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XII

平成最後と言うことで更新です。

 近寄りたくないと思っていた【エンペラーバルド】は僕の目の前で討伐された。しかも、大砲が召喚されてから一分もしないうちに。

 いやこれマジでヤバくない!? あんな強いのこの世界の人類!? あれをモンスターとして倒せと? 無理でしょ~これは。


『レベルを上げ強くなればどうとでもなります』


 気軽に言ってくれるねコネクター、そりゃこの世界はゲームに近いけどさ。やっぱり死ぬのは怖いよ、だから地道にやらせてもらうよ。


『あまり悠長に構えられてもこちらも困るのですが』


 そんな事言われても、流石に無理でしょこれは。だってあれだよ? 時代背景は中世、剣と魔法で戦う世界と思っていたら銃に大砲だよ。ローパーなんて一瞬でお陀仏だよ!? どうしろって言うの!?


『それは……、あっ見てください。彼等が動く様ですよ』


 誤魔化したか。まあ良い、自分のペースで進むだけさ。


 さて、コネクターに言われて軍を見るとほぼ全員が部屋の中央に集まりだした。近接部隊から数人が奥へと向かっていく。う~ん? ダンジョンと言えば宝箱、かな? コネクター、あの先には何があるの?


『彼等が向かった先にはダンジョンの心臓部〈ダンジョンコア〉が存在します。閲覧が許可された部分の記述によると〈ダンジョンの始まりにして終わりを告げる物、不用意に触れるべからず〉とあります』


 始まりと終わり? そりゃ心臓なんだから壊れたらそこで終わりなのは分かるんだけど、始まりって?


『ダンジョンコアは完全ランダムで出現し、現れた場所から少しずつ周囲を侵食。ある程度侵食したところでモンスターを産み出し始めるようです』


 なるほど、ダンジョンコアが先に現れるから始まりね。それじゃあ、軍の目的はダンジョンコアの破壊って事かな?


『恐らくそうでしょう。ダンジョンは制限無くモンスターを産み出す魔境、人類には危険な場所ですからね。挑んだ所で徳もありませんし』


 えっ、ダンジョンと言えば宝じゃないの!? ゲームなら──


『この世界のダンジョンの役割はモンスターを増産し地上へ侵攻する事、ダンジョンもまたラグナロクの一端なのです。宝など配置して折角増やしたモンスターを減らされたりしたら意味が無いのです、分かりましたか?』


 マジか~、ダンジョンにお宝は無いのか~。いやまあ今の僕に武器とか防具があっても意味ないけど、ロマンがないなぁ。


「主様、戻って来ました。何か話してます」


 話の内容は?


「え~と、『任務完了しました!』」

「『うむ、では帰還魔法を使用する。全員ルーム中央へ集合せよ』ですって」


 帰還魔法? テレポートみたいな奴かな? 他には○ーラ、あ○ぬけのひも、え~と後は……とりあえずそんな感じの奴?


『ヒモは違いますね、あれだとダンジョンの入り口に戻るだけでしょうから。帰還魔法とは空間魔法『リターンポイント』の別称だと思われます。効果は指定した座標に一瞬で移動する、と言ったところです』


 なるほど。ダンジョンですることも終わったしさっさと帰ろう、って話なんだね。


 そんな風に思っている間に軍人達は足下で輝く魔法陣の光の中に消えた。エンペラーバルトも持っていってしまったらしく、部屋には何も居なくなった。これで彼等に殺される未来は回避された訳だ、エンペラーバルトが持っていかれたのは残念だけど、とりあえず良かった良かった。


『……ハァ』


 ちょっとぉ!? ため息とか止めてもらえる、地味に傷付くから!?


『しかしですね、あなたの使命は彼等のような者達を倒す事なのです。まだ実力が足らないのは理解していますが、心構えがそれではナビするこちらとしても思うところがですね』


 モンスターになって色々変わっていても性格そのものが変わる訳じゃないみたいだし、いきなり人と戦えって言われても心構えなんて出来る訳ないから。ゆっくりやろうよ、焦ったところで上手く行くわけでもあるまいし。


『……分かりました。ではその方向で』


 なんか含みのある言い方だけど、まあコネクターの言葉を気にしてても仕方ないしどう動くか考えよう。……そうだなぁ、とりあえず壊されたダンジョンコアを見に行ってみようかな。


「お供します」

「それでは私は入り口を見張っておきます。よろしいですか、マスター?」


 分かった。それじゃノワールは僕と一緒に奥へ、ブランは邪魔が入らない様にお願い。まず無いと思うけど勝てない相手がいたら逃げてね、逃げる前に一言くれると嬉しいかな。


「分かりましたわ。それではそのように」


 うん、よろしく。それじゃノワール、行こうか。


「はい、主様! よいしょっ」


 いや、別に持ち上げる必要は──あっ、ダメですか? これだけはどうしても聞いてくれないね、この娘。


 涙をこらえるような顔したノワールに無理と言いきれず、結局抱き抱えられたまま奥に来てしまった。いつかなんとかしたいんだけど、泣かれるのはちょっと、ね? まあ、それは置いといて。


