十二月の浅瀬
「ほら、あれ、例の人」
海の声に、梓真はラーメンを啜っていた箸を止めて顔をあげた。
大学構内にある一番規模の大きい食堂は、昼時になると席を確保できないほど混雑する。海と梓真は時間を少しずらして遅めの昼食を取っていた。混雑もピークを過ぎているころ、カウンターにトレイを持った『例の人』が並んでいるのを海はめざとく見つける。
「…例の人って?」
梓真が目をこらす。
「いやいや、分かるだろ、文学部の。佐々木さんだっけ?お前1年の頃仲良かったじゃん」
「……般教で一緒になってちょっと仲良くしてただけ…『例』って?」
「…知らない?『神隠し』」
「かみかくしぃ?」
梓真は、いつもは変化の少ないその顔にしては珍しく、海の話に片眉を上げた。
「そう、神隠し」
海は、いたずらっこのような意地の悪い笑みを浮かべて、心なしか声を潜めて言う。
「失踪するんだって。2、3日ぐらい」
短いな、という梓真の言葉は見事になかったことにされる。海はつづけた。
「失踪して、周りが心配しだすだろう、授業にもこないバイトにも行ってない、どこに行ってるんだろうって。そしたらすぐに本人が何でもなかったのように戻ってくるんだと。――失踪してた、その数日間の出来事を一切忘れて」
「へぇ」
「そんで、その失踪する前には必ず、南……分かるだろ?あのめちゃくちゃイケメンって有名な、南。失踪する前には必ず、南と親しくなったりなんらかの接点を持ったあと失踪するらしい。だから、南が神隠しの犯人なんじゃないかって言われてる」
「へぇ」
「……興味ない?」
「キョーミないよ」
「やっぱりかぁ」
「なにそれ」
くだらない話だった、と言わんばかりに、梓真は再びラーメンを啜る。
海は、梓真のそういった態度が気に入っていた。あまり周囲に、否、噂話などにほとんど興味を示さないその態度が。梓真の周りだけ、時間の流れが違うかのような錯覚に陥ることができるからだ。キョーミないよ、という言葉が聞きたいがためだけにこの話題を振ったというところももしかしたら心のどこかではあったのかもしれない。この話はもう梓真の前ではすることはないだろう、と、海はスプーンを手に取り量の多さだけが取り柄の学食のカレーを一口食べる。
すると。
「……ッ」
ぞ、とするほどの寒気を感じた。
視線だ。
寒気を感じるほどの視線が、海に注がれていた。彼はその方向を見る。
――そこには、南がいた。
絶対零度の凍てつく眼差しで、じぃ、と海を見つめていた。
「………」
もしかして、彼の噂話をしているところ聞かれてしまったのだろうか。いやまさか。距離は十分に離れている上、ピークを過ぎたとはいえほどほどに食堂は騒がしい。
しばらく目を合わせたあと(実際は1秒も合っていないが海にはとても長い時間を感じた)、つい、と南は視線を外す。
「………なんだ、あれ」
海は全身から冷や汗が出ているのが分かった。
「なに?なんかした?」
「………いや、なんにも……なぁ、南って名前、似合わないと思わないか?」
「へ?」
「あんな、冷たくてクールって感じの美青年に、南って……イメージが真逆っつうか……下の名前はなんていうんだろ…」
「……そう?俺は別に」
それはそうだ。もともと他人に関心がない男が、名前まで意識することなんてほとんどないだろう。海は梓真がすべて話し終わる前に、この話は終わりな!と明るく話題を変えた。
**
『深井、海っていうの…』
『そう。親も酔狂だろう?』
