はじめまして
僕は最近仕事を辞めました。と言っても、正確にはまだ辞められたわけではなくて、色々あった末に―後に詳しく話すけど―退職届を郵送したっていう段階。今この時だって、僕が日本の社会の中でどんな地位を得ることになるのか、ということにビクビク怯えながら時間が過ぎ去るのを待っているのです。まあ、自業自得なんだけどもね。
こんな書き始めをされたら、皆さんは”僕”がどういった経緯で仕事を辞めることになったのか、そもそもどういった仕事をしていたのか、そしてそんな状況に陥った”僕”という人間がどういう人間なのか気になると思います。というか気になって下さい。
でもぶっちゃけてしまうと自分のことをどう人に伝えていいのかわからない、というのが僕の本音です。そりゃ進学や就職の際には面接で自分のことをアピールしなくてはならないですし、自己PR書みたいなものも書かなくてはなりませんでした。でも”僕”っていう人間はそういうところでアピールできる強みみたいなものを持っていない人間でした。多分僕は「他者に自分を説明する際にこれといった特徴を挙げられない人間」なのです。こういう言い方をすると皆さんの気分を害してしまうかもしれませんが、僕のような方って多いと思います。実際に特徴や長所がないわけではないのだけれど、いざ人にそれを伝えるとなると、伝えるようなことでもないような、そもそも本人さえもその特徴や長所に気付いていない、みたいな場合も多いと思うんです。
高校進学の際の自己PR書を前にして途方に暮れていたのをよく覚えています。さっさと帰りたい、というかこんなところにいたくない、と思っているのに自分の中にアピールできる部分がないから書けない。だからここから離れられない。当時の先生方も僕みたいな人間の対処には困っていたんでしょうね。僕も困っていました。僕っていう人間に対して。
色々とまわりくどい言い方をしてしまいましたが、要するに僕は”僕”を説明することが苦手なのです。それも順序立ててとか、短くスピーチで、なんて無理です。
でも、実際に自分のことを全て説明しろ、だなんて言われても困りますよね。なにから話せばいいかわからないし、なにを話していいかわからないし。それが当たり前だと思います。僕の場合、この世に生を受けてから今に至るまでが一貫しているから、関連しているから、余計に説明するのが難しいんですね。だって今を語るには僕の二十年を振り返らなければならないと思うから。
さて、これから僕が話すのは”僕”の記憶になります。今を語る上で人生を振り返るしかないのなら、もういっそ全部振り返ってしまいましょう。言っておきますが面白い話はないと思います。ただ少しだけ他の人が経験しないような事を経験している程度だと思います。
そして記憶は幼少の頃からお話ししていきたいと思います。記憶に曖昧な部分があったり、こうだったんじゃないか、というような補完の仕方をするかもしれません。その点は暖かい心で目を瞑っていただければ幸いです。
あ、一つ大事なことを言い忘れていました。僕が今に至る理由。”僕”っていう人間を成す根幹。そんなものが僕の中にはあるのです。それについてもお話ししておきますね。