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II

 殻の中からもぞもぞと首と触手を外に出す。う~ん、ようやく周りが見えたけどえらくボヤけて見える、ロールローパーの目は相当悪いらしい、眼鏡が欲しい。無い物ねだりしても仕方ない、か。見えるだけマシと思おう。


 周りの様子から多分ここは洞窟だ、にしては明るいな、どうしてだ?


『光苔です、どうやらこの洞窟は光苔の群生地のようですね』


 へぇ~、そうなんだ。とりあえず触手の使い心地を確かめてみよう。8本もあるから大変かも、と思ったけどそうでもない。これが適応って奴なのかな? ところで、声が出せないどころか口もないんだけど、食事ってどうするの?


『触手の先に管が内臓されいます、力を入れれば飛び出す筈です、それを使い血を吸うのがロールローパーの食事方法になります』


 えっ、コイツ吸血モンスターだったの? 血か、美味しく無さそうだな。


『ロールローパーに味覚はありません』


 そうなの? う~ん、つまり食事を楽しめないのか、それは残念だな。この世界の料理を食べてみたかったのに。


『どのみちその姿では料理は食べれないと思いますよ、人にとってモンスターは討伐対象ですから』


 そうだよね~、モンスターだもんね今の僕。さて、触手の検証を続けよう。


 まずヌルヌルの粘液を纏っていて色は黄色っぽい、表面はツルツル、これじゃ壁とかにしがみつくのは無理かな。でも、自由自在に動く、足変わりにしてジャンプ位なら出来るかな?


 さて次は熱感知、どうすればいいのか一瞬迷ったが特に何をするでもなく切り替わった。中々気が利くスキルだな。視界は黒と青と赤に変わった、確かテレビじゃ白になるほど熱いんだったかな? 流石に温度までは分からない。


 さて、何かめぼしい物はないかと周りを見渡して見るが、青と黒ばっかりだな、輪郭が辛うじて見えるから普通に見るよりは見やすいかも、そんな事を思いつつ上を向くと沢山の赤い何かが、生き物か?


『どうやら洞窟固有の動物【ケーブバット】ですね』


 バット? コウモリだっけ? まぁ、洞窟だしいるよねそりゃ。


『ケーブバットは肉食で特に動きの鈍い動物、またはモンスターを食べます』


 へぇ~、そうなんだ。……ちなみに、ロールローパーは?


『捕食対象です、と言うか大好物です、おかげでロールローパーはレアモンスターと呼ばれて──』


 そういうことはもっと早く言おう! ってギャーーーー!? 赤いのが一杯近づいてくる! 来るな来るな!? あっち行けーーー! 


 僕は触手をがむしゃらに振り回す。すると何度か触手に何か当たった感触がしたが、気にする余裕がなくただただ振り回した。そして、


『おめでとうございます、ケーブバットの撃退に成功しました』


 へっ!? 撃退、成功? 上を飛び回っていたバット達はいつのまにか姿が無くなっていた。良かった助か、てない!? よく見たらバットらしき赤い物体が地面にいるじゃないか、嘘ついたのコネクター!?


『地面に落ちたバットは触手の縦横無尽の攻撃に当たり気を失ったり、壁に叩き付けられて動けなくなったもの達です、今すぐ襲われる可能性は皆無です、それよりもチャンスです、今のうちに彼らをエサにしてしまいましょう』


 え? これ食べるの? お世辞にも美味しそうじゃないんだけど、


『何を言っているのですか? 今のあなたに味覚はないとさっきも言ったではないですか、それにここで始末しておかないとまたどこかで襲われるのですよ、この世は弱肉強食、勝者が正しいのです、負けたものに生きる権利はありません』


 おぅ、いままでのんびり生きてきた僕には辛い世界のようだ。まぁ、何だかお腹も空いてきたし言葉に従うとしよう。


 触手から管を出す、管は白く尖っている。イメージは注射器かな? 大きめの。それを地面に転がっているバットに突き刺す。えっと、吸えばいいんだよね、とりあえずストローのイメージでいいのかな? チューチュー、と。


 おっ、バットから赤い血が管に昇っていく。徐々にバットが干からびていくのがわかる。だけど、これも自然の掟らしいから諦めてくれ。数分でバットから血を吸い尽くした。ん~、1匹じゃ足りないな、落ちたバットはあと6匹、触手の数は8本。よし、一辺にいくか。