海と梓真の出会いは、1年次の時に同じ授業を取っていたことだった。学科は違えど学部が同じな二人はよく授業がかぶっていた。そして、この学部は何故か分からないが女性が多い。彼らが友好を深めていくのは当然と言えば当然の成り行きだろう。
海は授業終わりに提出するレスポンスカードに、深井海、と自分の名前を書く。
『どうして?』
『どうしてって…深い海だぜ?ひねりがないっつうか名前で遊ぶなっつうか…』
『俺は綺麗な名前だと思うけど』
『………』
『俺、浅瀬の石って書いて、浅瀬石。浅瀬石梓真。仲良くできそうじゃない?』
梓真は海に微笑んだ。梓真自身目立つタイプではなく、また特定の誰かとつるむというタイプではないため、あまり気づきにくいが、恐ろしいほど整ったかんばせをしている。
海は、この時からもう、梓真の虜だったのかもしれない。天使がいるとするならば、このように微笑むのだと、本気で思った。
大学生は本来、学年が上がるにつれ暇になっていくものだろう。けれど、まったく関係ない分野もある。海と梓真が所属している学部もまったく関係がない分野だった。4年次になった今でもこうして、必修と言って差し支えない授業が入っている。
開始前10分、海は頬杖をついて3階から見えるこの大学の中庭の様子を見ていた。この授業は学科が違う梓真は取っていない。もっと言うと他の仲の良い友人もいない。3年次4年次が混合しているなか、海は窓際の後ろから三列目に座っているのが常だった。
いつもは、そうだった。
「――どうも」
「ッ」
突然誰かが隣に座ってきた。いつも誰も座ることのないそこには――件の、南がいた。
持て余している長い足を組み、切れ長の目で海を伺う。
名前とは裏腹、氷のような男だ。
「………」
海が何も話せずにいると、口元だけに笑みを携えて、南が口を開く。
「深井くん、だっけ」
「………なんで、名前」
「今日はいつものお友達はいないの?」
海の問いの一切を無視して、南はあたりをきょろきょろと見回す。
「誰のこと?」
「とぼけないでよ。いつも一緒にいるじゃん。飛び切りに顔の良い彼」
「……」
「彼とは仲がいいの?」
「どうして言わなくちゃいけないんだ」
「いやぁ、ただの世間話。『君』こそ『俺』に興味深々みたいだけど?」
「………」
これは確実に嬉々として噂話をするところを聞かれてしまっている。そのことに関して素直に詫びて、早いところ絡むのを切り上げてもらいたいと海が口を開くも、南は海の話を聞こうともせず遮る。
「ねぇ、見物料ってことで質問に答えて。顔の良い彼とは仲が良いの?」
「………仲が良い、というか、別に。友人」
何故か、南の質問に素直に答えてやる義理はないと思った。
「『別に。友人』ねぇ……」
「……つーか、突然なに?あんたこの授業取ってないっていうか、そもそも学部違うだろう」
「もう寝た?」
「あ?」
「あれ、意味わかんないかな。もうセックスした?」
「…………マジで意味がわかんねぇんだけど」
「意味わかんなくないだろ。見れば分かる、あんたら二人がそっちだって」
「……キモイ、無理」
「それは俺が?顔の良い彼が?――……それとも自分が?」
「いい加減に…ッ」
「まぁいいか。その様子だとなんもしてないみたいだし」
そういうと、南は立ち上がる。
「それじゃ」
「おい、結局なんだよ」
既に背を向けて出入り口に向かっている南に思わず語気を荒げる。
「なんも?深井くんはついで」
「ついで?」
「そう、ついで。――そうだ、ついでの、ついでに」
南は振り返る。
凍えるような鋭い美貌に、笑みを携えて、振り返る。
「――身の程を知れよ、深井海」
――刺された。
海は、その言葉を受け取った瞬間、そう思った。
