異形生命体紹介
異形生命体
ナガセが飛ばされた世界の、原住生物である。
異形生命体は今現在、生態系を破壊することなく活動している。これが生態系に上手く組みこまれているのか、それともまだ破壊の前段階なのかは判断できない。
総じて外観は、赤茶けた肌を持ち、人間に似たパーツを有している。ナガセはこれを根拠に異形生命体の正体が、正規の方法を経ずユートピアに生き残った人類――つまりは領土亡き国家だと推測している。
生命力が高く、肉体の欠損や内臓の露出程度では絶命せず、活動を続ける。それは複数の内臓を体内に有し、それで機能代替を行っているからである。また個体ごとに筋組織、血管、内臓の分布も異なり、弱点を突くことが難しい特性を持っている。
認知能力が高いのか、人間、機械、動物を区別して判断を下しているフシがある(サクラのカットラス事件時、脅威度の高いナガセを無視し、人間を狙った事から)。知覚は鋭く、確認できるだけで視覚と嗅覚が優れていると考えられる(視認に寄る対象の区別。アカシアの狙撃訓練時、嗅覚で硝煙をかぎ取った事から)。
知能はないと思われる。また同族を虐殺されても物怖じせず、逃走をしない事から、感情が欠落していると考えられる。
彼らが取る謎の行動として、獲物の股を引き裂くことがある。これは人間の女、野生の雄牛見境なく行われた行動であり、その目的を推し量る事は難しい。
マシラ
全高四メートル 体長3~4メートル
この世界で最も目にすることの多い異形生命体である。
ゴリラのように発達した上半身を持ち、半面貧弱でやせ細った下半身を持っている。移動にはその強靭な両腕を用い、下半身はもっぱら姿勢制御の振り子として使われている。
その膂力は凄まじく、人攻機の装甲を捻じ曲げ、叩き壊すほどである。高い耐久力も持ち合わせており、弾丸の様に突進してくるため、奇襲を受けると大変危険な存在である。
ジンチク
全高1メートル 体長1メートル
この世界で最も数の多い異形生命体である。
達磨のような身体に、不揃いな人間の手足を出鱈目に生やしている。身体の中央がぱっくりと裂け、そこが大きな口となっている。口にはいびつな形をした歯がまるでノコギリの刃のように並び、その周りには蜘蛛のように眼が散らばっている。その移動速度は驚くほど速く、そして静かである。
体内には替えの手足がいくつも備えられている。そして体表の手足が欠損すると、身体を裏返すことで新しく生やすことで再生させることができる。また体液が特殊な溶解液となっており、炭素に対して特効的な溶解効果を持っている。
ムカデ
全高2.5メートル 体長3~6メートル
人間の胴体をいくつもつなぎ合わせた身体を持ち、その節々から足のような突起をいくつも伸ばしている。突起は肋骨な様なもので、胴体をくねらせるようにして、突起で地面を穿つことで前進する。その頭部はジンチクによく似ている。
移動速度は遅く、特筆するような攻撃能力もない。だが負傷した異様生命体の身体に潜り込むことで、回復させる能力を持っている。治療をしているか、寄生する事で機能を代替していると考えられる。
ショウジョウ
全高7メートル 足幅2.5メートル
アメリカドームポリスで確認された、異形生命体。
二足歩行を行い、知性があるのか道具を使用した(道具を認知し、それを用いて外界に影響を及ぼそうとするのは、それが及ぼす効果を把握しているからである)。更にナガセらの武装をある程度理解し、遮蔽物に隠れたり、ジンチクを弾の様に投げたりしている。
頭部に巨大な単眼を持ち、その周囲には小さな眼をまばらに持っている。口は歯茎が剥きだしになっており、笑みのような形を崩すことはない。体型は人間の雄の物と総じて変わらない。そしてよく鍛えられた筋肉質なものである。
甲一号と性行為に似た活動をしており、そこが異形生命体の策源地となっていた。このことから異形生命体の雄で、甲一号目標と対を成す存在であることが考えられる。
ヤマンバ
全高3メートル 幅約6メートル
アメリカドームポリス内で発見された、異形生命体の母体。
ふやけたピザの様なだらしない胴体を、太い人間の足で支えると言うおぞましいフォルムをしている。この身体は脂肪でたるんでおり、脚は対角線上に4つ持っている。身体には潰れた眼窩と、汁を噴く割れ目がいくつもある。この割れ目は呼吸器官か、生殖器官かは判然としない。呼吸するように風を吹かせ、その度に糞尿らしきものと、肉片をこぼしている。身体の上にはぼさぼさの髪を、滅茶苦茶に生やしている。
ヤマンバは確認されている限り、ジンチクとムカデの母体である。絶命すると割れ目からジンチクが、体膜を破ってムカデが誕生する。この誕生した異形生命体は、母体のヤマンバとほぼ同じ体積を占めているので、ヤマンバが死ぬまで内臓として活動していたんではないかと考えられる。
甲一号目標
アメリカドームポリスに巣食う、巨大な異形生命体。
冬眠施設に位置しており、上階のバイオプラントから垂れ下がっている。
形状としては大根のそれとよく似ており、所々に縮れ毛が生え、その隙間に割れ目を持ち、汁を噴いている。他の異形生命体のように赤茶けた皮膚を持たず、病的な色白さをしている。そこに血管の青筋や、肉の黒筋を浮かばせており、見る者の嫌悪感を掻き立てる容姿をしている。
ナガセは甲一号目標と、ショウジョウが性行為に似た活動をするのを目撃しており、これが異形生命体の母体だと考えている。実際異形生命体を産み落としたヤマンバは、これがいた部屋より落ちて来たので、あながち的外れではないと考えられる。