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新・暁星堂騒動記 相続したのは魔法物件でした  作者: 星乃まひる
とある錬金術工房の営業日記
16/41

ユニコーン 6


ワームは無事に解体し、魔法鞄と時を止める魔術具を使って無事に持ち帰った。

ユニコーンは転移陣に消える私たちを見た時にすごく驚いたようだった。

角は折れてしまったけれど故郷の森で元気にしていてほしいものである。

ジョルジュとそれぞれ必要な分だけ素材を取ってしまうと残りはエリックの収穫として狩人ギルドに提出する。

変異型の特徴を除いた、ただの大型ワームならばたまにこのあたりの森にも出るので素材の出所を怪しまれることはなかったようだ。




「そう言えばあのユニコーンの角って春には生えるかな?」

そんなワーム討伐からそろそろひと月たとうかという頃、街の食堂眠り猫屋で食事をしながら私はふとユニコーンを思い出した。

「さあなぁ。鹿は1年で生えるけどユニコーンはどうなんだ?」

トロトロの牛肉煮込みをパンに載せたのをまさに口に運ぼうとしてたエリックがそう聞きながらガブリと噛み付いた。

「野生だもんね。今の飼育種なら1年かなぁ。」

「だけどあいつ角がないと新種の魔物かロバに間違われそうだよな。」

そう言うとエリックは少し悪い顔で笑った。

「兄貴ひっど。」

「否定できるんかよ?」

ジト目で見られたらこう答えるしかないだろう。別れ際は随分可愛らしかったけど事実は事実。


「できない。」



そんなこんなでユニコーンとの出会いも記憶のひとつとして遠ざかりつつ日常を過ごしていたある日。

私はいつものように暁星堂の店番をルクーに任せながら奥の工房で作業をしていた。


「うわぁっ!!」

庭で鍛錬に励んでいるはずのエリックの奇声、まさに奇声が庭から聞こえた。


「なに?何が起きたの?」

「庭に侵入者だ。しかし我の結界を超えたとは害意はないようじゃが。ん?」

シャンタルが首を傾げながら飛び回り、それを従えながら私も慌てて庭へ向かう。


「エマ!いるんだろ?エマ!」

「待て!待ちやがれ!そのナリで家にはいるんじゃねえよ!」

どたどたいう足音と、兄の低い叫びが庭から聞こえてくる。


「ん?私の名前がなぜ?」

「やはりあやつか!」

気配を察したらしいシャンタルが呆れたようにつぶやくけれど、さほど広くもない敷地だから答えを聞くより早く抜け庭に出てしまう。




「兄貴!!何の騒ぎ・・・・」

「エマ!俺来たぜぇ!!」

「エマ!!コイツ、ここまで追っかけてきやがったぞ!!待て!落ち着けって。この馬公が!」



エリックに首をガッチリ掴まれながらもさの体を半ば引きずりながら嬉しそうにこちらを見ているのは、別れたはずのユニコーンだった。


「はぁぁぁ!?」



とりあえずシャンタルがユニコーンを落ち着かせ(脅し、とも言う)てから洗浄魔法を使って馬体を洗って裏庭にユニコーンを連れ込んだ。

まだ角が生えてなかったのでユニコーンと気づかれることはなさそうだけど念のためだ。


「俺まで丸洗いする必要あったか?」

エリックは恨めしげだが気にしない。

旅の埃にまみれていたユニコーンをがっちりと抱き留めていたからもののついでだ。

そんなエリックを横目に騒動の発端ユニコーンは綺麗になった体に至極ご満悦そうに見える。



「なんで来たん?生まれた森がいいでしょに。」

「何を考えておるのだ、お前は?」

私とシャンタルがそれぞれに突っ込むがユニコーンは悪びれた様子もない。

ワームもいなくなって森は住みやすくなったはずだった。



「ワームはいなくなったんだけどさ、ワームの噂を聞いたのか狩人や魔法使いが来るようになってさ。うっとおしくなった。」


ユニコーンはそう言いながら頭を軽く降る。


「それはなんというか、私たちが倒しちゃって悪かったのかな。」

「んなことあるかよ。後から来たヤツらに退治できた保証はないし。こいつだって食われてたかもしれないだろ。」

考え込んだ私にエリックがそう言う。


「ワーム探しとか言って土を掘り返したり、魔獣を狩ったりしてすっかり住みにくくなったぞ。俺も襲われたし。ユニコーンなのに食糧扱いしやがって。」

「角がないからねぇ。」

ユニコーンではなくただの獣として追われたことが痛くご立腹らしい。



「だからさ、森を出ることにしたんだけど俺様、角が生えたらすぐに狙われるだろ。だから角が生える前にエマに会いに来たんだ。」

角がなければ害さえ与えなければ夜陰に乗じて移動するのはさほど困難ではなかったらしい。



「でもさ、お前たちにすぐ追いつけると思ったけどお前たち脚早いんだなぁ。驚いたぞ。」

「あ、俺たちは転移陣を使ったからな。そう!なんでここってわかったんだ?」

あの森からここまで手がかりもなくたどり着けたのは私も不思議だ。

「エマに角あげただろ。だからだ。」


「え?これ?」

何に加工すればいいのかわからなくてもらった角はそのまま大事に工房に飾ってあった。

「俺の角だからかな。気配が何となくわかるから追っかけてきた。角が折れたの初めてだったから知らなかったぞ。」

そう言うとユニコーンは得意そうにブルルンと小さく嘶いた。


「俺、きたら迷惑だったか?」

驚いてばかりの反応が心配になったのか尋ねてくる。

「そんなことはないよぉ。びっくりしただけ。ま、来ちゃったもんはしかたないしね。」

「ここにいるのは構わぬが、エマに迷惑をかけぬようにせぬのなら我が食うてやるからな、それだけは覚えておけ。」


「精霊さまには逆らわないよ。エマ、俺ここにいていい?」


そう聞かれたら駄目なんて言える人はいないだろう。兄をチラっと見たけど肩を竦めただけだった。


「わかった!やたらと店や客の前に姿を出さないこと!私やシャンタル、エリックの言うことを聞くこと!!いい?」

「わかった!」



我が家にまた新しい住人が増えた。

ユニコーン編これにて完了です。

暁星堂の住人がまた増えました~。


次のお話はまた準備出来しだいアップします

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