョルジュを巻き込もう。」
「あ、そうなるとバレた時の人質にいいかもしれない。」
「ひっそりとやるなら弟子も家族もいないからこの暁星堂でやればいいんじゃね?」
という感じでどんどんと設置していったらしい。
上質な素材でもこの組み合わせならそりゃ比較的容易に手に入っただろう。
テーブルの片隅で涼しい顔しているジョルジュに
「じゃぁ、なんでこの間来た時にすぐに教えてくれなかったのよ?」
と、噛み付くと
「師匠に止められてたんだよ。逆らえるのかよ?お前ならこの面子に!!」
じとりと睨まれた。
「はい!ごめんなさい!!無理です!!」
私たちの会話を老婦人二人組はニヤニヤと見守っている。
「ヴィンスが話したかどうかわからなかったし、問題が起こったら組合に飛び込んでくるかと思っていたのよね。」
「まさかエリック坊がジョルジュの方から話持ってくるとは思わなかったけどね。」
「もう少し年長者を頼ってくれてもよかったのですよ。エマ。」
寂しいわ、と上品に微笑まれたけど普通は理事にいきなり飛び込まないだろう。
「という次第であの出禁に暁星堂が渡るのは私たちとしても非常に不味いわけ。」
「だからエマが継承してくれるなら私たちは全力でサポートするわ。」
「諦めろ、エマ。お前がここで暁星堂やるのはもう逃れられない運命だ。」
呆然とする私の肩をジョルジュがなるべく優しく叩いて慰める。
「もうっ!!それならこれからは設置料いただきますからね!!」
作った人から隠そうとしてた第2弾。
足から力が抜けるよねぇ。
暁星堂再開店の話は次回で終了です。




