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IX

「GISYAaaaaaaaa!!!」


 ぎゃああああ!? 来たーーー!!


「主様に手出しさせません!『大地よ貫け! グラウンドニードル』!!」

「そんなに動いたら当たらないでしょ? じっとしてなさい『水よ捕らえろ、バブルリング』」


 洞窟の壁から沢山の棘がセネピートに飛び出す、が全て回避された。それを見たブランがセネピートの進行方向に水の輪っかを配置、セネピートはそのまま輪っかに飛び込んだ。やった! かかった!


『いえ、これはダメですね』


 へ? コネクターの言葉に慌ててセネピートを見ると、水の輪っかに嵌まったセネピートは全く問題ないらしく止まる事なくこちらに突っ込んで来た。まずい、このままじゃ、


「ノワール!」

「主様はお任せを!」


 そう言うとブランとノワールは左右に分かれて飛んだ。僕を抱えたまま。

 うおぉぉぉぉぉ!? たっかい! 高いよノワール! もう少し低い場所で戦って! 僕高いのは苦手なんだ!


 と言う僕の思いも虚しくノワールは天井の氷柱のような岩を掴みそこからセネピートを見下ろす。


「主様、申し訳ありませんが暫くここに居て下さい、すぐブランと共に片付けますので辛抱願います」


 ノワールは岩に穴を空けて僕をそこに押し込んだ。えっ? ちょっとノワール!?


「それでは行って参ります」


 ノワールはその大きな翼をはばたかせセネピートに向かって行く。僕は甲羅を岩に固定されてしまったので首だけを伸ばし戦いを見守る。


 セネピート、前に見たときは後ろから迫ってくる姿だったからなんとなくしか分からなかったけど、上から見るとその大きさがよく分かる。でもこれは、生物の進化としては失敗してないかなぁ?


『と、言いますと?』


 あの巨体でしょ? あれなら僕みたいな小さな獲物より外の大きな獲物を狙った方が方が良いと思うんだよね。あの大きすぎるアゴも獲物が小さいと空振りしちゃうだろうからダンジョンの外の方が生きやすいんじゃないかなって。


『なるほど、しかしセネピートは壁や天井を走り獲物を補食するモンスター、その特性を活かすのであればダンジョン等の屋内の方が生態的には合っているかと』


 あぁ、それでダンジョンの中で走り回ってるのか。大変だな、アイツも。

 さて、問題の戦闘だけど心配なんていらなかったな。ノワールとブランはセネピートの上空で必ず片方がセネピートの後ろに居て魔法を撃っている。


 セネピートが後ろを向いたら役割を交替してを背後から攻撃を繰り返している、こりゃ楽勝だな。


『世の中そう上手くいくとは限りませんよ、それはあなたもよく知っているでしょう』


 あんまり不安になるような事言わないでよ、たださえ身動きがとれないんだから。ん? セネピートが部屋をなぞるように走り出したぞ、出口でも探しているのかな?


「GISYAaaaaaaaaaa!!!」


 なんて思っていたらセネピートが僕に向かって跳び上がってきた、いや、ムカデが跳ぶのは無しでしょ!? うわあどうしよう! 今動けないのに、ええい! やるだけやってやる、食らえ! 麻痺液噴射!


 大きな口を開けて向かってくるセネピートに向かって、全ての触手の先から麻痺液を放つ。が、触手の先から出たのは数滴の透明な水。……これ、僕が思ってたのと違う。


『あなたが考える勢いで麻痺液を出すには、せめて今の10倍の体長が必要ですからね』


 そういうことはもっと早く言ってほしかった。僕の抵抗は意味をなさずセネピートはその巨大な顎で僕が嵌まっている鍾乳石ごと僕の甲羅が割った。


 でも、僕は生きてます。スライムの膜液を纏った僕は顎に潰される事はなかった、痛覚があったら痛くて大変だったと思うけどそれもない、それは本当によかった。でも目の前にはセネピートの巨大な口が、ヤバイ! どうすれば!?


