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XV

 少女の左足を探しに外に出た、もちろん入口は空気穴を残して埋めた。とりあえず野生の獣やモンスターに襲われる可能性は少なくなる筈だ。問題なのは僕の移動スピードだが、こちらも一応解決した。


『見た目は完全に怪物ですが』


 今更の話でしょ? 今の僕はモンスターな訳だしね。現在僕は触手の先を先程消化した男の腕に変えて、8本の腕で森の中を歩いている。気分は蜘蛛だ。腕の理由? 人の足じゃ上手くバランスがとれなくってね、まだ手の方がバランスが良かった。それだけの話さ。


『モンスターにもルールが存在します、この姿は完全にそれから逸脱しています。今のあなたの様な存在をこの世界では異常体【イリーガル】と呼びます』


 モンスターだろうとイリーガルだろうと別に気にしないよ、どっちにしろ人外だしね。それよりもあの子の左足は何処だろう? 這いずって来た方向と血の跡を辿ればなんとかなると思ったんだけど。血の跡が消えた辺りにそれらしい物が見当たらない。コネクター、何か分からない?


『残念ながら』


 コネクターに分からないなら仕方ない、地道に探すか。さてさて何処だ? ん? あれは明かり? だったら人がいるかもしれないな。もしや、あの男の仲間? う~ん手がかりも無いし近づいてみようか。でも地面(ここ)からだと見晴らしが悪いなぁ。そうだ! 木に上ればいいんだ、腕になった触手で木の枝に掴まり上に上がってみる。よし、なんとかなりそうだ。さあ、いくぞ。


 出来る限り太い枝に触手を巻き、更に手で掴んで固定して進む。馴れてくるとこっちの方が歩くより早いな、次からこれで行こう。おっ? 灯りの付近が見える所まで来たぞ。どれどれ? ん? どうやら灯りの正体はたき火みたいなんだが、その周りに居るのは人か? 地面になにか落ちているのか、人と思われる姿が何人もそこに頭を突っ込んでいる。食事中かな? この辺りの人はえらく野性的だね。


『そんなわけないじゃないですか。あれは人ではありません、【リビングデッド】と呼ばれる怪人【クリーチャー】です。あなたに分かりやすく言うなら【ゾンビ】の事です』


 うげっ!? ゾンビィ? と言うことは噛まれたゾンビの仲間入り? やだなぁ。


『ご安心を。あれは細菌産ではなく魔法産、感染の可能性はありません。恐らく何者かによってこの辺り一帯に死体をリビングデッドへ作り変える魔法陣が配置されていると思われます』


 そっか、感染はしないのか。それは良かったけどあんなのを作り出す魔法陣? とかいうのはあるんでしょ? そんなのがあったら安心できないんだけど、壊せたりしないかな?


『場所が分かりませんからそこはなんとも。それよりいいんですか?』


 いいって、何が?


『リビングデッドは生前の本能に従い動きます。今は食事中、つまり食欲のみで動いている訳ですが、彼等が好むのは主に肉、それも新鮮な物を欲します。と、なれば今群がられている物は?』


 え~と……ハッ!? あの子の足か!?


『血痕の先に足が無かったのはあなたが殺した人間の仲間が逃げる時に囮にした、と考えれば可能性は十分にあるでしょう。もちろん通りかかった人間、もしくは捕まってしまった鈍い野生動物と言う線もありますが、捕食している場所が場所ですからかなり確率は高いと思われます』


 とにかく確かめなきゃ、それにはゾンビ達を退かさないといけない。でも僕には直接戦う様な力はない。出来てさっきみたいに動きを封じて取り込む事だけだ、どうしよう? ──そうだ! 新しい力も試してみよう。いくぞ! 【金属生成】!

 使おうと思うと頭に作れる金属と型が思い浮かんだ。金属は『ヒートメタル』と『ミスリルアーロイ』。ヒートメタルは魔力を流すことで熱を持つ金属で、ミスリルアーロイはミスリルと言う金属に色々混ぜ込んだ金属らしい。型は『直剣』と『鎧一式』、どうやら取り込んだ武器や防具が型で、その素材の金属を作り出す能力みたいだ。あっ、でも持ち手は作れないみたいだ。仕方ない、手の半分を剣に変えよう。

 う~ん、なんか大昔のアニメの悪役みたいになっちゃったな。なんだっけクック船長? いや、似てるけど違う気がする。まあ、見た目なんて今更の話だし、気にしない気にしない。それじゃま、行ってみようか!