鋭利な氷柱に刺された。言葉が雰囲気が鋭く尖り氷柱となって海に襲い掛かってきた。
こんなにも他人から露骨に嫌悪をぶつけられたことなんてない。そう、あれは、あの眼差しはあの雰囲気は、嫌悪だ。
――なぜ。
なぜ、一切かかわりがない海に対して、南は嫌悪を向ける?そのことが、授業中も海の頭の中をぐるぐると支配して――そして、あまりよくはない結論に至ってしまう。
**
「梓真」
「おはよう」
次の日の朝、梓真の前に現れたのは、何か思い詰めた顔をした海だった。
「朝から辛気臭いけど、どうしたの」
「………いや、なんか、冗談みたいなこというけど」
「うん」
「お前、南に狙われてるかも」
「………はぁ」
あまりに真剣な顔で、冗談を言う海に、梓真は気の抜けた返事をすることしかできなかった。
「その話、この間で終わりじゃなかったっけ」
「いや、昨日実はさ――……」
本来、南が足を踏み入れてくる場ではない教室で、明確に接近されたこと。そして、海を通して梓真のことを聞かれたことを素直に話した。寝ただのセックスだのの下りと、身の程云々の話は省いた。話すメリットが一つもない。
「……南が、海に会いに来たの」
「そう」
「たまたま通りすがった、とかじゃなくて」
「なくて」
梓真は、眉根を寄せて考え込む。てっきり、キョーミないと切り捨てられるかとばかり思っていた。
「………それ、万が一本当だったら、やばいの海じゃない?」
「は?」
「神隠し」
「いやいや、だってお前のことを聞いて来たんだぜ」
「でも、俺は南に狙われる理由なんてない」
「それは俺も」
「………うーーん。なるべく、一人でいない方がいいかもしれない」
「一人でって…。俺、部屋帰ったら一人だし」
「それじゃ、俺が海の部屋行くよ」
「はぁ?」
「そうすればなかなか大丈夫だと思わない?」
「…………まぁ、梓真が、いいなら」
じゃあ決まり、と、天使の笑みをもってして梓真は微笑んだ。
そこから、約一週間ほど、梓真は海の部屋に泊まり込んだ。正直な話、なにも変な気を起こさなかったと言えば嘘になる。嘘になるし、
ここで攻めていかなければいつ攻めていくという絶好のタイミングだった。南が恋のキューピットにすら思えてきたほどだ。
それでも、海は、梓真はただの友人だと心に言い聞かせた。
なにせ、梓真は、本当に本当に清く美しく見える。世の中の穢れを知らないような、知ることができないようなそんな神聖さが、ある。
このまま、梓真の一番の友人で居れたらいい。
「……そろそろ、俺、自分の家戻ろうかな」
ぽつりと、梓真が言った。
「……大丈夫か」
「大丈夫じゃない?一週間、何もなかったわけだし、俺も海も」
「おう」
「なら、たぶん、杞憂だったってだけだよ。ふふ、一週間、なんか楽しかった。いい思い出」
海は、その一言にたまらなくなる。
「…………じゃあ、こんど、俺が梓真のとこに行くよ」
一世一代の告白をしているかのような気分だった。その海の言葉を聞いた梓真は目を丸くして、それから何か考えるような仕草をして、是の意を込めて頷く。
「海さえよかったら」
初めて行く梓真の部屋は、大学生の一人暮らしにしては立派なマンションにあった。オートロックのエントランスに入り込むと、エレベーターで5階まで上がっていく。もしかしたら、梓真の実家はなかなか生活水準が高いのかもしれない。そういえば、梓真の家のことはよく聞いたことがなかった。今晩あたり、なんとなく聞いてみたい。マンションは階にそれほど多くの部屋があるわけではないらしく、エレベーターで辿り着くと、部屋は目の前だった。
