登場人物紹介(途中経過)
☆永瀬恭一郎 27歳 O型
言わずと知れた主人公。
過去の汚染世界から、電磁障壁と強烈な電磁波に挟まれて、ユートピアに転移した。
汚染世界では『第666独立遊撃部隊』に所属。迫害され『スケイプ・ゴート』と呼ばれていた。大戦末期、遺伝子補正プログラムの輸送任務に従事する。しかし仲間が遺伝子補正プログラムを強奪して逃走したため、単独で奪還を開始。裏切り者と取引相手を抹殺した。ナガセはこの時、自らの子を身ごもっていたリーダー『アロウズ』を惨殺し、『レッド・ドラゴン』のマスコットネームで呼ばれるようになった。
ナガセはこの凶行をトラウマとして抱えている。彼は敵がもっと強ければ、リーダーに辿り着く前に殺され、虐殺を行えなかったと考えている。その歪んだ思考によって、全力の自分を殺せる相手を求めるようになってしまった。
ナガセは軍人として虐殺を肯定する一方で、人間として恥じており、レッド・ドラゴンと永瀬の二重人格の原因となっている。レッド・ドラゴンは軍事行動や破壊活動に長け、残虐な性格をしており、他人に憎しみを植え付けようとする。対して永瀬は人心掌握や奸計、謀略に秀で、温厚だが臆病な性格をし、自分の責任を他人に押し付ける傾向がある。
しかしながらこのユートピアで生きているのは、永瀬でもレッド・ドラゴンでもなく、『ナガセ』なのである。
本人もその事にようやく気付き、這う者としての一歩を踏み出している。
汚染世界において、遺伝子補正プログラム単独奪還の功績から、世界で12人しかいない英雄の一人である。
最高の名誉も彼を苦しめる要因の一つでしかなく、彼は英雄として残虐行為を人類から裁かれることはないのだ。
戦闘分野では、ほぼ全てを難なくこなす、キリングマシン。汚染世界を生き抜いた英雄の名は、伊達ではないということだろう。
容姿は中肉中背で、筋肉質。いつも仏頂面をしている。ザンバラの髪はロータスとの戦闘で一度短髪になったが、休暇の時を経てザンバラに戻っている。ザンバラ髪が好きなようだ。オシャレには一切気を使わず、ライフスキンを常時身に纏っている。
☆アジリア
ドームポリス外活動の監督者。
汚染世界での名前は『コニー・プレスコット』。階級は一級特佐(ユートピア計画用の階級。ユートピア計画の根幹をなす任務に従事する、重要人物がつくポジションである。権限は大佐より優越であり、准将と同程度の情報要求が可能である。これは他の作戦行動よりも、一級特佐が従事する作戦が絶対優先されるためで、一級特佐は必要であればその権限を以って現地の国連軍を招集可能だった)である。所属は遺伝子補正プログラム開発チームのため、武官でも文官でもなく、軍属である可能性が高い。そんな彼女が一級特佐という地位を与えられたということは、かなり重要な研究をしていたようである。
ナガセの上官である『アロウズ・キンバリー』と接触していたようだ。アジリアはアロウズを『リリス』と呼び、部下であるナガセの身元を引き受けようとした。他にも彼女はアロウズから、『例のブツ』を受け取ろうとしていた。恐らく遺伝子補正プログラムのことだろうが、それをどうするつもりだったかは不明。ただそれによって、より多くの命が助かるはずだった模様である。しかしその計画はレッド・ドラゴンにより頓挫し、彼女は失踪したことになっている。一応遺伝子補正プログラムの受領には成功したようで、ゼロ・ドームポリスの金庫には現物が存在し、ナガセの命を救った。
ユートピアでは、ドームポリス外での活動を任されており、狩猟や探索、防衛、武器や車両の運用を管理している。
柔軟な判断力と、冷静な決断を下せる力を持っているが、本人の実力と実績が追いついていないようで、女たちのウケは悪い。
彼女はこのユートピアで、ただひたすら平和に暮らしたいと願っている。これは彼女が自負している通り、全ての女が胸に抱いている理想である。平和に暮らしたいがために危険な内陸への進撃を続けるナガセに反発しているが、平和に暮らす為なら女たちの伴侶としてナガセを受け入れる覚悟は持っていた。これが彼女の柔軟な判断力と、冷静な決断の証左であろうか。しかしナガセは安全のためとはいえ、進むことを止めないため、彼に対する憎悪はますます募るばかりである。
戦闘分野では、全ての分野に適応できる。つまり酷く未熟なナガセといったところである。特筆するならば白兵がやや苦手で、人攻機の操縦に秀でている。そして刻々と変化する戦況に対応できるほど頭の回転が速く、決断を素早く下せるため、機動戦が得意である。アメリカドームポリスでの戦闘がまさにその好例である。