 動かなくなったバット達から血を吸うのは簡単だった。しかし、あれだな、罪悪感、というのかな? そういう感情が沸いてこない。う~ん、ロールローパーになった影響なのかな。まぁ、無いなら無いでいいや、面倒が減ったと思えばまだマシか。


 さて、反省会だ。今回はただ触手を振り回しただけでもなんとかなったけど、次も上手くいくとは限らない。今の僕はモンスター、人じゃない。人だった頃の常識で動いてたらきっと死んでしまう。まずはしっかりと新しい体、このロールローパーの事を知らないといけないな。


 例えば天敵や弱点、苦手とする地形。他にも色々あるけど、まずは安全な場所を探そう。ここにいたらまたバットが戻ってきて襲われるかもしれないしね。どこか隠れるのに適した場所はないかい、コネクターさん?


『しばらくお待ち下さい、マップを読み込んでいます……完了しました、どうやら他の生物が寄り付かない空間があるようです、案内しますので支持通り進んで下さい、まずは正面の道を真っ直ぐ進み突き当たりを右です、それと“さん”は不要です』


 よろしくお願いします。

 コネクターの支持の元、暗い洞窟を進んでいく。たどり着いた部屋は小さな泉がある小さな部屋、ここは本当に洞窟の中なのか? コネクター。


『先程マップを取得した時に気づいたのですが、どうやらここはダンジョンに変貌しているようです』


 ダンジョン? ダンジョンってゲームに出てくる、あのダンジョン?


『はい、そのダンジョンです』


 ダンジョンのモンスターって、今いる部屋みたいな大きな部屋に待ち構えていたりするもんじゃないの?


『その通りです、ですがここは小部屋で強くて大きなモンスターはあまり寄ってきません、幸いこの部屋は何も居ないようですから大丈夫でしょう』


 それじゃあゆっくり休めるね、ところでコネクターの声以外の音しか聞こえないんだけど、どうして?


『はい、私は現在あなたと思考を共有している状態になります、つまりあなたの考えは私に筒抜けです、更にローパー種、特に弱い個体は人間の五感の内、視覚と触覚しかありません』


 マジですかぁ、それじゃ一人で考える事も出来ない上に、しきりに周りを見渡して敵を見つけないといけないじゃないですかぁ。いや、行き止まりで待ち構えればなんとか、でもそれじゃ、逃げられないよなぁ。はぁ~、せめて耳と鼻は欲しかった。


『おや? どうやら早速混沌の種子が芽吹いたようです』


 本当? どんなスキルになったの?


『名前は【器官複製】、取り込んだ遺伝子から器官を複製出来る様になったようです、対価は必要ですが』


 対価? 変わりに何か失うの? ただでさえ色々足りてないのに? 使えないじゃんそのスキル。


『いえ、失うのは元々ある物ではありません、あなたが取り込んだ血液、つまり遺伝子です』


 あ、そうなの? なら良かった。それで何の器官が作れるの?


『それはご自分でご確認下さい、あなたのステータスはいつでも見れる様にしてありますので』


 了解です、それでは早速、え~と、ステータス!


 名前【 】

 種族:ロールローパー

 Lv.2∕10

 技能:熱感知

    触手再生

    器官創造

    秩序の種子


 レベルが1上がってる。バットを倒したからかな? まるでゲームだな。さて、器官創造で何が作れるのかな? そもそもどうやって調べるんだ? と思ったら一覧が出てきた。なるほど意識するだけでいいのか、それは便利だな。え~と~。


【器官複製】

 複製可能器官:超音波発生器官(鼻)消費血液量6.37ml(ミリリットル)∕10ml

        超音波受信器官(耳)消費血液量6.37ml∕10ml


 うん、足りてないね。7匹吸ってこれだからもう1回あの規模の群れと戦わないといけないのか。嫌だな~。ところでこのカッコの鼻とか耳って何? コネクター。


『体のどこかにその器官を複製する事が出来るのです』


 それじゃあ器官を作れば音を聞けるようになるし、臭いも嗅げるって事?


『そうなりますね、性能は複製元の生物に依存しますが』


 いやいや、それで十分だよ。見えるだけよりずっといい! それで他のコウモリの居場所って分かる?


『道は分かりますがどこに何がいるかは解りかねます』


 そうか、分からないのか。それじゃ仕方ない、少し休んでからこのダンジョンの探索を開始しよう。とりあえずの目標は耳と鼻を手に入れる事! 色々と考える事はあるけど、もう少し落ち着ちける様になったら考えよう。今は生きることだけを考えよう。

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