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冒険者登録 1

 俺には世界最高の賞金稼ぎになるという夢がある。

 なぜなら、この世の中は金がなければなにも始められない。

 そう、冒険者であっても……。


 ⁂⁂⁂⁂⁂⁂


「あの〜、冒険者の登録をしたいのですが……、」


 俺は冒険者ギルドの受付のお姉さんにそう告げた。

 ここに来る前に何度も練習して来たセリフ。

 言い回し、手振り、表情に一切の問題はないはずだ。

 決してカッコつけすぎた格好でもなく、自身のなさそうな表情でもない。


(ここから俺の冒険者人生が、始まる!)


 期待に胸を膨らませて、ギルドにお姉さんの目を見る。

 うっ、ギルドのお姉さんはとても綺麗だ。

 ギルドにいれば高額の賞金稼ぎに難なく出会え、玉の輿に乗ることができるから、ギルドへの就職希望する女性は多いという。だから、たくさんの女性の中から選び抜かれた綺麗な女性なのだろう。その方が、冒険者もたくさん来るってわけだ。

 そうこう考えていると、お姉さんは申し訳なさそうに口を開き、


「あのぉ〜、冒険者登録をするのに、受付表を書いてもらう必要があるのと、お金が必要となるのですが……」

「受付表は文字が書けないから書けない。

 お金は出世払いで頼む」


 と堂々と告げる俺。

 想定の範囲内の質問だ。もちろん練習をしてきている。

 一方、受けのお姉さんは困り顔だ。


「あのぉ〜、ご年齢はいくつでしょうか?」

「15才だ」

「そうであれば、中等部で文字の勉強をされていると思いますが……」

「していない。

 というか、中等部に行っていない」


 露骨に困惑の色を深めるギルドのお姉さん。

 受付嬢なのにお客さんへ不快な思いをさせるようなことをするなんて受付嬢失格だぞ。などと俺は思はない。

 なぜなら、この国では中等部を卒業することを義務づけられているからだ。

 だから、新しく冒険者登録をしに来た奴が来た、聞き耳を立てていたギルド内の奴らが俺に騒然とし、


「お、おい、中等部を出てないって言ってる奴がいるが、ありゃぁ〜一体どうなってるんだ?」

「そ、そもそも中等部をでないってできるの?」

「もっと言えば、この国で中等部に入らないって方がどうかしてるだろう。なんせ中等部は無料で入れて、この国で生きていく基礎を教えてくれるんだからな」

「そうそう、冒険者になりたい人も多いから冒険者としての訓練もできたような……」

「もし、冒険者になりたいのなら、中等部を卒業してからの方がいいのに……。あそこは入学するのに年齢は問わずだったはずよ」


 などといった声が聞こえてくる。

 みんなが言ってるのはもっともだ。

 俺だって中等部に入れるならば入りたかった。

 だから、俺も中等部に入ろうと中等部の門をここにくる前に叩いた。

 だが、入学試験は見事に落ちた。誰にも入れるはずにもだ!

 そして、この国では全員がつけているという腕に、落第の印がつけられているものを強制的につけられてしまったのだった。

 それ以降、なにをするにしても蔑まれる日々が始まった。

 だから、実力がものを言うはずの冒険者という職業を選んだはずだったのに。


(冒険者人生が始まる前に、冒険者人生が終わってしまうのか!)


 と考えていると、受付のお姉さんが、


「と、とても申し上げにくいのですが、お話を聞く限り冒険者の登録はできませーー」


 と言い出した。

 そして俺も終わった、と思いかけたとき、


「待ってください。

 その人の冒険者登録を認めてあげてください」


 と、とても艶やかで綺麗な黒髪の少女が割り込みながらはっきりと言う。

 出た。俺の呪いの対象。俺が呪いによって力を与える代償に従者にさせた少女だ。

 ここに来るな、と言っていたのに……。

 さて、その少女は、受付のお姉さんよりも年下なのに反論を許さない雰囲気がある。


(なんでこんなに強気なのだろう)


 と、受付のお姉さんも同じこと俺と同じことを思ったのだろう。


「すみませんが、こちらの方のギルド登録はできないのですが……」

「いいえ、してください。

 私は孔雀結社から派遣されて来たものです。

 こちらのギルドでは私に従う義務があります」


 と言いながら、一枚の紙を見せる少女。

 そして、受付のお姉さんは緊張した面持ちになり、姿勢を正して、


「す、すみませんでした。

 ただちにあちらの方の冒険者登録を行います」

「お願いします」


 と、少女は言ったあと、俺のほうを見て、


「よかったですね。

 これで冒険者になれますよ。

 ご主人様の従者としてお役にたててよかったですね」


 子猫がご主人様のために獲物を取って来て褒めてもらうにを待っている顔だ。

 少女のとてもかわいい笑顔に俺は思わず見とれてしまった。

 俺がこの少女に出会ったのは数日前にさかのぼる。

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