恐らくアメリカ人であり、風に靡くほどの、金の長髪を持っている。瞳の色は青。背丈はナガセよりも低く、サクラよりも少し高い。
ナガセのことが大嫌い。もしそれで済むなら殺してやりたいと思っている。ナガセが女たちを、兵士として変えていくのが許せないからである。
☆サクラ
ドームポリス内活動の監督者。
汚染世界での名前は『ユウ・キサラギ』。永瀬たちが駆る全装対応躯体『同田貫』の設計開発者である。当時の階級は不明だが、かなりの上級職に就いていたことは想像に難くない。
実は汚染世界で永瀬と会ったことがあり、ハワイで敵陣に孤立していたところを救出されている。その時ユウは姿を見せず、声も聞かせなかったため、永瀬は面識がない。しかしユウは永瀬の顔を知っていた様子である。ユウはゼロで冬眠する男性にあたる『特定の七人』に、永瀬を推挙していた。
ユートピアではドームポリス内の活動を任されており、治安維持や備品や資材の管理、人攻機の保守点検などをしている。ユートピアでも汚染世界での仕事をおぼろげながらに覚えているようで、人攻機のプログラムを組んだり、バイオプラントの配線を設計したりと何かと活躍している。
思慮深く、物事を論理的に解決しようとするため、効率を重視して女たちの配慮を無下にすることも多々ある。しかし彼女は、そんな自分を恥じるだけの優しさは持ち合わせているのだ。問題はナガセが絡むと、彼女は思慮深さも優しさもかなぐり捨てて、彼のために尽くすことしか考えなくなってしまうことである。
戦闘分野ではアジリアとほぼ同じ技量を持つ。だが彼女は戦況を変化させるというより、現状を維持させる方が得意であり、どちらかというと防御でその真価を発揮する。ゆえにナガセは彼女をドームポリス内の責任者にした。
日本人で、首に届く程度の黒いミドルヘアをしている。ナガセに気に入られようと一度金髪に染めたが、今は自分らしさを取り戻すために新しい髪に生え変わるのを待っている。瞳の色は黒。背丈はアジリアと同程度で、力も拮抗している。
ナガセのことが大好き。サクラ曰く「彼のためならどこまでも変われるし、何も惜しくない」とのこと。アジリアとは対照的である。
☆パンジー
ドームポリスの労働員。
汚染世界での過去は、未だに明らかになっていない。しかし歌は好きらしい。
咽喉に汚染空気を吸った跡があり、呂律が酷く悪い。センテンスで言葉を区切る話し方をするが、頑張れば文章を紡げる模様。陰気な性格で仲間からは距離を取り、全体を眺めることを徹底している。しかしマリアのように日和見主義な訳ではなく、自分の意見をしっかりと持ち、それに基づいてコミュニティで行動している。この態度は、言葉を用いたコミュニケーションが圧倒的に不利な彼女が、少しでも自己を実現するために編み出した手段ともいえるだろう。
戦闘分野では白兵が得意である。中でも爆発物の扱いに長ける。
白人で、茶髪のストレートヘアーを肩にかからない程度に切り揃え、目の前にも暗幕の様に垂らしている。その隙間から見える切れ目は怖いが、綺麗なエメラルドグリーンをしている。
ナガセのことを軽蔑している。共に過ごし、彼が女たちに不可欠な存在なのにもかかわらず、逃げているからである。そんな彼を弱いと切り捨て、自分たちだけで強く生きていこうと思っている。
☆パギ
ドームポリスのムードメーカー。
汚染世界での過去は、未だに明らかになっていない。
女たちの中で唯一の未成年。成長盛りで第二次性徴が始まった模様。天真爛漫で何事にも興味を持ち、非常に活発。純真なため、歯に衣を着せぬ物言いで、ナガセを罵倒している。
デバイスを用いて放送業務を行っていたが、休暇の際プロテアとローズの喧嘩に巻き込まれ破損。アジリアが新しいデバイスを申請するも、放送でナガセの罵倒を繰り返していたため、サクラは却下していた。しかし帰還したナガセより、新しいデバイスを支給される。それからパギは、懲りずに独断と偏見によって改変された放送業務を行っている。
ドームポリスの女達からの寵愛を受け、ほぼ全員と深い交友がある。中でもアジリアとローズになついている。他にもサクラ、プロテアをお姉ちゃんと呼び、尊敬し、慕っている。
戦闘分野では通信を担当している。ナガセの念押しもあってか、この時ばかりはパギも溢れんばかりの憎悪を押し殺している。
