ユニコーン 3
意外になつっこい?
「角がないとわかんないよなぁ。」
昔ユニコーン牧場であったのはもう少し大きかったような。あと目つきが・・・・
不満げな視線を感じたので言葉は途中で飲み込んでおいた。
「こやつは間違いなくユニコーンだ。」
シャンタルが断言した。
「ええっ?」
「嘘だろ?」
「ちんちくりんじゃん。」
私たちの三人三様なツッコミにユニコーン(仮)が言い返そうとしてシャンタルに睨みつけられる。
シャンタルは私たちに向き直ると珍しくひとつ呼吸をおいて告げた。
「我は見たことがある。こやつは間違いなく古からのユニコーンだ。角の魔力が違うからな。」
「そ、そうだろ?さすが精霊様だぜ、その辺の人間とは・・・・」
調子に乗りかけたユニコーンだがシャンタル(もう姿は子犬バージョンに変化済)ににらまれてまた口をつぐむ。
「ユニコーンってさ、絵物語とかだとも少しねぇ。」
「ああ、親父の館にある本だとなぁ。」
自分が知っているはずの知識と『それ』はあまりにかけ離れている。
いつの間にかユニコーンが私の足元でそれを不満げ(たぶん)な顔で見上げている。
ユニコーン、角が折れてもユニコーン、そう思うと葉っぱや枯れ枝の着いたたてがみがなんだか魅力的なツヤを放って見えてきた。
傍らのジョルジュを見ると顎を撫でている。こういう時の彼はちょっと心が揺れている。
「じゃ、これはユニコーンだ。わかった。それで終わりだ。目的を果たしに行こう。 レミンティアの木を探して、夜までに仮眠がいるだろ!ユニコーン狩りは犯罪だ。じゃ、お前気をつけて生きろよ。」
ソワソワしだした私とジョルジュの背中を押してエリックが立ち去ろうとする。
ユニコーンに対する私たちの欲望が目覚める前にサッサと立ち去りたいのが丸わかりだ。
「む?俺を狩りに来たんじゃねえのか?」
勢いよく私たちの背を押して行こうとするエリックの姿とあまりに素っ気ない態度にユニコーンが首を傾げた。
「違うよ!犯罪者と一緒にしないでよ!」
ひどい侮辱だ、と憤る私にユニコーンはびっくりしたように見上げてきた。
「え?俺らを狩ると犯罪なんか?人間は俺らを狩るもんばかりじゃないのか。ってお前ら何しに来たんだ?」
なるほど今まで散々追い回されてきたなら私たちへの反応があれでも仕方ないのか?
「俺らはユニコーンじゃなくてこの森に用があるんだよ。今日は満月だからな。」
「ここにはレミンティアの花を採取しに来たんだ。満月の時に取るといい素材になるからな。」
エリックとジョルジュがそう言うと
「今はそれ採取できないと思うぞ。」
ユニコーンがそう話しかけてきた。
「え?満月だしここはいちばんの繁殖地でしょ ?」
「ああレミンティアは間違いなくあるけど今は無理なんだよ。ワームが出たからな。」
なんだかすっかり警戒心が溶けたらしいユニコーンがそう言った。
「「「ワーム?」」」
ワームは魔物の一種で大きな蛇のような見た目をしている。普通は森の草なんかを食べているし、遭遇しても動きが鈍いので走れば十分に逃げ出せる。
増え過ぎないよう狩人に定期的に狩られているはずだし、ユニコーンの凶暴さなら簡単そうだ。
そんな疑問が表情に出ていたのだろう。ユニコーンはさらに説明してくれた。
「ワームはいつも森にいる。俺もちょっとなら食うけれどその中に特異個体が出ちまってな。とても近づけない。食われるぞ。
俺も襲われたし、この角もやつに食いつかれて折れちまったし、この間熊食ってたのを見た。」
「熊?小熊か?」
「いんや。お前が重なったくらいの熊。」
ユニコーンはエリックに顎をしゃくった。
「はぁ?エリックは1.8メドルはある。それじゃ魔獣だよ!!」
「俺の餌場に巣食ったから角でぶっ刺してやろうとしたんだが折られちまった。生え代わったら今度こそやる!!」
フンっと鼻息荒いけど無理じゃなかろうか?
