ブルグ商業ギルド生産部 2
お仕事設定説明回
ルクーとシュナに店番を頼むと、今日は人には見えない妖精体として私についてくると決めたシャンタルとギルドを目指す。
シュナは私の来るところには着いてきたがるけれど今日は行く先が行く先だからお断りした。
(レア素材の集合体。見抜かれたらとんでもない事態になるもんね。)
ブルグの街は川を挟んで旧市街と新市街に分かれている。
新市街が雑多に広がり、庶民が多く住む地域なら旧市街は昔ながらの住民である貴族や富裕層が多く居を構える区域になる。
街を分割するように流れる川で自然に分けられるようにしてブルグの街は発展していったのだ。
暁星堂もある錬金術師街は新市街の城壁内でも比較的川近くにあっていつも雑多な賑わいのある下町地区だ。
錬金術工房は昔は旧市街にもあったのだが、錬金術師は魔法や薬品を使うので人が多い繁華街からは少し離れた今の場所に移された。魔法を使わない職人街も近くになる。
錬金術師街から旧市街に近づくに連れて露天営業する店は消え、小奇麗に構えた店舗が増える。民家も家が大きく綺麗になり道行く人々の服装も明らかに裕福なものに変わる。
ブルグ商業ギルドは新市街と旧市街を結ぶ橋の旧市街側広場にある。城門からまっすぐ伸びた大通りの先にある。白い壁に茶色の屋根が広場でもひときわ目立つ大きな建物だ。
大きな商会は今でも旧市街の方が多いが、交通が便利な新市街にも支店を出しつつあり、政治は旧市街、商業は新市街になりつつある。
ギルドが昔ながらの場所にあるのは家賃が高いのを嫌ったとか、高価で高性能な魔道具を移すのが大変だったとか色々言われている。
商業ギルドは商会が中心の商業部と職人や工房が中心の生産部で成り立っていて1階に生産部、2階が商業部だ。
華やかな商業部を1階に、職人は2階か半地下に置いて見栄えを良くしよう、という意見も出たらしいが重い素材や商品の搬入もあり、断念したといわれている。
もちろん商業部だけ旧市街か別の建物に移転する話も出たけれどいつの間にか立ち消えになりが続いている。
貴族や富裕層を相手にする商業部に比べて生産部は職人中心でどうにも地味だし、庶民的で品位には若干欠ける。
まぁ中にはそんな雰囲気にあからさまに嫌な顔をする人もいるが、大概商業ギルド長にシメられるまでがワンセットで5年に1人くらいは出現するらしい。
重厚な共通玄関を入り生産部とかかれた札のかかった入り口をくぐると
「っはよーございます。」
カウンターの中から紅茶色の髪にそばかすの浮いた頬の受付職員が挨拶してきた。
「おはよ。今日は少ない?」
何組かの職人が打ち合わせをしているロビーを見て尋ねると、
「日雇い職人のピークタイムは終わったからね。静かなもんさ。」
今日の受付は大工の息子リコとその祖母マリアさんだ。ほかの職員もそれぞれ書類を見たりしているが、全体的にゆったりして見える。
職員は職人の家族なんかが多い。
現場で職人として働かなくても生きるためには仕事は必要だし、職人の生活を知っているだけにサポート仕事も覚えるのが速いのだ。
リコはもともと家業を継ぐつもりだったのだけれど高所恐怖症で断念したという。
それでも不貞腐れたりせずに働いているのはとても立派だと思う。
マリアおばあちゃんは長年大工職人の夫を裏から支えてきて関係職にも精通していて現場を選り好みする職人たちに仕事を差配する手腕は的確だ。
商業ギルド生産部に所属するのはブルグだと
錬金術師、魔石加工師、薬師、鍛冶師、裁縫師、織物職人、染色職人などが基本だけれどその街によって発展した産業が異なれば職種も微妙に変わってくる。
ギルド生産部の仕事は主に職人のサポートだ。
職人、商会は登録したらギルド会員カードを発行する。ちなみにマネーカードに身分証も兼ねるそれを作るのは錬金術師の仕事でもある。
個別にひいき工房に依頼する商会も多いが、大きな依頼になるとギルドで受けて加盟工房から人材派遣することもある
そして加盟工房の求めに応じて採用の手伝いをしたりすることも大事な仕事だ。
さっき話題になった日雇い仕事は得意先がまだない新規独立職人が主でここから顧客を掴んだり、大工房に顔を繋いだりもありえる、「戦い」の場でもあるのだ。
他には各工房が制作したものの権利 各種契約管理。特許登録とその管理や街を越えた活動の支援を行う。
錬金術師は魔力を用いる点で少し特殊ではあるけれど、生産部に所属して活動する工房が多い。
「エマが来たってことは今日は錬金術師組合か。」
リコが会議室の予定表に手を伸ばしながら聞いてくる。
「当たり。」
「月の真ん中は会合が多いよね。明日は織物組合さ。錬金術師組合なら上からお茶出し呼ぼうかね。」
マリアおばあちゃんが頬を指でかきながらそう言う。
普通は生産部は生産部で商業部は商業部で内働きがそれぞれいるので珍しい提案だ。
「あら。わざわざ?こっちは今日は誰?」
「「木工組合、ガードナー工房のルカだよ。」」
言い終わるより先にバケツを蹴り飛ばしたような金属音とすいませーん!と言う声が響く。
リコが天を仰ぎ素早く立ち上がると音のする方向へ小走りで向かっていく。
彼は随分そそっかしくてマリアばあちゃんによく叱られている姿が最近の風物詩だ。
「ガードナーの親方は現場に置きたくなくてルカをこっちによく出すんじゃないか?って思うことがあるんだけどね。」
「あははは。まさかぁ。」」
「あれ聞いてもそう思うかい?とにかく今日のお茶出しは頼んでおくよ。
「それが賢明かなぁ。」
新たに響く何かが転がるような音と何やらリコの怒鳴り声が聞こえてくる。
錬金術師組合は生産ギルドに属しているから会合は1階の会議室で行われるのだ。
それを聞きながら私は奥の会議室へと進んだ。
次回もお仕事設定説明回、になりそうな




