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新・暁星堂騒動記 相続したのは魔法物件でした  作者: 星乃まひる
とある錬金術工房の営業日記
3/41

魔力過多症 3

実験成功。素材の確保へ。

素材採集の相棒は兄のエリック




 ルクーに倉庫を開いてもらい素材の中であるものを探すとひとまず通常の対処薬を錬成する。

魔法薬と通常薬の違いはただひとつ。調合に魔力による錬成という段階があるか否か、だ。


取り出した素材を魔力診断してなるべく素材品質を合わせる。

さらに魔力を均一に通すために刻んだり摺りつぶしたりする過程も慎重に行う。

この事前作業は大事なことだけど意外と見落としがちな過程だ。

学生時代、魔法使い志望の同級生なんかは素材をそのままぶちこんだりしていてよく爆発暴走なんてしてたもんだった。

調合鍋にいれると調合鍋に送る魔力と素材へ送る魔力にブレがないように錬成していく。

液体化や結晶化など錬成融合に適した素材を必要分用意したら今度は薬としての錬成開始だ。



基本から思いつくままにレシピの素材を互換できるものに替えていいっていくつかのパターンを作ってみた。少量だけど味見もしてみたけど随分と改善されたと思う。



 錬成に魔力を消費したのでルクーにお茶とお菓子を用意してもらい一息入れた。

魔力ポーションで回復することもできるけれど、急ぎではないしあまり多用すると体が慣れて効果が薄くなるので自然回復待ちだ。


一息ついてお茶のお代わりを用意していると

「ふぅ。久しぶりの森はやっぱりいいよなぁ。思い切り体動かしてきたぜ。」

エリックがそう言いながら入ってきた。


兄のエリックは私より5歳年上だ。

狩人らしく日に焼けて健康的な肌と首筋で結んだ癖のないはちみつ色の髪に明るい若草色の瞳ですっきり整った目鼻立ちは町の女の子たちにはなかなか人気だ。

 私たち兄妹の両親も錬金術師で私が7歳の時に素材探しの旅先の事故で死んでしまった。

祖父母に引き取られて私は祖父や両親と同じ錬金術師を目指したけれど兄エリックはよほどショックだったのか錬金術師ではなく魔物を倒す狩人を目指した。


 祖父はなかなかに厳しい教育方針の持ち主で私たちは基礎的なことをブルグで学ぶとすぐにそれぞれ違う街へと修業に出された。

私は15歳で研究都市アキレアの王立魔法魔術学院アカデミアに進み、卒業後さらにガンディーナの錬金術師の元へ行った。

兄はブルグのギルドで見習いをすると15歳で『白金の羅針盤』という大規模クランに修業に出されてさらに経験を積んだ。

王都モールを活動拠点にしてそこそこの地位で活躍してたのだけれど祖父の死とそのあとまぁいろいろあれこれ問題があってブルグに残ってそろそろ1年になる。


今は特定のクランに所属することもなく単独でできる依頼なんかをこなしているのだ。


 テーブルに着いたエリックに夕食の支度をしていたルクーがさっとお茶を差し出す。

ルクーはハウスメイドとしてもなぜだか優れた才能を発揮するようになってわが家の食生活は格段に質を上げた。厨房に漂う香りから察するに今日の晩御飯は山鳩のローストに違いない。



「エリック、疲れてるから甘いもの。」

ルクーはそう言うとお茶と一緒にバターの香りも香ばしい焼き菓子を出てきた。

「甘さは控えめ。大丈夫。」

「わりぃな。おぉ。この味懐かしいな!なんで婆ちゃんと同じ味なんだろうな。」

そう言いながら嬉しそうにエリックがぱくつくお菓子を私もひとつ取って口にした。ちょっと塩みがきいてるなと思っていたら、

「エマはこっち。エリックのはちょっとお塩も入れたけどエマは頭使ったから甘め。」

「ありがとう~。ルクー。これめっちゃ美味しいよ。」

口にした焼き菓子は本当に懐かしい祖母手作りと同じ味がした。




「ルクー、明日は日の出前に兄さんと出かけるから留守番よろしくね。遅くなるかもだからお店は休み。」

夕食の後、私が言うとルクーはコクリと頷いた。

「俺、今日帰ってきたばかりなんだけど。」

兄が不満げに口をとがらせる。

「明日は狩りじゃないから念の為だよ。一人で行っちゃダメって行ったの兄ちゃんじゃん。」

私がそう言うと兄はさらに眉間にしわを寄せた。

「・・・扉、かよ。あぁ、まぁそうだけどさ。ちぇっ明日は3の鐘が鳴るまで寝てようと思ったのにな。で?どこに行くんだ?」

「レールスレルム。今あそこにしかファランリウム咲いてないから。」


レールスレルムは隣の国でアウストラシアとは反対側の国境の地域だ。


「遠いな。魔力は足りんのか?」

「我がおるから大丈夫。」

シャンタルが得意げにそう言うととん、と兄の肩に飛び乗った。

「ったく、毛玉、鎧に爪たてんなよ。ルクー、風呂にしたいからよろしく頼むわ。」



渋々、とト書きを付けたいダルげな動きで兄は早寝するか、と席を立った。





突然の登場人物設定(その1)


エマ 主人公(21)

錬金術師。錬金術工房暁星堂の2代目店主で工房主。金褐色の髪、若草色の瞳

錬金術師だった両親は素材狩りの時の事故で死亡し、兄と祖父母に育てられた。

錬金術師学校から錬金術師サリーナの元で修業して帰還した。祖父が亡くなり暁星堂の後を継ぐ。

エマの得意分野はポーションなどの医薬品錬成。

性格は実験好きの素材マニア。ちょっと幼い見た目のせいでおっとりしてみられるが結構攻撃的面がある。金が絡むとシビア。

楽に仕事をするための努力は惜しまない。荒事は苦手。装備は防御重視。

素材コレクターでサンプル保管箱が宝物。


エリック (26)


エマの兄。狩人で斧使い。金褐色の髪、若草色の瞳ゴリと細いの中間マッチョ。

両親の死に影響されて錬金術師から冒険者に目標を変えた。日常生活では基本のんびりしている。

戦斧を持って狩りに行くと猪突猛進な戦いぶりを見せる。

アウストラシアでは有名なクラン『白金の羅針盤』に所属しているが現在はなかば休職状態。

女性にもてないのが悩みだが、実は鈍くて気が付いていないだけ。


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