I
僕は目を覚ました。でも、周りは真っ暗で何も見えない。
はて? ここは何処だろう? まずは眠る前の事を思い出してみる。確か……
そうだ! 僕は学校で授業を受けていたんだ。もうすぐ昼休み時間で今日は図書室で何を読もうか考えていたら、突然知らないオジサンが入ってきたんだ。先生がオジサンに何か聞きながら近寄っていった。多分知り合いだったんだろうな。
先生が側まで近付いた直後、先生が倒れた。オジサンの手には赤い血がベットリと付いた包丁が握られてた。誰かがそれを見て叫んだ、それを皮切りにみんなが教室から逃げた。僕は足が遅くてみんなの後ろを走っていた。
だから気付いてしまった、僕の後ろで同じクラスの女の子が捕まったのを。女の子は必死で迫る包丁を押さえようとしていた、でも、力負けして体を刺された。何処かはわからない、でも、それを見た僕は走った。ただ、助けないと、その思いだけで。
僕はオジサンに体当たりして、女の子の上から押し退けた。僕は女の子に逃げて、と叫んだ。でも女の子は刺された痛みでそれどころじゃなかった。だから、僕は女の子を引きずってでもそこから逃がそうとして、オジサンに背中から刺された。
そのあとの事は曖昧だ。でも、ずっと背中に痛みがあったことは覚えている。と、言うことはここは病院? それにしては人の気配が無いな、それに静かすぎる。
そう言えば声も出せない。だれかーー! 説明してーー!?
『お答えしましょう』
ピコン! と音とが頭に響くとそんな声が聞こえた。えっ、誰?
『私は世界のナビゲーター、【コネクター】とお呼びください』
世界のナビゲーター? なんですかそれ?
『私はあなたを補助する存在、あなたが疑問に思う事の答えを示すものです』
へぇ~、じゃあここは何処?
『ここはレヴァナント王国とアフェンス公国国境沿いの山にある洞窟です、所属としてはレヴァナント王国になります』
レヴァナント? アフェンス? どちらも聞いたことの無い国名だな。そもそも日本じゃない時点で色々おかしいんだけど、本当に僕の身に一体何があった?
『個体名【池崎 鯨地】は死亡しました、その際、記憶を宿した魂が次元の狭間に迷いこみこの世界漂着、つい先程多腕種【ロールローパー】に魂が定着しました』
……ゴメン、もう一回始めから言ってくれないかな?
『私は世界のナビゲータ──』
違う! 戻りすぎ! 僕がどうなったのか聞いてるんだ!
『……個体名【池崎 鯨地】は死亡しました、その際、記憶を宿した魂が次元の狭間に迷いこみこの世界に漂着、つい先程多腕種【ロールローパー】に魂が定着しました、以上です』
つまり、僕はそのロールローパーって奴にに転生したって事? なんてこった、転生うんぬんは漫画とかで読んだことがあるから知ってるけど、まさか人以外に転生するなんて、はぁ~。あっ、そういえばあの女の子はどうなった? 僕みたいに死んじゃった?
『私は世界のナビゲーター。この世界の事なら大抵の事はお答え出来ますが、異世界の事は池崎鯨地の記憶までしか知り得ません。よってその回答にお答えする事ができません』
分かった、それじゃ生きている事を願っておくよ。それじゃ次、僕の魂が定着したって言うロールローパーについて教えて。
『ロールローパー、螺旋状の甲羅を持ち八本の触腕で獲物を捕食する魔獣と呼ばれるモンスター、知能が低く目の前の獲物を触腕で絡み捕り血を吸う、平均体長24㎝、体重1.7㎏、触腕80㎝、太さ3㎝、ちなみに、あなたにも分かるように単位はあなたの世界のものを採用しております、ちなみにこちらが姿の見本です』
僕の頭の中に一匹の動物、いやモンスターの姿が浮かぶ。簡単に言えばカタツムリに触手が8本生えた感じ? でも、頭は結構しっかりしてるみたいだ、顔が大きくて鱗のない蛇といったところか。目が妙につぶらなのが気になるけど。それより知能が低いって事は僕の頭が悪いからこれに転生したって事? なのか。
『いえ、魂がモンスターに定着したのは手ち──偶然です』
待って、今手違いって言おうとしなかった?
