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L.K―Ⅰ

ちょっと人類側の情報を公開

 名無しのローパーがダンジョンの崩落に巻き込まれてから数日後、ダンジョンから遠く離れた場所にあるレヴァナント王国の首都『アリアント』では軍の定例会議が行われていた。会議は第一から第十騎士団の代表が集まり、それぞれの担当する地域での報告、それに関する相談を行う集まりである。会議の進行を行うのは軍師『モーゼン』、胸元まで伸びる豊な髭を蓄える初老の男性だ。


「え~、それでは定例会議を始めます。まずは第一騎士団から報告をお願いします」


 お決まりの台詞をモーゼンが告げると、左の席に座った屈強な男が報告を始めた。


「アリアント周辺でのモンスター討伐による騎士団の出撃が先月より二割増しました。家畜、農作物の被害の増加も確認されておりますが、幸いにも人的被害はなし。しかし、モンスター増加の原因と思われるダンジョンの発見には至っておりません。遠方で起きたスタンピードで地上に溢れた個体がアリアント周辺にまで流れ込んでいる可能性も含めて探索を継続する予定です。以上です」

「え~、ビルモート周辺でもモンスターは増加傾向があり、ダンジョンの探索を行っており──」


 その後も各騎士団が担当する地域での報告は続き、第十騎士団の代表が報告を終えた事で次の議題に入った。話の中心はモンスター増加による被害についてである。


「王国全土でのモンスターの増加、これは確実と言っていい状況か。原因に心当たりがある者はいるか?」

「具体的なものは私の方にはないな。他はどうだ?」

「こちらもこれといった情報はないですね」

「同じく。まあ、人知れず育ったダンジョンが我々が思っていたより多かっただけとは思いますが」

「王国全体でか? それは少々無理があるだろう」

「然り。一〇〇年前ならともかく、今は航空部隊も存在し我らの活動範囲も拡大しておる。未発見のものが有ったとしても、王国全土でモンスターの増加が確認される程のスタンピードが起こるとは考えにくい」


 確かに。代表達は一様に頷きながらその意見に賛同した。では一体何が原因か? それから暫く話を進めたが答えは出ず、会議が停滞しだしたと各々が感じていた時、第八騎士団の代表が口を開いた。


「恐らくは違うと思いますが、噂程度であれば一つ」

「ほう、どの様な噂だ?」

「はい。いくつか宗教団体が同時期に言い出したもので、曰く『世界が終わりが始まる』とか」

「ふん、なんだそんな話か。実在するかも分からんものを信じるバカ共の話など間に受けてどうする?」

「全くだ。そんな根拠の欠片も無い話なんぞ信じる奴等の気が知れん」


 レヴァナント王国内における神の信仰は既に失われて等しい。現在活動している宗教に属している者は王国人口の三%程度、更に言えば本当に神を信仰しているのは一%にも満たないだろう。その原因は神の奇跡を必要としなくなる程に発展してしまった魔法と科学、そして人類こそが至高とする今の世界の在り方だろう。と、神々は推測している。

 ちなみに、神々はたった数人でも信者がいるなら人類の情報が取得可能であるため、この会議の情報も筒抜け状態である。


 閑話休題。


 代表達が無駄な時間だと話を切り上げた後、会議の内容は最近の話題に移った。


「そういえば新兵器の試験投入をしたと聞いたぞ。私としてはそちらの話を聞きたいな、運用を任されたのは何処の騎士団だったかな?」

「あっ、それは私共の騎士団です」


 手を上げながら返事をしたのは第十騎士団の代表『ビネクト・アギルーゾ』、名無しのローパーが生き埋めになったダンジョン周辺を担当している騎士団である。


「なるほど。辺境の防衛をしている貴君達であれば試運転には事欠かないな。それで? 新兵器はどの様な結果を出したのだね?」


 第十騎士団が担当する地域は巨大な山脈を境にした国境付近にして、未だ人の手が僅かにしか入っていない危険地域でもある。道は一本しかない上、モンスターの襲撃度も高い。何よりその環境が牙を剥く。夏期は大雨による洪水、冬は大雪から雪崩が一年に数度発生し人々の生活を脅かす。

