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転移陣の確認

ルクーが再起動して数日、倉庫や祖父の遺品問題は急速に目途が尽きつつある。


地下に作られていた祖父の素材倉庫は拡張しただけで転移陣はなくて入口にちょっとした罠があるくらいだった。

許可証かわりの魔石を持つか登録された者以外には火炎玉が降り注ぐ仕組みらしい。

もっとも解析したら注ぐのは火の玉どころではない火の滝だった。

(そうですね。こんだけややこしいモノを抱えてるんですものね、マトモなセキュリティじゃだめだよね。)


あと意外なことも分かった。

祖母はルクーを自分のレシピのインベントリとして使っていたらしく薬品錬成を得意とした祖母のレシピが使えるようになったのだ。

祖父の錬金術紋は受け継いだけど祖母のものは継承に間に合わなかったから自分でルクーを使って彫り込むことにした。


あとルクーはなぜか家事全般もレシピとして登録されていて私と兄の食生活は一気に向上した。

なんだかルクーが万能家事妖精になってしまったみたいでお得感満載である。


そんなけんなしつつ、ついに転移陣を見て見ようということになってジョルジュとエリックを護衛に突入することにした。


「今回の突入はボーマンの森にしようと思う。」

「転移陣って行く先が選べるのか?」

エリックの問いかけにジョルジュが

「当り前だろ。その時に必要なものを取りに行くのに行く先選べなかったら意味ないじゃないか。」

「帰還に2日間とかかかる問題は?」


「お前が飛ばされたのは初回限定の森、レバントは遠いから飛ばされたら早々戻ってこれないだろ?お前が戻ってこれたのは爺ちゃんの形見をきちんと身に着けていたからだよ。」

「あっぶね!外してたらアウトだったのかよ!」

戻るのに2か月もかかる異国に飛ばされれば二度と入る気にならんだろ、戻ってこれるかもわからないけどな。とジョルジュは笑うけど怖いから!!


転移陣は片道切符。戻りの魔法陣がないと生物はブルグに立ち入れないセキュリティ設定となっているのだそうだ。

素材、って時点で狩られているし、生きた状態で必要なときはそれなりに必要な魔法鞄に入れるらしい。




シャツにキュロットとマントいうちょっとした街歩きの服に見えないこともないが、いい素材を使って錬金術の処理もしているので皮鎧よりも防御力は高い。

皮鎧に手には戦斧といういでたちの兄が複雑な表情になる。どちらもわが家の部屋をちょっと覗くような恰好ではない。

見た目は手軽そうな野歩きないでたちにエリックは呆れた表情を隠さないけどジョルジュは見聞するように見回し、特にマントの文様に気がつくとニヤっと笑った。


ちなみにジョルジュのいでたちも私とさほど変わらないレベルだ。



「じゃぁ行くぞ。気ぃ締めてかかれよ。」

そう言うとエリックは思い切りよく扉を開いた。




「うぎゃぁ!!やだ、これ!!」

扉を開いたと同時に顔面に飛びかかった羽虫を兄がビシャッと払い落としてくれた。

「ピーピーやかましい!!森に飛ぶのはわかってただろうが!!」

「ありがとう!ってかなんかデカイ・・・」

黒い悪夢の存在がよぎって泣きたい気持ちで目を開けるとそこには・・・


「うわぁ!!」


ワサワサと茂った原生林が広がっていた。

しっとりと濃い緑に艷めく肉厚の葉が生い茂り、吹く風はブルグでは有り得ない熱をはらんで頬を撫でる。

(あ?)

振り向くと扉の形の向こうには何という事もないさっきまでたっていた木でできた廊下が見える。

でも前を向けば広がる密林。わかっていたけどなんじゃこれ?



