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新・暁星堂騒動記 相続したのは魔法物件でした  作者: 星乃まひる
とある錬金術工房の営業日記
27/41

アラクネ騒動記 7

アラクネ騒動記、これにて終了です。


二人の『友人』を結び付けたお祝いに鞄を贈ろうとは決めていた。


出来上がった鞄に魔法陣を錬成するか、材料に加工を施してから鞄として仕上げる方法とがある。もちろん前者が楽なんだけど今回は後者。


マルタの工房の職人のデザイン画を見て形は決めた。


「エマが素材に錬成したら針子に渡すわ。うちの寮に住み込みだし、腕も人柄も信用できる子を選んだわ。」

まぁマルタが選んだ針子なら大丈夫だけど気遣いが嬉しい。


鞄にどんな特殊効果を持たせるかを考えるのはなかなか楽しかった。

まず必須なのは空間拡張機能。小ぶりの鞄になるからこの機能がなければピッパちゃんが入れない。

ピッパちゃんに快適に過ごしてもらうための環境維持。これはジョルジュの移動倉庫を参考にする。

この効果を鞄の周囲に維持して蓋を開けたり、身を乗り出したくらいではピッパちゃんが元の大きさに戻らないように。

後は手を突っ込んだヴィヴィが縮小化しないようにの補助効果。


「うーむ。魔法陣の併せを考えて素材が過剰にならないように。付与師の腕の見せ所よね。」

素材独自の魔力を魔法陣で増幅したり、循環させたりなかなかに気を使う作業なのだ。

レシピからいくつか候補の魔法陣を探しだして普通紙に書いてみた。


「インクと紙、素材の相性も考えてみたんだけどこれどうかな?」

艶のある紅の表布、ふたの部分は中央に紫の飾り布に金色のブレードを両側に配置して。

内側は季節ごとに取り外し可能。冬場は月兎の毛皮を使い、夏はブルグ絹をパールスライムで表面加工して涼しくする。

飾りボタンのように加工するのはシュナの角から削り出すつもりだ。

角については一応聞いてみるとピッパちゃんのためなら、と快諾してくれた。


デザインの相談はすでにマルタで素材と錬成インク、加工紙との相性を相談するのはやっぱりジョルジュしかいない。

伝書魔術具を飛ばしてみれば、忙しいんだろうにすぐに顔を出してくれた。


「ここさ。ユニコーンの角使うなら消せないか?そうしたらこの呪文も消せると思う。」

リストと候補の魔法陣を見比べていたジョルジュが指摘したところを見直す。

「あ!なるほど!!」

ジョルジュに指摘された箇所を削除すれば紙やインクの材質ももう少し手に入りやすいものに変えられる。

加工に必要な魔力も節約できるし、使用する際の消費魔力も同じだ。これは助かる。

他にもブルグ絹やアラクネ糸で編み上げたブレードの属性効果でいくつかの要素を簡略化できた。


「ジョルジュやっぱ凄いなぁ。私はくっつけるばかりだよ。」

「限られた素材にサイズ設定、魔道具作りには制約が多いからな。まぁお前、専門薬だから。でも付与術考えるならもう少し勉強しなさいね。」

ジョルジュはそう言いながらバッグの設計図と付与する予定の魔法陣を見比べている。

「うーん。そう言われるとそうなんだけど、付与術ばかりやっているとどんどん希望の薬種業から遠ざかってくような気がする。」

祖父の暁星堂時代からの顧客は、今でも大事な収入源なのだ。

それに付与術もやり始めるとなかなかに奥が深くて改めて楽しいし。


「ジョルジュ、でも兄貴好きだよね。よく会いに来るね。」

私が片付けながら、ふとそう言う。

今日エリックはギルドに行っているけれど、昼時だからそろそろ帰宅するだろう。

作業が煮つまる時は体を動かすのが最適、とかでジョルジュは今日みたいな日でなくても兄を尋ねて特訓しにくる。


レシピを直感で組み合わせる私と、じっくり比較検討、構築する彼はなんだか相棒としてしっくり来るな、と思う。

まぁだからと言ってドーラ工房辞めても暁星堂ではまだまだ給料が厳しいんだけど。

今は転移陣を好きに使ってもらったりすることでなんとか報酬を払っているような感じとでもいうのだろうか。


「・・・・エマ。」

足元でシュナが、私の肩口でシャンタルが、そしてジョルジュの肩ではフランがなんだかとても残念な子を見る顔で私を見ている。


だけど兄貴の友人で幼い頃のことも知っているわけだし、もともと職人街にいるのがちょっとありえないジョルジュに勝手にそんな期待を抱くほど面の皮は厚くないつもりだ。


「いや、だって再会がすごく失礼だったし、小さな頃からの悪行も知られてるので余地がないでしょうに!」

私がそう言うと現場に居合わせたシャンタルとフランがさらにガックリと顔を見合わせる。

ジョルジュのほうは特に表情の変化もない・・・ように見える。


「ま、そういうことで俺は今日は帰るから。シュナ、エリックに後で顔出せって言って。」

「おう!ま、元気出せ。俺にでもわかるけどエマの鈍さは特別だ。」

シュナがそう答えると

「やかましい!!」

ジョルジュはそそくさと帰宅した。


「私、なんかおかしかった?ま。錬成の道筋は出来たし一気に片付けて現物できたらまたジョルジュに見せに行けばいいよね!」


周りの視線がすっごい痛いのを感じながら私は無事に鞄の材料に効果を付与することが出来た。








アラクネ騒動記はこれで終了。

次回更新時は少し時間を戻して、暁星堂を引き継いで再開店するまでのお話になる予定です。

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