 如何に人が技術を発展させようとも、自然を完全に支配下に置くことが出来ないと言う事を証明する場所として王国の者達には有名な場所である。


 その為この地域を担当する第十騎士団の任務はモンスターの討伐や盗賊と言った者達の検挙よりも、人々の生活の輔佐、ならびに災害時の救出が主なものとなっており、他の騎士団と比べて戦闘力が劣っているとされている。実際にはそれほど差異は無い。むしろ体力と状況判断と言う面では他の騎士団より優れていると言ってもいいのだが、強さを第一とする騎士団としては下に見られているのだ。


 それを承知してはいるが、担当する地域の過酷さを人聞きと文面でしか知らない者にそれを言っても意味はない、と割りきっているビネクトは資料を片手に説明を始める。


「……色々問題はありますが、試験運用としては上々の結果を得られたと考えています。試験場所は最近発見されたダンジョン。生息していたモンスターのレベル、種類数からまだ生まれて間もない新造ダンジョンと推測、攻略と同時に試験を行いました」

「ちなみに生息していたモンスターの種類は?」

「大半がバット種です。他にモール、スライム、ローパーが確認されました。センチピードも生息していたようですが、大型種の死骸が確認されたので外から入り込んだ種であると予想されます」

「なるほど。話の腰を折って済まない、続けてくれ」

「え~、ダンジョンの階層は十二、ボスの名前は【エンペラーバルド】。【ハイ・キング】クラスのモンスターです」

「全十二層のダンジョンに【ハイ・キング】だと? それはまた、おかしなダンジョンだな」

「更に言えば、入り込んだとされるセンチピードを加えても五種類しか居ないダンジョンなら階層は七か八が妥当な筈、その辺りどうなんですか?」


 ダンジョンは成長すると階層と産み出すモンスターの種類を増やす。それには一定の法則があり、階層はモンスターの種類の約一.七倍程。ボスのランクは階層が一〇を増える毎にコモン、ノーマ、ハイと強化されていき、種類が一〇増える毎にポーン、ルーク、ビショップへと強くなる。とされている。


 この法則からあのダンジョンの予想される階層は八、ボスのクラスは【コモン・ポーン】になる筈である。このクラスなら騎士団一個小隊でも十分に討伐可能な相手であった筈であったが、待っていたのは【ハイ・キング】、明らかに異常であった。


 ランクには二種類の意味があり、前半が希少度、後半が脅威度だ。

 希少度はそのモンスターの個体数が少ない事を示すと同時に特殊性を示している。コモン、ノーマ、ハイ、レア、エス、ウルトの六つに分類され、ウルト寄りになるほど個体数が少ない事を示す。更にウルトに近いほど発見例が少なく情報が足りないため用心が必要となる。

 脅威度はそのモンスターの強さを示す指針だ。ポーン、ルーク、ビショップ、ナイト、クイーン、キングのこちらも六つに分類され、キングに近いほど討伐に戦力を必要とする。と人類種は定義している。


 予想通り【コモン・ポーン】であれば騎士団は一個小隊で済んだ。しかし、待ち構えていたのは【ハイ・キング】。今回は新兵器の試験運用と言う名目で過剰戦力を送り込んだこともあり被害は無かったが、本来なら全滅してもおかしくない状況であった。


「私共としてもその異常性から討伐した【エンペラーバルド】を回収し調査を行っている最中であります」

「調査が終了したら報告書を私に送ってください。他の騎士団の方も結果が出るまでダンジョンへの侵入を控える様に」

『了!!』

「さて、それでは報告の続きをお願いします」


 ビネクトに報告書を上げる事と同時に、騎士団の被害を減らすためにダンジョン攻略を控える様に伝えたモーゼンは、話の続きを促した。【エンペラーバルド】戦の顛末を話した後、暫く新兵器の話題で盛り上がったが未だ解決出来ない部分があるとして改良する事で話は終了。その後、簡単な情報を共有し会議は終了した。


 実はそのダンジョンでより危険な存在が生まれた事を、まだ人類は知る由もなかった。

ちなみに主人公のクラスは人類視点で言うと【エス・ルーク】になります。

希少度は高いけどそれほど強くない、と言うことです。

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