「あれ、表札。名前違くね」
鍵を取り出している梓真の肩越しに、『氷月』と銘打ってある表札が目に飛び込んできた。
「うん、俺の名義じゃないからね」
「おじさんとか?」
「ううん、同居人」
「えっ」
「入って、どうぞ」
「……同居人、って……お邪魔します……?」
さほど広くないたたきには、すでに男性物のフラットシューズが几帳面に並べてあった。聞いてもいなかった同居人について動揺を隠せないまま、海は促されるまま、部屋の奥へ入っていく。
ただいまぁ、と、梓真の間の抜けた声に続いて海がリビングに一歩踏み込むと、どこかで聞いたことのある男性の声が迎え入れる。
「おかえり、あずま」
――どこかで、聞いたことのある、声だ。
氷のような、美しく低い声音。
その声はそう、その見た目にとてもよく似合っていると思ったばかりだ。
――一週間ほど、前に。
「………同居、人って」
海の声が否応なしに震える。
だって、今まで自分たちは、海と梓真は、この男から逃げるために生活を共にしてきたはずだ。
なぜ、その、張本人である彼がそこにいる。
なぜ、南が、そこにいる。
「寂しかった?」
「そりゃもう。一週間いなかったんだぞ、お前」
「ごめんね」
聞いたこともないような甘ったるい声をだして、梓真が天使のような微笑みを浮かべて南に寄り添った。
海は、この状況を理解できるかどうかに関係がなく、一刻も早くここからでなければいけないと本能的にそう感じた。竦む足を叱咤し、一目散に踵を返そうとする。
返そうと、した。
「うみ、まって」
梓真のその声に、その声だけで、まるで海の体は金縛りにでもあってしまったかのように動けなくなってしまった。続けて梓真が言う。
「誤解を解かなきゃ」
梓真と南に対面するようにリビングと廊下の間に尻もちをついてしまった海は、一歩一歩ゆっくり近づく梓真をただ眺めることしかできない。
「海は、みなみが、神隠しとかいうオカルトチックなことをしてるって思ってたんだ」
そういう梓真に南が肩をすくめてみせた。
「ひどい奴だな。いくらなんでもそんなこと俺にはできない」
「そうだね、みなみにはできないね」
梓真の指先が、海の喉仏をとらえる。
「だってみなみは、ただの人だもん」
梓真の口唇が、海の耳朶をとらえる。
「神隠し、2,3日の記憶をなくす、だっけ?それ正確にはちょっと違うなぁ。俺、2,3日の記憶だけ『喰う』とか、そんな器用なこと出来ないから」
梓真が言葉を紡ぐたびに、海は脳味噌に睡眠薬かなにかが流れ込んだかのようにぼおっと意識が薄れていく。
南が、冷たい嫌悪丸出しの眼差しで、海を睨んだ。
「馬鹿なやつ。本当はあずまとの『思い出』がもうちょっと溜まるまで泳がしてやろうと思ったのに。お前、あずまにべたべたしすぎなんだよ。流石にイラッときた」
「そういうなよ。俺、割と本気で海のこと気に入ってたのに」
「それが余計腹立つ」
文学部の、女の子。1年の頃、授業で梓真と仲がよくなったはずだ。それなのになんで、今は廊下ですれ違っても挨拶すらしない?
その前に神隠しにあったと噂されていた同学年の男子。彼、彼だって、梓真と高校が同じだと、言っていたじゃないか。
その前。
その前。
その前は?
海の頭の中に、噂話だと半分以上冗談として聞いていた情報が一気に流れ出す。
そうだ。そうだ。
南じゃない。
神隠しに会うのは、南に気に入られた人ではない。
順番が、逆だ。
神隠しに会うのは、神隠しに会う数年前――南が接近する数年前に、梓真が交友関係を築いていた人ばかりではないのか?
