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XIII

 よっしゃあ! 脱出成功だぁ!! いやあ、目が覚めたら周りは真っ暗。【熱探知】して見ればブランとノワールは倒れてるし、もう何がなんだか。ダンジョンコアが填まっていた石板を見てからの記憶が曖昧で上ほぼ思い出せなかったんだけど、コネクター曰く一週間も意識を失っていたらしい。

 その間僕を守り続けた二人は魔力不足で気絶、それから暫くして僕が目を覚ましたそうだ。とりあえず大変だった事は分かったので今度は僕が頑張る番だ! って事で触手の先端をモールの爪へと変え穴を掘り進めること三日、ようやく外に出ることに成功したって感じだ。


 さて、念願の外へ出られた訳なんだが、太陽は拝めなかった。だって夜だったからね。流石に外が何時かなんて僕には分からないからこれはしょうがない。外に出ただけでも朗報さ、洞窟じゃなきゃ全然良いよ。それにしてもデッカイ、いや、デカ過ぎる月だなぁ。地球の月の何倍だろう? おっといけない、二人を引き上げないとな。よいしょっと。


 甲羅の隙間から伸ばした触手をズルズルと引っ張り、ブランとノワールを乗せた触手を掘った穴から引き摺り出す。スライムの特性を手に入れた結果か、触手を合わせることで太さの変化も可能になっていたのだ。おかげで二人の体を縛らずに運ぶ事が出来た。ありがとうスライム、次にスライムを見かけたら三匹まで見逃してあげるよ。

 まあそれはさておき、問題なのはこの子達の容態だ。見た感じ静かに呼吸して眠っているように見えるけど、丸三日以上この状態と言うし本当に大丈夫なの?


『完全に失われた魔力回復の為に、非常に深い睡眠に入っている以外に彼女達に問題はありません。あと数日も経てば目を覚ますでしょう』


 それなら良いけど、とりあえず彼女達を寝かせておける場所を探そうか。夜でもこれだけ明るいと周りの様子が見えて楽そう──おっと。


「ぴゃ!?」


 高い木の枝の上に止まっていた鳥ゲット~。掘っている時は食事をとれなかったからね、しっかり食べな──じゃない吸わないとね。じゃあ、いただきます。

 チュウチュウと血を吸いながら考える。とりあえずこれからどうしよう? やっぱりこういうときはまず拠点を手に入れるべきかな? 心と体を休める安全な場所。うん、まずはこれだな。

 次が食料、ただこっちは問題無さそうだ。だって堀り続けている間一度も空腹感を感じなかったからね、今吸ってるのも複製出来る部位が欲しいからだし。……あれ、それで良いんだっけ? う~ん? 問題ならまあいっか。

 さて、それで肝心の複製だけど、……出来ないね? おかしいなぁ、いままでは血を吸うだけで出来てたんだけど。コネクター、なんでか分かる?


『申し訳ありません。現在あなたのステータスの類いは一切の閲覧が不可能になっており、推測すら困難です』


 そうなのか? なんでまたそんな事に、


『恐らくダンジョンコアを取り込んだ結果、あなたの体になにかしらの変化があったとしか』


 取り込んだ? 僕が? なんで?


『不明です。ただ、当時の言動と行動を顧みるに酩酊、つまり酔っぱらっていた可能性が高いです』


 ローパーって酔っぱらったりするんだ。でもお酒を飲んだ記憶はないよ? 僕がこの世界に来てから食べたのはコウモリとモグラにムカデの血、後はスライムの体の水と魔石。何処にも酔っぱらいそうな物は無いよね?


『はい、酩酊状態を引き起こす物は何も』


 だよねぇ? 一体どうしたんだろうね、僕の体。まぁ、コネクターにも分からないならしょうがないよね。この世界の事をまだ何も知らないと言っていい僕じゃ、答えなんて出せる訳も無し。今の僕に出来るのは分かってる目の前の問題を一つ一つ解決していく事だけさ。それじゃとりあえず今晩の寝床を探そうか。


 ★            ★            ★


 しばらく歩いてから気が付いたんだけど、よくよく考えたら探す必要がないよね? モールの爪で壁に穴を掘れば十分な寝床を掘ることが出来るんだから。と、いうわけで元の場所まで戻って穴を掘った。さっきみたいな襲撃を受けるのは嫌だったから入り口は小さくして内側を大きく広げた、イメージはかまくらだ。二人を土を軽く固めたベッドに寝かせる、とりあえずはこれで様子見だな。

 さて、これからどうしよう? 二人が目覚めるまではこの辺の探索をしようか? はたまた目覚めるまで待っていようか? ……よし、入口に陣取って寄ってきたものを片っ端から捕まえて吸ってみよう。吸う種類を増やせば複製出来なかった理由が分かるかもしれないしね。


 うん? いざ外に出ようとしたら悲鳴な様な音が、なんだろう? ひとまず入口に覗き穴を残す形で塞いで様子をみてみる。暫くすると何かが地面を這いずる姿が見えた。どうやら人間、それも女の子の様だ。あちこちが破れたワンピースを着ている。女の子は何かを呟きながら入口の前をゆっくり通過していく。

 しかし見れば見るほどボロボロだなぁ、身体中も傷だらけみたいだし。あっ!? よく見たら左足の膝から下がない! 熊か猪でも襲われたのだろうか? うん? 今度は鎧姿の人が現れたぞ、しかも何故か笑いながら。声の感じから男だと思うが、女の子を助けに来たのだろうか? それにしては様子がおか──エェッ!? 右足を斬ったぁ!? 一体何がどうなっているんだ?