 エンペラーバルトの流した血が染み付いたスペースを避け部屋の奥に向かう、ダンジョンの奥は小さな部屋になっていた。え~と、畳六畳分位? いまいち理解が出来てないけどコネクターはそれくらいだって言ってた。壁も天井も洞窟と同じ岩っぽいのだが入口正面から見た奥の壁だけ違う。一面に幾何学模様が描かれた石盤になっている、中央には窪みがあり紫色の何かの欠片が残っている。これがダンジョンのコア?


『の欠片ですね、どうやら破壊された後に割れたコアの大部分を持ち出されたようです』


 ダンジョンのコアって何かに利用できるの?


『ダンジョンは神の管理下ですから人類に利用出来るとは思えませんが、利用するための研究の材料になっている可能性は否めませんね』


 もしかしたら僕以外の転生者がゲームのダンジョンを再現しようとしているのかもね。


『それはありえません、現状この世界に居る異世界転生者はあなた一人です。仮にもし転生者がいるならば私達に情報が下りてくる筈です』


 そうなんだねぇ、じゃあ大丈夫なんじゃなぁい?


『どうしました? 何か様子がおかしいですが?』


 そんな事はないよぉ。ただこう何て言うのかなぁ? あの石盤を見てたらなんかこう、よく分からないけどぉ、え~と? なんだっけぇ?


「主様? どうなさいましたか?」


 特にぃ、どうもしてないよぉ?


『これは一体何が? 状態を確認……酩酊状態? ありえない。彼の精神には必要以上の負担を来さない様、厳重に封印が施されていたはず。何が起こっているのですか?』


 あ~、あれ良いなぁ。美味しそうだなぁ? そう思った瞬間、僕はなんの躊躇もなく石盤に全ての触手を伸ばす。


「主様!? それは我らが神の創造物、食べ物ではありません! 手を御離し下さい!!」

『……もしや、彼に付加された神の力がダンジョンコアから何かしらの干渉を? しかし、このコアは既に機能を停止している。情報が不足ですね、至急情報取得の申請を──』


 アギャアァァァァァァ!? 痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイいたいいたいいたいいたい!? 頭が割れるぅぅぅぅ!?


「主─ぁ!? は─く───な─て!?」

「ノ──ル─があ──マ───!? ─をし───ので─か!?」

『こ───け──ん! ──ての───うを──だん、彼───し─ほ──い──せん。よ──くき───い、ふ──はさ───ん!』


 いた、くてこえが、ききと、れない。ダメだ。も、うむり。いし、きが──


 ★         ★         ★


 私は世界のナビゲーターの『コネクター』、今はローパーとして転生した異世界人のサポートを行っています。神によって保護されている彼の意識に、停止したはずのダンジョンコアが干渉。酩酊状態に陥り、現在ダンジョンコアを飲み込もうと触手を石盤に巻き付けています。


 彼の配下として目覚めさせた天使が触手を剥がそうとしていますが、剥がれる様子がありません。天使の方が力は強い筈なのですが。私も触手の権限を取得し離そうとするのですが。一切こちらの操作を受け付けません。その最中、彼の中に大量の情報が流れ込み彼の脳に障害が発生しました。私は彼の意識を強制的に落とし保護しましたが、ローパーの触手は石盤から離れる事はありません。明らかに彼や私とは違う存在がこの体を動かしています、そして今も何かの情報が流れ込んでいるのですが私には閲覧が出来ません。


 もしやこれは我らが神が何かしらの動きを見せたのでしょうか? そう推測している中、事態は悪化します。もう一人の天使が合流し、七割ほど溶けた石盤から触手を剥がしている時です。突然、周囲が揺れ始め小さな石の欠片が落ちてきました。


「これは!?」

「いけない! ダンジョンが崩壊するわ!!」

「急いで主様を剥がさないと」


 私が取得した情報では数日は崩壊が起きない筈なのですが、まだ閲覧許可が降りない部分に理由があるようです。もっと完全な情報が必要ですね、これも申請しておきましょう。


「ダメ! 引き剥がせない!」

「仕方ない、結界を張りましょう! ノワール、準備を!」

「分かったわブラン」


 天使達は崩壊から彼を守るため、守りを固める事にしたようです。とりあえずこれで彼の命は大丈夫の筈ですが、はてさて、何が起こっているのやら。どうやら神は私達にも隠してある事が山程ある様子、追及出来る日が来ると良いのですが。今は彼が使命を果たせる様に願っておきましょう。

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