「てか魔獣熊食うサイズのワームにケンカ吹っ掛けるとかお前身の程知らずにもほどがあるだろう?」
エリックが嘆息する。
「それがユニコーンの心意気ってもんだ!」
角が生えたらマジでリベンジを図りそうだな。
でも得意げに頭を振り上げたが角はポッキリ折れていて根元にヒビと出血の跡がある。
「あ、怪我してるね。ちょっといい?」
鞄を探ると丸薬ポーションが見つかった。液体もあるけれど飲むかな?ってか馬(で括っていいのかは置いておく)に効果あるかな?
「な、何するんだ?」
人の治療なんて見たことがないだろう。ユニコーンが後ず去ろうとした背後にシャンタルが立ちはだかる。
「ポーション、まぁ魔法薬だよ。6時間過ぎてたら駄目なんだけど。あれ?折れた角は?」
「今はワームの腹ん中だしあっても自分で自分は癒せないんだよ。」
「意外と不便なもんだねぇ。」
そう言いながら丸薬を蒸留水で練り傷口に塗る。奮発して特級を使ったからだろう傷は綺麗に治った。
「お?痛くない!すげーな、お前!」
ユニコーンは嬉しそうに頭を振ると私の腕に擦り寄った。
「こら!エマに馴れ馴れしくするな!それは我が祝福した薬草で作った。当然の効果だ。」
シャンタルが睨むけどもそう気にしていないように見える。
「特級はお高いからね。お礼は鬣か尻尾の毛でいいよ。」
軽い冗談のつもりで答えると意外にも真面目な表情でユニコーンが答えた。
「ああ。角はワームに食われちまったけ尻尾くらい持っていけ!俺はお前が気に入ったぞ!」
そう言いながら頬に顔をすり寄せてくる。
「おや?素直だな。」
「俺は律儀なんだ。」
「なんだか懐かれたな。エマ。」
ジョルジュとエリックが笑う。
だけどユニコーンの話を聞けば聞くほどなかなかにヤバいサイズのワームのようだ。
そろそろギルドが動くかもしれないし。そうなるとしばらくここは来れないだろう。
レミンティアは惜しいが命を張るまではないし。
そう判断した時だ。
「だな。金色の角が頭に生えたワームとか俺だって見たことねぇよ。人間にはやばいはずだ。帰った方がいいぞ。」
「「金色の角のワーム?」」
私とジョルジュの声が絶妙にハモった。
ワームは時々変異体が現れる。普通ワームとは地中にいて大きさもそこそこ。
かつては地龍に分類されていたが昨今別種と言われている。土属性の魔物。
大食いで成長すると家畜を襲うため見かけたら狩人派遣案件。
ただ、成獣前は日にあたると死ぬくらい弱いともいうし、素材としてのワームは魔石か肉食家畜の生き餌くらいだが変異体になると話は違う。
ワームの変異体は確認されているだけで、足つき、羽付き、基本土属性に加えて水、火、鉱物などが報告されている。
金色は鉱物の属性を有していて金属の強化に有効な薬の材料にもなり鍛治職人に好まれる。
よって変異体ほど成体にはなりにくいが稀に成長を待って捕獲を試み返り討ちなどの報告もある。
「今、金色っていったか?」
帰り支度していたジョルジュがガバっと立ち上がりユニコーンに詰め寄った。
「ああ。この姉ちゃんの髪みたいな色だ。」
金色だ!!これは滅多にないレア変異体!!
薬 属性定着促進剤、反発素材親和薬、高品質魔法陣用紙の錬成用、作れるものが数々頭を駆け巡る。
(欲しい。欲しすぎる。)
「なぁ。やっぱり森の安全って大事だよな。ここは一番近いギルドから2日はかかる。」
コホンとジョルジュが咳払いする。
「その間に通りかかった人が被害に合うかもしれないね。討伐依頼が間に合わないかもしれないね。兄貴、狩人としては見過ごせない強敵だよね。白金の羅針盤疾風エリックの名がすたるよね!!」
エリックが天を仰いだ。
「素材バカどもが・・・」
錬金術師は素材の誘惑にあっさり敗北。
次回は安全のためワーム討伐<レア素材獲得




