第二回 ピコパギラジオ
「みんな~。今日は秋の四週目、三日目。時刻は午後一時、毎度恒例のピコパギラジオの時間だよ~!
最近動物を飼うようになって、ヘイヴンも賑やかになって来たね。動物の鳴き声がうるさいのと、臭いがちょっときついのがあれだけどさ、今リリィが防臭防音対策してるから、期待して待っててね。
それとさぁプロテアお姉ちゃん、ロータス糞馬鹿野郎、そしてサンにデージー。テラスの飼育場から戻ったら、ちゃんと泥落としてヘイヴンに入ってね。アイリスお姉ちゃんがカンカンだったよ。またうんち踏んじゃって、ダレダー! ヤロー喧嘩ウッテンノカーってさぁ。お姉ちゃんたちは平気かも知れないけど、正直駄目な人もいるんだからお願いね。
それはそうと、最近ご飯が豪華になってきたねぇ! 卵のスープに、おっきなお肉、たくさんの種類のサラダ! 毎日毎日お食事が楽しみ! ……になったのはいいんだけどぉ、そのせいで体調を崩してる人が多いみたい。うんちが固くなったり、逆に下痢しちゃったり、身体の力が出ない人がいるみたい。
アイリスお姉ちゃんによれば、スキキライで栄養が偏ったり、食べ過ぎでお腹が滅茶苦茶になっちゃうらしいよ。だから好きなものだけをピオニーに注文するんじゃなくて、バランスよく注文を取らなきゃダメだってさ。これだけ言っても駄目なら、ご飯を注文するやり方から、献立を決めちゃうやりかたに変更するってさ。毎日がピオニーとサクラお姉ちゃんと、アイリスお姉ちゃんが決めた、固定メニューになっちゃうんだよ! これってどういうことだか分かる!? 好きなもの食べられなくなるんだよ! それ以上にあのアクマのいた時代に戻っちゃうんだよ!? そんなの嫌でしょ!? だからみんな自分のリョウシンとリョウシキに従って、バランスの良い食事をとってね!
それとローズお姉ちゃんね。お願いだからお肉食べてね。ここにきて魚が獲れなくなってからさ、サラダしか食べてないでしょ……? アクマの持ってきたレーションもなくなっちゃったしさァ……流石にまずいと思うんだぁ……。だからね、ちょっとだけでもいいから、ね? お肉食べてね?
う~ん今日のニュースはこれぐらいかな? じゃあ預かってる連絡、いっくよ~!
まずはサクラお姉ちゃんから。
『請求から随分と待たされていた部品が、ようやく届きました。かれこれ一月は待ったでしょうか? やっとのことで届きました。ちなみにパーツを用意したのはアジリアです。アジリアです。ええ。アジリアです。そこでやっとのことで、私たちはバイオプラントの修理に取り掛かる事ができます。つきまして、本日の午後3時より、修理を始めます。ですのでリリィ、サンは、予定時間の10分前に、整備用具を揃えてバイオプラント前に集合して下さい。もう一度繰り返します。パーツを用意したのはアジリアです』
そっちを繰り返しちゃうんだ……あの……一応私からも繰り返すけどね、今日の三時から修理だって。忘れないでね。私もうこれ関係の放送したくないから……。
次はピオニーね。
『みなさぁん。新しいメニューを作ろうと思いまぁす。それで味見してくれる人ぉ、探してまぁす。サクラとアジリアの許可がありますからぁ、怒られる心配はありませぇん! 私の開発したぁ、新しいメニューが食べれますよぉ! えーと募集の前に何か書類にサインを貰えってサクラが言ってたのでぇ、サインさんして下さいねぇ……え~と……何なに……本件は食い合わせの実験を兼ねております。以前あった悪い食い合わせ、並びに過剰摂取による下痢、発熱、嘔吐の再発危険があるので、上限を2名までとします。なお出されたものは絶対完食する事、そして身体に如何なる異常が起ろうとも欠勤は認めません。それでもいいと言う大和撫子魂の持ち主はどうぞ。ですってぇ~。ちょっと何言ってるか分かりませんねぇ。サクラ仕事のし過ぎで疲れているんですよぉ~。ちょっとは休んでくださいねぇ~……あっ! そうだ! サクラの席空けときますねぇ! 決まりですゥ~! サクラは参加決定ですゥ~! と言う訳で明日の朝、食堂に来てくださいねぇ~』
お……お姉ちゃん……逃げて……。何かダメそうな臭いがするから……。てゆーかピオニーはそろそろ監視つけないとまずいと思うんだよね。マシラを料理しようとしたり、砕いた虫をスパイスにしたりしてたんだよ……美味しい食べ物を作ってくれるのはいいんだけどね、目の前にある物を、なんでも食べれるか食べれないかで考えるのやめてたほうがいいよ。もしかしたら変なもの食ったから馬鹿になったんじゃないの? これ以上馬鹿になっても知らないよ。
次、アジリアお姉ちゃんから、サクラお姉ちゃんに伝言。
『バイオプラントのパーツを用意した。今日リリィに渡した。二度と私に話しかけるな』
う……うん……うん……お仕事お疲れさまだね……次行こうね……。
あれ? サクラお姉ちゃんからアジリアお姉ちゃんに伝言があるや……。
『バイオプラン――』
(途中で読むのをやめて、紙を破って放り投げる音がする)
はい次行こうか次、次は~、え~と……これで最後! ローズお姉ちゃんから!
『あのサ……煙草は外で吸ってくれるかしら……前も言ったわよね……匂いが付くから遠慮してって……ただでさえ動物できつくなってるのよ……動物のは我慢できるわ……生きているからね……仕方ないのよ……でもあなたたちが煙をばら撒くのは違うのよ……うんちを談話室でする? トイレでするわよね? 頼んだワヨ。本当に頼んだワヨ……』
こ……こわい……。
伝言用紙が……筆圧でべこべこになってる……。