『あなたに死なれては私も困るので、少々体をお借りします』


 コネクターはまた僕の体、触手を動かしてセネピートの大顎をグルグル巻きにして縛った。なるほど、これでセネピートは顎を開けないから僕を口に落とせない。流石だね、コネクター。


『勿論です、私は優秀ですから、ですがこれも時間稼ぎにしかなりません』


 そうか、時間稼ぎにしかならないのか。だったら早くセネピートを倒さなきゃ! とりあえず僕に出来そうな事は、大顎を縛る時に使わなかった触手の先から出る麻痺液を、ガチガチと鳴らしながら僕を噛もうとしてくるセネピートんk口の中に入れて麻痺になるのを待つしかないね。


 セネピートの体は硬くて僕の管が刺さらない以上、僕に出来るのはこれくらいさ。ブラン、ノワール、早く倒してくれ!!


『ふむ、どうやらそれほど待つ必要は無さそうですよ』


 ふぇ!? どういうこと?


『もう暫く耐えれば分かりますよ』


 コネクターは内容を詳しく話す事をしなかった、そして僕はその言葉を信じるしかない。つまり、いつもの事だ、だから僕は必死に耐える。既に触手の操作は僕に返されている、大顎から触手が離れないようにしながらチビチビと麻痺液を垂らしていく。


 早く、早く、早く、早く終わってくれぇ!!

 そう心で叫んだら時、セネピートが突然氷に覆われた。氷は大顎の半ばまで広がって止まった、危ないなぁ、あと少しで僕も凍るところだったぞ。


「「主様(マスター)ご無事ですか(大丈夫)()」」


 ブランとノワールが僕のところに向かって飛びながら同時に叫ぶ。これはどちらかの魔法なんだろうな、はぁ、2人が居なかったら僕はもう死んでるな……もう1回死んでるけど、おっと返事をしないとね。


 うん、大丈夫だよ、とりあえず降ろしてくれるかな?


「はい! 主様!」


 ノワールは貝殻を無くした僕の体を抱えようと手を伸ばす。が、体から出る粘液が邪魔して上手く抱える事が出来ないみたいだ。仕方がないからセネピートの体を伝って降りる事にしよう。


「申し訳ありません、主様」


 謝らなくても大丈夫だよ、掴めないんだからそんなに気にしない気にしない。

 まあ、氷が滑って降りるのも一苦労なんだけど小さな女の子に抱えられるよりは全然マシだしね。


 さてコネクター、一応確認するけどコイツはもう死んだよね?


『いえ、微かに生体反応がありますので辛うじてまだ生きていると思われます』


 マジで!? 氷漬けになってもまだ生きてるの!? コイツ本当に生き物?


『ええ、この世界では立派な生き物ですよ』


 うわぁ面倒だな~、でもまあ身動きは出来そうにないし倒すのは簡単だよね……二人なら!


『あなたが倒さないのですか?』


 えっ? いやいや無理でしょ、見た感じ僕の管を突き刺すのは無理っぽいし言葉にここは二人にお任せで──


『たとえ無理でも挑戦はしておくべきだと進言しておきます、彼女達の主たる者としての威厳を見せる為にも』


 それ必要?


『もちろん』


 そうか、必要なのか……分かった、やってみよう。


『ご武運を』


 うん、頑張るよ。


 改めて氷漬けになったスタッグビートルセネピートを見る。やっぱりデカイぁ、どうやって倒せばいいのやら。とりあえず吸血してみようにも凍っていて管が刺さらない、まあ氷を貫通できても甲殻を貫通出来ないと結局は血は吸えないんだけど、そもそも虫って血があるの?


 それからノワールとブランに不安そうな顔で見つめられながら色々と試してみたけれど、結局成果は得られなかった。最終的にはノワールとブランがセネピートが止めを差した。ただ、先程の僅かな抵抗が経験値としてして加算されレベルは上がった。


 結論、この体は戦闘に向かない。となると道具……いや仲間が欲しい、別にノワールとブランに不満があるわけじゃないよ、ただ彼女達は強すぎるのだ。これでは僕が戦えない、これでレベルが上がるのは寄生しているみたいでなんか嫌だ。


 まあ端から見たら完全にそうなんだけど、もう少しきちんと戦いたいのだ。見た目幼い少女に戦わせて男の僕が見てるだけって言うのは……やっぱり体裁が悪いとは思わないか? 今の僕が男、いやオス? なのか知らないけど、心は男だしなんとかしないとな。

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