 男は次に彼女の右太ももに剣を突き刺し笑い声を上げる、まるで悲鳴を上げさせる事を喜んでいるみたいだ。だが、それにしても何かがおかしい。いや、男がじゃなくて僕自身の話なんだけどね。目の前で女の子が悲鳴を上げているのに何も感じない、死ぬ前は助けようと飛び出しさえしたのに。

 でも笑いながら剣を刺す男には苛立ちを感じている、やっぱり死んだ時の状況に似ているからかな? 出来ればまだ人としての感情が残ってるからだと信じたいなぁ。まぁ、それはそれとして。流石に見るに耐えなくなってきた、どうしようか? ……一応、僕の使命は人類の争いを止める事。つまり、いずれは人と戦う事になるわけだ。国や人を守る騎士とか、ダンジョンで見た軍人とはあまり戦いたくは無いけどあれとなら戦える……ような気がする。ふーっ──よし、やってみよう。もし無理だったら追い払うだけにしよう。


 さて、どうせやるなら徹底的にやるべきだよね。コネクター、何かいい案は無い? ……コネクター? おーい、もしもーし。……返事がない、これは全て自分で考えろと言う事だろうか? いいだろう、やってやろうじゃないか。

 男は泣き叫ぶ女の子を見て笑ってるんだから、男にも泣き叫んでもらおうかな。そして一番優先すべきは僕の安全、だったら地面からの奇襲なんてどうだろうか? うん、いける気がしてきた。やるぞぉー!


 まずは出せる触手全部の先をモールの爪にチェンジ、そしてここから地面を掘っていく。男の下に確実に届かせるために【熱探知】も忘れない。手早く掘るために触手を何本かのグループに分けて細かく掘り進む、イメージは突起付きのドリルだ。昔やったゲームにそんなのがあったんだよね。おかげであっという間に男の立っている部分の真下に空洞が出来た、何故崩れないのか? それは触手の一部で地面を支えているからだ。


 あっ、女の子が声を上げなくなった。死んじゃった? いや、呼吸はしているみたいだから気絶しちゃったみたいだ。ヤバいな、急がないと男が動いちゃうよ。仕方ない、まだ深さが足りないけど作戦決行だ。

 支えにしている触手以外を何本かまとめて太くして勢いよく地面から飛び出させる。とりあえずは8本用意して男が逃げられないよう囲む形にしてみた。男は驚いたように首を振っていたが、すぐに剣を構えて戦闘体勢に入った。もしかして奇襲(こういうの)に結構慣れてる? うん? よく見たら剣が異常に赤いな、相当熱くなっているようだ。だがどんな剣を持っていようと、ここまで来たら作戦に変更は無しだ。

 地上に出した触手の先から管を出し男に突き刺そうと動かす。3本の触手が剣に切り裂かれたが、残りは男に届いた。だけど管は男の鎧に突き刺さる事なく弾かれてしまった。むぅ、管より鎧の方が硬いようだ。血を抜いて少しずつ死に近付けて絶望を味わわせるのは無理っぽいな。じゃあ次だ。


 足場を支えている触手を外し穴をあける、男は驚いた声を出し落ちていった。よーしよーし上手くいったぞ。深さは立った男の肩ぐらいまでしかないから出ようと思えば出れてしまう。だから支えていた触手で尻餅をついた男の死角から強襲、か~ら~の拘束。あっ、この剣は危険なので手首を捻って落としておこう。

 どうも熱で溶かしながら斬る剣のようなのだ、おかげであの剣で斬られたら触手の先が再生出来ない。まあ、先を自切しすればいい話なんだけどね。

 さて、ここから鎧の中に触手を侵入させて血を抜くつもりだったんだけど、男がえらく騒ぐんだよねぇ。もしかしたら仲間を呼んでいるのかもしれない。う~ん1人にならともかく、この人レベルの装備を着けた人がたくさん来たら対処するのは……無理だろうなぁ。仕方ない手早く終わらせよう。

 伸ばした触手を男の鎧にくっ付けスライム化、少しずつ男の身体を包んでいく。更に鎧を溶かせるか試してみる、効果があったらいいな。それにしても触手をスライム化させてから男の騒がしさが増したな、煩いので口を塞いでしまおう。ついでに鼻も塞いでしまおうか? あっ、誰か来たぞ? 急がないと。


 男の全身を完全に包むのと、男の仲間らしき人達がやって来たのはほぼ同時だった。いや、僅かに包むのが先だったかな? 男の仲間達3人で1人は女の子方へ向かい、2人は穴を覗きながら何かを話している。流石にあれは雰囲気だけじゃ予想がつかない、何を話しているんだろう? あっ、女の子の方へ行った人が戻ってきて話に参加した。と思ったら3人揃って来た方向に帰っていった。どうやら見捨てられたらしいな、ざまあみろだ。まあ男がそれを認識してるかどうかは分からないけど。それじゃあこれ以上面倒が起こる前にさっさと溶かすとしますかね。

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