他人に興味を持つ素振りをしない梓真。特定の人間とつるまない梓真。目立たない梓真。
南は、その梓真に。
「どうせ喰ってしまってあずまのことは綺麗さっぱり忘れるんだろうけど、それでも嫌だ」
「だから今回、こんな露骨に海に近づいたってわけ」
「まぁね。でもそのおかげでこの一週間、美味そうな思い出、たくさん作れただろう?」
「……おかげさまで」
南もかがみこんで、海に馬乗りになっている梓真と視線を合わせた。
なだめるように、梓真が南に一つキスをする。
「心配しなくても、俺にはもう、みなみしかいないよ」
「……ん」
「みなみを喰ったら最後、本当に俺はおしまいだから」
梓真が天使のように微笑んだ。
――きっと。
きっと、人を拐かす、天使がいたとしたら、こんな風に微笑むのだろう。
「本当、バカなやつ。――生き物は、生きていける場所が決まってるんだ。深い海の生き物は、浅瀬に打ち上げられたらもう終わりだ。死ぬしかない。自力で、沖に帰ることなんてできないんだから。――あずまに近づこうとしないで周囲を漂っていればよかったものの」
薄れていく意識の中、南の迷惑そうなその声だけが、反芻した。
**
「ほら、あれ、例の人」
海の声に、梓真はラーメンを啜っていた箸を止めて顔をあげた。
大学構内にある一番規模の大きい食堂は、昼時になると席を確保できないほど混雑する。海と梓真は時間を少しずらして遅めの昼食を取っていた。混雑もピークを過ぎているころ、カウンターにトレイを持った『例の人』が並んでいるのを海はめざとく見つける。
「…例の人って?」
梓真が目をこらす。
「いやいや、分かるだろ、文学部の。佐々木さんだっけ?お前1年の頃仲良かったじゃん」
「……般教で一緒になってちょっと仲良くしてただけ…『例』って?」
「…知らない?『神隠し』」
「かみかくしぃ?」
梓真は、いつもは変化の少ないその顔にしては珍しく、海の話に片眉を上げた。
「そう、神隠し」
海は、いたずらっこのような意地の悪い笑みを浮かべて、心なしか声を潜めて言う。
「失踪するんだって。2、3日ぐらい」
短いな、という梓真の言葉は見事になかったことにされる。海はつづけた。
「失踪して、周りが心配しだすだろう、授業にもこないバイトにも行ってない、どこに行ってるんだろうって。そしたらすぐに本人が何でもなかったのように戻ってくるんだと。――失踪してた、その数日間の出来事を一切忘れて」
「へぇ」
「……興味ない?」
「キョーミないよ」
「やっぱりかぁ」
「なにそれ」
くだらない話だった、と言わんばかりに、梓真は再びラーメンを啜る。
海は、梓真のそういった態度が気に入っていた。あまり周囲に、否、噂話などにほとんど興味を示さないその態度が。梓真の周りだけ、時間の流れが違うかのような錯覚に陥ることができるからだ。キョーミないよ、という言葉が聞きたいがためだけにこの話題を振ったというところももしかしたら心のどこかではあったのかもしれない。この話はもう梓真の前ではすることはないだろう、と、海はスプーンを手に取り量の多さだけが取り柄の学食のカレーを一口食べる。
すると。
「……ッ」
ぞ、とするほどの寒気を感じた。
視線だ。
寒気を感じるほどの視線が、海に注がれていた。彼はその方向を見る。
――そこには、南がいた。
絶対零度の凍てつく眼差しで、じぃ、と海を見つめていた。
「………」
もしかして、彼の噂話をしているところ聞かれてしまったのだろうか。いやまさか。距離は十分に離れている上、ピークを過ぎたとはいえほどほどに食堂は騒がしい。
しばらく目を合わせたあと(実際は1秒も合っていないが海にはとても長い時間を感じた)、つい、と南は視線を外す。
「………なんだ、あれ」
海は全身から冷や汗が出ているのが分かった。
「なに?なんかした?」
「………いや、なんにも……なぁ、南って名前、似合わないと思わないか?」
「へ?」
「あんな、冷たくてクールって感じの美青年に、南って……イメージが真逆っつうか……」
「……そうかなぁ」
梓真が、心なしか、弾んだ声で答える。
「南の名字、『氷月』っていうんだって。十二月っていう意味らしい。本人に、ぴったりじゃない?」
【十二月の浅瀬】
END