褐色肌のアジア系で、背中まで届く黒の長髪を持っている。髪型はその日その日の気分でころころ変わる。瞳の色は黒。
ナガセのことは大嫌いである。ピコを殺し、分身のぬいぐるみも壊し、サクラとローズをも壊したからである。パギにとってナガセは異形生命体と同じくらいの脅威なのである。
☆ピオニー
ドームポリスの調理係。
汚染世界での名前は『麗虎』。彼女の記憶から推測するに、どうやら永瀬より階級が高かったようである。ECOバイオプラントに隠された秘密を知ってしまい、薬によって自我を壊された。なお正気の彼女に寄れば、その秘密は人の情があれば到底考えつかないものらしい。
自我を壊された後遺症か、それとも自我が壊れたままなのか、非常にマイペースで常識はずれな思考をしている。女たちからはやや疎まれ気味で、あのアジリアですら会議から彼女を追い払った。しかしそんな冷たい対応も、ピオニーからしたら『はえ~』の一言で忘れ去られるほど些末なことなのである。 料理が大好きで、厨房は彼女が取り仕切っている。その腕前は確かで、パンの開発や腹持ちの良い食べ物の考案、そして新たな食材を発見している。しかしネジの外れた思考では倫理を鑑みないため、異形生命体の調理を画策したり、昆虫を平然と食卓に乗せたりと、暴走することもある。パギ曰く「生き物を食べれるか食べれないかで考えている」らしい。さらに彼女は食材を調理する前に、最後の愛情を注ぐためエプロンのポケットに入れるという困った癖がある。
戦闘はからっきしで、彼女だけ拳銃すら携帯していない。恐らく彼女が発射する初めての弾丸は、暴発によって自らを射抜くことになるだろう。
黄色人種で、腰を超えるほどの長髪を、腰本でゆるく束ねている。細面で切れ目をしており、全体的にほっそりとしている。常時笑顔を絶やさない。
ナガセのことは好き。理由は単純に彼が『仲間』だから。ただそれだけである。
☆サン
ドームポリスの労働員。
汚染世界での過去は、未だ明らかになっていない。しかし全ての人種からデータがとられた遺伝子補正プログラムを使用しても、青髪というイレギュラーが発生しているのは、明らかな異常である。青髪の人間なんて、存在しないのだから。
労働の中でも、もっぱら畜産や農産などの食料業務に従事している。釣り好きで、本来なら釣りでの食糧確保を重点に置きたいようだが、拠点が浜辺から内陸に移ってしまい、叶わぬ願いになってしまった。
釣りの方針は基本的に大物狙いで、じっくりと腰を据えて獲物を待つ。それは彼女の行動方針にも反映されており、じっと耐え忍んで大きな目標を達成しようとしている。
模擬戦で指導を受けて以来、サクラを支持するようになる。そして未熟な上に、何がしたいかいまいちわからないアジリアを、場を乱す存在として疎ましく思っている。彼女にとって、女たちだけでここに留まることより、仲間を探しに行くことが現実的なのだろう。もしくはアジリアと違って、『外の世界』に恐怖を抱いていないのかもしれない。
戦闘分野では銃を用いた中距離戦闘が得意である。そしてサクラの献身もあって、人攻機による戦闘もそつなくこなせる。
雪のように白い肌に、蒼色のセミロングの髪をもっている。瞳の色はブラウン。背はナガセの胸元ほどで、力仕事は苦手である。
ナガセのことは好きでも嫌いでもない。信頼もしていない。尊敬もしていない。しかし彼が打ち出す手段は合理的で、正しいと考えているので従っている。
☆リリィ
ちょっぴり頑固なドームポリスの整備担当。
汚染世界での過去は、いまだに明らかになっていない。
機械いじりが得意で、日頃女たちが使用する車両や人攻機などの整備を行っている。またちょっとした小物も持っていけば直してくれるので、修理屋的な立ち位置を確立している。本人も機械類が大好きで、配管工事をしたり、バイオプラント修復に一役かったりしている。車の運転は得意だが、オストリッチや人攻機の操縦はからっきし。まともに歩かせることすらできない。
性格は頑固で意地っ張り。一度決めた事は余程の事が無い限り覆さない。彼女はその頑固さを以って、自らを瀕死たらしめたロータスへの報復をやり遂げた。
戦闘分野では車両による運搬で活躍している。しかしそれ以外の分野は苦手なようである。
白人で赤い短髪をしており、汗で張り付く前髪をクリップで留めている。瞳の色はブルー。幼児体型であり、ドームポリスで背が一番小さい。ついにパギに背丈も胸の大きさも抜かれてしまった。どうするリリィ!?