ジョルジュはと見れば生い茂るつたを無造作にナイフで切り分けて進む道を作っていた。


『エマ、蔓に気をつけて。』

シャンタルの言葉を聞いて外していた私はゴーグルを装着した装飾品のようにつけられた魔石のひとつに指先で軽く魔力を流しこむ。

魔力の痕跡がわかるように仕込んだ魔法陣が起動していくつかの赤い光点が見えるが今はそう近くはない。

ちなみに私に敵意のないシャンタルとジョルジュは青く光り、魔力の少ないエリックは薄い水色に光って見える。

足元を見れば黄色に光るものが見えるのでしゃがんで確認する。肝臓の病に聞く苔、ポーションに入れて外傷の回復を早める薬草が見つかった。


「エマ。どうだ?」

ジョルジュの問いかけに意識を集中してゴーグルの情報を読み取る。

「50メーラ先にちょっといるかな。種類まではわからないけど。」

「そうか。・・・てか便利だな、それ。」

「素材さえ提供してくれれば錬成できるよ。」

「レシピ教えてくれよ。俺が自分で作りたいから。」

そういえばジョルジュは魔道具工房の錬金術師だった。

「レシピは特許対象になってるから支払いよろしく。」

「・・・・了解。」


そんな会話を交わしながら道に絡まるつる草を片手剣で切りながら進む。


特に魔物らしい魔物は出なかったし、せっかくなので見つけたセラニアの実をいくつか採取しておいた。

この実は魔法道具を精製するときに溶媒として使用するのでいくつあっても助かるありがたい実だ。


エリックひとりでいる時は帰還に2日間かかったのだが3人なのが良かったのか半日ほどで魔石が光り、帰還することが出来た。



「ボーマンの森は初めて行ったけど薬用植物の宝庫だね。鮮度も違うし。すごいよ。」

話し合いをするために湯あみではなく洗浄の魔術で汚れを落として居間に集まった。

「こんなんがあったら遠出する金は節約できるし、素材の段階で選別もできる、確かに設置したい気持ちはわかるよな。」

もう3度目になる兄のエリックは採取に使用したナイフを点検しながらそう答えた。


「な、便利だろ。俺も相当使わせてもらったけど、お前たちが住むのに不便なら残念だけど仕方ないよな。」

転移陣の削除には付き合うのでその時には採取させてほしいとジョルジュは言い、エリックも頷く。。

「ま、そうなるよな。俺たちみたいな狩人もいるし素材は・・・」


「転移陣は残そう。」

私の言葉に話していた二人が体ごとぐるりと振り返る。


「転移陣は残しておこうと思うの。やはり希少な素材が入荷できる環境は大事だと思うの。病人はいつ発生するかわからない!薬は鮮度が命なのよ!

だいたい転移陣の設置を難しくしている発動時の魔力の問題はおじいちゃんの魔法陣でクリアできてるわけでしょ。だったら利用しないと申し訳ないと思うのよ。

私、省魔力の研究するわ。そのためにも貴重な先人の研究成果は残しておかないとダメじゃない?」


「・・・もっともらしい御託並べちゃいるが素材取り放題環境が捨てられんだけじゃないか。」

兄が胡散臭いものを見る目で私を見ているが気にしてはいけない。

研究なんて純粋さだけで維持できる人間は少数派だ。便利なものがあるなら使うに越したことはない。

使えばメンテをするわけだから安全性は日々確かめることになる。こまめな手入れが破たんを防ぐのだ。


私のとっても理にかなっている(であろう)主張を聞く兄の目はとっても懐疑的だった。


「そこまで言うなら仕方ないじゃないか。どうせ削除するにしても一気には無理だぜ。俺も協力してやるよ。俺なら収集も護衛もできるしな。」

もちろん手伝うからにはそれなりの報酬として素材をよこせ、とジョルジュの笑顔が語っている。

私はジョルジュの笑顔にイイ笑顔で答えると差し出されたその手を取り固く握った。



「いたよ、まだ素材馬鹿がよ!あぁ!もう俺も付き合うわ。拠点こっちに移してくるからな!暴走はすんなよ!!」


エリックが諦めたように天を仰いだ。


脳筋エリックがコントロールに苦悩する(と思われる)素材バカ。

転移陣はこうやって残りましたとさw

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