『空耳でしょう、とにかく偶然とは言え人の記憶を持ったモンスターが生まれてしまったのは問題です、ですのであなたのモンスターライフをサポートするため私が派遣されました』
よく分かんないけど、結局僕は何をすればいいのでしょう?
『生きればいいのです、この世界でモンスターとして、ただ、1つだけ我らが主の願いを聞いては頂けませんか?』
そうだね、もう役に立つか分からない勉強はしなくていいし就職する必要もない。自分から死ぬのも嫌だし、願い事の1つや2つどうって事ないかな。
『では我らが主のメッセージを再生します』
『初めましてこことは違ういずこから来た者よ。私はこの世界を創造した存在、君の世界で言う所の神と言う奴だ。まぁ、私だけで生み出した訳では無いから神々の代表と認識してくれれば十分だ。
さて本題だ。実はこの世界は現在進行で滅亡の危機にあってね、あと数百年で文明が滅ぶ予定なんだ。原因は戦争。私達が生み出した人々はまるで何かに取り憑かれる様に互いを滅ぼしあう力を求めてる傾向にあってね、君にはそれを阻止するための抑止力になってほしい。
と、言うのが神々としての願いだ。私としてはそれなりの刺激を世界にもたらしてくれるだけでいいと思っている、例えば君の世界の技術を再現するとか、ね。まぁ、それは君の采配に任せるよ。
既に君の中には私達から力を与えてある存分にその力を活用してくれ。使い方はコネクターに聞くといい、あれはこの世界の事ならある程度は知っているからね。では君の武運を祈る』
『メッセージは以上になります』
え~と、僕に戦争を止めろ、と言っているのかな? ……無理だよ!? そんな事出来る訳がない! ただの学生だった僕が? いまやどんな姿になったよくわかってない僕が? 戦争を止める? どうやって?
『その為の力は既にあなたの中に、その名を【混沌の種子】と【秩序の種子】』
混沌と秩序? それどんな力なの?
『この2つはまだ明確な力を持っていません。あくまでこれは種子、これをスキルに昇華するのがあなたが最初になすべき事になります』
どうやって、その昇華? をすればいいのですか?
『正確には不明です。ですが、この種子はあなたの心や欲望の影響を受け成長しますので生きていればその内に芽吹くでしょう』
それじゃあそっちは今は置いておくとして、僕は何をすればいい? その前に僕には何が出来るの?
『あなたに分かりやすくするためゲームのステータスの形で表示します』
名前【 】
種族:ロールローパー
Lv.1∕10
技能:熱感知
触手再生
混沌の種子
秩序の種子
あ、攻撃力とか防御力なんかは無いんだね。レベルの左の数字は現在のレベル? なら右は限界値かな。触手再生はそのままだとしてわかるとして、熱感知ってどんな感じ?
【熱感知】
『熱を見る事が出来るスキル、ピット器官或いはサーモグラフィー』
僕でもわかるようにか、聞いたことのある単語が並んでいる。ピット器官は確か蛇の鼻先にある器官だったかな? サーモグラフィーは温度を見れる様にしたものだった筈。ならなんで僕の周りは真っ暗?
『それはまだあなたがその体に慣れていないからです、ですがそろそろ体に魂が馴染んだ筈です、まずはその甲羅から顔を出して見てはどうですか?』
おお、ここは甲羅の中だったのか、では早速動かしてみよう。……おお! さっきまでは全く動かせなかったのに、今度はきちんと触手を動かしているって感じがする。さて外はどんな感じかなぁ?
初めましての方も、そうじゃない方もこんにちは、迅風雷です。
この作品は異世界人外転生物になります。
不定期ですので更新はゆっくりになりますが、目標としては月一位で更新したいな、と思っております。
とりあえずストックがありますので、1週間毎日更新します。
それでは