割とクロウラーズの中で酷い目にあっており、二回死にかけている。大丈夫かリリィ!?
☆アイリス
ドームポリスの医療担当。
汚染世界での過去は、未だに明らかになっていない。
血や傷などに免疫が強い上に、向上心が強いためナガセに治療を一任されている。物事を科学的に分析する癖があり、理屈っぽいところはサクラに似ている。しかしややヒステリーと強迫性観念の気があり、一度取り乱すと収拾がつかなくなる。理屈に合わなかったり、馬鹿の相手をするとすぐにキレるようである。
運動音痴でやや頭でっかち。中でも車の運転技術は『殺人級』である。
医療従事者であるため命の重みを理解しており、それを弄ぶような行いは許せない。彼女はナガセが行った、ロータスへの拷問、そして仮処刑を許しておらず、彼に見切りをつけてアジリアに協力するようになる。
戦闘分野では通信の補佐と治療を担当している。戦闘は全くの不得手で、車の運転すらできない。
白人で茶髪のミドルヘアをヘアピンで整えている。背丈はサクラやアジリアと同程度だが、彼女たちとは比べ物にならないほど非力で、ほっそりとした身体をしている。やや童顔で、眼の下にはクマができていることが多い。
ナガセのことは嫌いである。ピコで命の大切さを説いた彼が、ロータスの命を弄んだからである。
☆ロータス
ドームポリスの労働員。
汚染世界では位の低い傭兵だったようで、リーダーもしくは雇い主に搾取されていた。ナガセとの戦闘中、薬物の混乱で彼のことをレッド・ドラゴンと呼び、交戦中の彼と思われる人物の記憶があることから、汚染世界のナガセを一方的に知っている様である。記憶によると、永瀬は何よりも怖い化け物だったようだ。しかし本人の中では、記憶の人物とナガセが繋がっていない。
ドームポリスでは家畜の面倒や農作業を手伝っている。反乱前と比べて、進んで労働に従事し、動物を虐めることも少なくなった。代わりに愚痴と罵倒は増えたようであるが。
性格は残忍で卑怯、そして傲慢。誰よりも何でもうまくこなせると思っている。そしてその自信の根拠は、『自分が強い』からである。実際戦闘の腕は確かで、オストリッチを用いた訓練機動を難なくこなす技量と、女たち全員を敵に回した反乱に成功する胆力と知恵がある。しかし戦う知恵は回っても、人を治める知恵は全くない。女たちからは反乱の件もあって疎まれ、蔑まされている。
戦闘分野では本人は全てを難なくこなせると豪語している。今の所確認できるのは、車の運転とオストリッチの機動、そしてバトルスキンウリエルの使用である。総合的に見るに歩兵戦が得意のように思える。
浅黒い肌をしており、顎辺りで切り揃えた黒いミドルヘアを、バンダナで抑えつけている。身体のあちこちにピアス痕があるが、彼女は新しいピアスをつけていない。外観からラテンアメリカ系だと推測される。背丈はナガセより低く、大体彼の顎位の高さである。
ナガセのことは苦手だが好きである。強さに価値基準を持つ彼女が、ナガセの凄まじさを身をもって知ったこと。そして怒らせさえしなければ守ってもらえること。そして守ることに何の見返りも求めないからである。彼女は意外と、ナガセの無償の愛に気付いているのかもしれない。
☆アカシア
ドームポリスの労働員。
汚染世界での過去は、未だに明らかになっていない。
もっぱら家畜の面倒を見て、テラスでの農作業を行っている。機械整備などは苦手のようだが、ナガセから支給されたマテリアルバスターを、定期的に整備している。
気弱な性格で、あまり自分の意見を口に出したりしない。色んな事を胸の内に溜め込み、自分で何とかしようと堪えるタイプである。しかしそんな自分に耐えられるほど我慢強く、気長にコツコツと努力しているので、いつか報われる日が来るのだろう。
気弱な彼女ではあるが、大切なものを守るためには豹変し、激情的な一面を見せる。ナガセを殺そうとしたアジリアやリリィに見せた敵意がそれである。言い換えれば彼女はそれほどの感情を、普段は抑え込んでいるのである。