 僕は木を大急ぎで降りて群がるゾンビに斬りかかる。けど、剣は一体目のゾンビの体半ばで止まった。あ~、思ったより上手くいかないな。もっとこう、ズバッといくかと思ってたんだけど。テレビみたいにはいかないなぁ、やっぱ練習が必要って事か。あれ? それじゃあの子の足を切り落としたあのクズはそれなりの実力者だったってことか? あんなのが強いとか、そりゃ神様も愛想を尽かすよねぇ。っと!?

 気が付いたら切ったゾンビの側にいる別のゾンビが僕の触手に噛み付こうとしてきた。危ない危ない、今は戦闘中だった。考え事はあとあと。でもこの調子じゃゾンビの排除なんて無理、となるとこの金属ヒートメタルの能力を利用したいんだけど、生憎僕には魔力の使い方なんて分からない。ってことで、助けてコネクター!!


『こちらで内蔵魔力を操作し剣に流します。これは緊急処置扱いとなりますので、次回からはご自分で使える様に感覚を覚えてください』


 了か、おう!? 体の奥から何やら不可思議な感覚が溢れて触手に流れていく。これが魔力、なのか? 剣を【熱探知】で確認。──確かに熱くなっている、これならいけるか? とりあえず一回斬りつけてみる。

 すると、ゾンビの肌をいとも容易く切り裂き真っ二つにした。すげえ! これなら行ける! うおりゃあぁぁぁ!!

 ズバズバとゾンビを切り裂き、コイツらが群がる中心に辿り着く。そこにあったのは、僅かに肉片が付いた骨だった。しかも骨も端の方に砕いた様な跡がある、手遅れだったか? とりあえず残った分だけでも取り込んでみる。……ああ、スキルの効果なのか、これが少女の骨と断定出来る。ああ、間に合わなかったか。一応今取り込んだ骨の一部だけなら複製出来るけど、それじゃ意味無いしなぁ。はぁ、おのれゾンビめ!


『まだ可能性はあります』


 それ、本当!? どうしたらいいの!


『彼等の様子みる限り死亡した直後にリビングデッド化しています。恐らく未だ体の機能の一部は鈍くなってはいてもまだ機能している筈。このまま時間が経てば少女の左足は消化されてしまいますが、今回は食べられてからまだそれほど時間は経っていない筈、ですので──』


 話が長い! 僕がどうすればいいかを教えて!


『ここにいるリビングデッドを全て取り込んで下さい。胃の中に少女の左足の遺伝子情報がまだ残っている筈です』


 な、なるほど。ゾンビを取り込めばいいんだな? ……一応聞くけど、ゾンビを食べたら僕がゾンビになったりは──


『しません。先程も伝えた様に細菌産ではないので取り込んでも問題ありません』


 よ、よーし、それじゃ、や、やるぞ! とりゃあぁ~!!


 剣はいらないので全て触手に戻し、でも押さえるのに便利だから手はそのままで、僕は噛みつこうとしてくるゾンビを逆に取り込んでいく。しかし、数が多い。移動用の太い触手だけじゃ足りない、僕は触手の太さを半分にして増やす。ついでに取り込む時の触手を巨大な球体に変える。これの方法なら触手を増やして、取り込める量も増やせる。

 悪戦苦闘しながらゾンビと格闘する事数十分、ついに全てのゾンビを取り込むことに成功した。足りなかった足の遺伝子情報も全て確保出来たし、急いで帰るとしよう。

今年最後の更新です。

もう1つの作品を主にしている為あまり話数は進みませんでしたが、読んでくださっている方ありがとうございましす。

もう少し更新頻度を上げたい、と思ってはいるのですが、なにぶん集中力が長続きしないものですいません。

それではよいお年を。

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