戦闘分野では優秀なスナイパーで、猟銃や人攻機用のマテリアルバスター双方ともかなりの命中率を誇る。さらにクイックドロウの腕前もなかなかのもので、ナガセが死に瀕した時、リリィが構えた拳銃を抜き撃ちで弾き飛ばした。
褐色肌で、金髪をツインテールに結わえている。褐色肌で金髪の人種はオーストラリアにしかいないので、きっと彼女の出身もそこに近しいところなのだろう。中肉中背でリリィよりやや背が高い程度だ。童顔で、青色のどんぐりまなこをしている。
ナガセのことが大好き。夫婦になりたいと考えているようである。
☆デージー
ドームポリスの労働者。
汚染世界での過去は、いまだに明らかになっていない。
テラスでの農作業と、整備の手伝いをしている。ロータスの反乱時、理不尽な命令をほとんど整備に逃げていたそうなので、生き物の面倒を見るより機械を弄ることの方が得意なのだろう。
とにかくせっかちで、物事を早く終わらせることを考えている。自分の行動が正しかったかどうか考えるのは、全てが終わってからの場合がほとんどである。そのためによく確かめもせずに相手を非難したり、他人を省みず自分有利に状況を進めようとする癖がある。しかし他人にそれを指摘されると、自分が悪いと認めるだけの器量はあるのだ。もっとも口から出るのは、罵倒のような謝罪であるが。
戦闘分野では銃を用いた中距離戦闘が得意である。そしてサクラの献身もあって、人攻機による戦闘もそつなくこなせる。しかしそそっかしい彼女はサンと違い、ヘイヴン奪還作戦時に人攻機を一躯擱座させている。
褐色肌に灰色の短髪をしている。顔立ちは西洋人に近いが、彼女の人種も不明。やや赤みがかった瞳は、猫の目のようにつりあがっている。
ナガセのことは嫌い。暴力的で、破壊的で、威圧的で、怖いからである。
☆ローズ
ドームポリスの労働者。
汚染世界での過去は、いまだに明らかになっていない。
家畜の面倒と農作業に従事し、裁縫や料理の手伝いなども行っている。そして彼女の何より大事な仕事は、わんぱく盛りのパギの面倒を見ることである。裁縫道具を手にした彼女が、飛び跳ねるパギを見守る姿を、談話室でよく見ることができる。彼女は気高く、とても優しいので、パギの情操教育にいい影響を及ぼしているようである。今のところは。
血が苦手で暴力に強い嫌悪感を抱いており、比例するように慈愛に溢れて常に他人を気遣っている。しかし大切な人のためなら、嫌悪する戦いに身を投じることを躊躇わない、心の強さを持っている。
優しいということは、他人を気にかけるほど自分に余裕があるということである。ヘイヴン奪還後のローズが荒んでいるのは、自分に余裕がないからである。その理由は言わずもがな、ナガセの暴力に自らの優しさが負けたからである。
戦闘分野では、歩兵戦闘、人攻機の操縦、両方とも平均はこなせるようである。だが相手の命を奪うことに躊躇いがある。ナガセはこの事実を重く受け止め、彼女を戦闘に参加させていない。
白い肌に、癖っ気のある金の短髪をしている。しかしこの金髪は生え変わるが、ある長さ以上伸びる事は決してない。理由は不明。背丈はナガセより少し高く、モデルのようなスレンダーな身体つきをしている。訓練でそこそこ鍛えられ、肉付きは良くなっている。透き通るような蒼の瞳をしている。
ナガセのことは――これから分かることである。
☆プロテア
ドームポリスの現場責任者。
汚染世界での過去は、未だ明らかになっていない。
狩猟、畜産、農業、戦闘を器用にこなし、暇さえあれば進んで女たちを手伝っている。気風の良さと面倒見の良さ、そしてその姉御肌から女たちの信頼され、よくよく頼られている。
強い自分が多くの苦役を担わなければならないという考えをもっているため、出来事の現場には必ずと言っていいほどその姿がある。ちなみにその考えは、ナガセを見て学んだものである。昔のプロテアの献身には、『やってやる』という傲慢と、押しつけがましい偽善があった。しかしヘイヴン奪還を経て、『何とかしてやりたい』という謙虚さと、見守る母性を身に着けたようである。口数と行動も以前に比べて減り、代わりに静観と黙考が増えた様子。恐らく女たちの中で、一番成長を遂げたのは彼女であろう。
戦闘分野では、偵察、白兵、銃撃戦が大得意。人攻機の扱いにも長け、彼女だけダガァのエリート仕様である、ミスリルダガァに乗躯している。また小隊規模の人間をまとめるカリスマと、運用する判断力を持っている。
黒人で、黒の長髪をしている。髪の前髪はストレートで垂らし、頭頂から後ろ髪にかけてと、もみあげを編み込んでいる。ナガセよりも背が高く、彼の頭は丁度彼女の胸の位置にある。女たちの中で一番力が強く、ナガセにも見劣りしない筋肉質な身体をしている。ナガセいわく『セクシーすぎる』らしい。
ナガセのことは大好き。だが彼を好きな分だけ、疑念を抱いている。気持ちを受け取ってもらえないからである。
ナガセの心からトラウマが消えた時、真っ先に告白するのは恐らく彼女だろう。
☆マリア
ドームポリスの労働員。
汚染世界での過去は、未だ明らかになっていない。
農業と家畜の面倒を従事し、暇なときはなるべく仕事を押し付けられないようにぶらぶらしている。普段あちこちをうろつき、面白そうな話には聞き耳を立てているため、女たちの事情に詳しい。しかし自分の意見をいう事は少なく、基本的にその場の流れに身を任せているので、その知識が披露されることは全くない。俗にいう日和見主義者である。ナガセに従うのも彼が絶対的な支配者だからである。
軽薄な性格で軽口やおちゃらけた言動が目立つが、軽率ではない。場の雰囲気を重んじるし、それに合わせた行動をとっている。パギに継ぐムードメーカーともいえるだろう。
戦闘分野では歩兵戦闘と車両運転が得意である。
黒人で黒い短髪。髪の毛はたくさんのカラフルなクリップで留められ、飾られている。体格はしっかりとしており、背丈もナガセと肩を並べるほどである。くりっとした丸い目は、茶色の瞳が入っている。
ナガセのことはどうでもいい。怒らせなければ安全だし、いなければいなくても安全だからである。
☆アイアンワンド
ドームポリスを管理する人工知能。
汚染世界での過去は、未だ明らかになっていない。
ゼロ・ドームポリス内に搭載されていた管理用人工知能である。識別番号はAP-P 個別名称はIRON WAND。
エクソダスという計画書を持っており、それに沿ってクロウラーズを導く役割を、冬眠前のアジリアより任されていた。それによればアイアンワンドは、クロウラーズを監視し、その補佐的役割を学習し、夫となることを命令されていたようである。
しかし異形生命体の存在のためにエクソダスは頓挫、ドームポリスに現れたナガセに活路を見出し、以後下僕として従うようになる。
クロウラーズのことを心底大事に思っており、彼女たちの為にならないと思えば、命令に逆らうこともしばしば。しかしナガセには苦言を呈しながらも、絶対服従を貫いている。彼女は賢いので、ナガセがいなければクロウラーズが死に絶えること、そして逆らえばスクラップにされることを理解しているのだ。
当初は知性を持ちながらも、機械的受け答えに終始し、全体を監視することに専念していた。しかし一年目でナガセの補佐的役割を学習し、女としての個性を手に入れ、能動的に活動するようになる。
ナガセの補佐的役割を担うだけあって、その性格は彼の正反対である。冗談好きで、愛想がよく、御淑やか、それでいて性的にふしだらである。ナガセに激しく嫌われているが、それは信用できない上に、守るべき『命』を持たないこと、そして前述の性格が性に合わないからである。
アイアンワンドの外部活動用の身体である慰安用ガイノイドは、機能性よりも人間に近い感覚を受け与えすることを重視している。汚染世界においては、戦場の兵士に一時の娯楽を提供していた。中でもアイアンワンドが乗り移っているのは政府高官御用達の高級品で、当時国連の士気高揚歌を歌っていたアイドルを模したものである。
彼女がバトルスキン・ウリエルや、五月雨を仮初の身体に選ばなかったのは、儚き願いがその胸の内にあるからかもしれない。
なお彼女の登場は特別篇内で扱う予定だったが、リリィ篇が思ったよりも長引いたため延期。
必ず掲載するのでお許しください。




