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Crawler's  作者: 水川湖海
二年目 休暇
105/241

第三回 ピコパギラジオ

「みんな~。今日は冬の一週目。午後の一時。ピコパギラジオの時間だよ~。

 冬に入って、ヘイヴンも寒くなってきたね。今日の夕方から毛布を分配するから、忘れずに取りに来てね。あと電気ストーブは雪が降るまでお預け。それまでは太陽光熱でしのぐことになるから、各自厚着をするように。服についてはローズお姉ちゃんに聞いてね。

 さっそく朗報だよ! あのアクマが、帰ってくる予定日を過ぎても、まだ帰って来ません!

 わーい(拍手の音)。

 きっと死んじゃったに違いないよ。私たちがいないと何もできない無様なマシラのくせにさァ、ロータスみたいに調子にのって、誰かに喧嘩売って殺されちゃったんだ! ザマー見ろ! これからのびのびと生活できるね! 無理に戦うことも、理不尽に怒られることも、めちゃくちゃに働かされることはないんだ!

 一応さぁ、サクラお姉ちゃんが捜索隊の計画立ててるけどぉ、無駄だと思うよ。そろそろ雪も降ってくるし、どっかでのたれ死んでるでしょ。死体もマシラに食べられちゃって、残ってなからムダムダムダ!

 だからね。サクラお姉ちゃん、あいつを探すのなんて、やめといた方が良いよ。それより私と遊ぼうよ! サクラお姉ちゃんももう少し時間が経てば、自分がアクマに騙されたって分かるはずだから――わかった! わかったわかった! もう悪口言わないから放送を切るのは止めてごめんなさい!

(しばらくの沈黙)

 ふぅ~……あのアクマめ……サクラお姉ちゃんを狂わせて……絶対許さないんだから……。

 ニュースの続きね。ご飯のパンについてだけど、アンケートの結果、試作品6番のパンが一番高評価だったみたい。私もあれ好きだよ。お皿に使ってるパンより柔らかくて、スープがよくなじむの! やっぱ硬いと顎が疲れちゃうし、ちぎるのも大変だからね~。それでしばらく朝食のパンは試作品6番になるからね。やったね。

 それと最近、ドームポリス内で悪戯している人がいるでしょ。誰もいない部屋から物音がしたり、黒い影が閉鎖エリアでうろうろしているのを見たって報告が相次いでいるよ。あのくそバカヤローが決めた閉鎖エリアだけど、ロータスのくそったれがまた危ないもの手に入れたら大変なことになるでしょ。だからもうやめてね。それ、私のせいにされているんだから。言っとくけど私じゃないからね。本当だよアジリアお姉ちゃん。

 最後のニュース。牛とか豚、鶏のごはんだけど――飼い葉とか穀物っていうのかな、アレね。少なくなってきたから、近いうちに森に取りに行くよ。このままだと動物たちが冬を越せなくなっちゃうから。ついでにまきを集めることも決まってるから、プロテアお姉ちゃんが参加者を募集中。おい聞いてるかロータス。お前行けよバーカ。

 ニュースはこれぐらいかな。

 じゃあ連絡ね。

 サクラお姉ちゃん、アジリアお姉ちゃん、プロテアお姉ちゃんの三人から。今日の午後から海にお魚を取りに行くよ。前々から決めていた釣果隊だね。だからサン、デージー、ローズお姉ちゃん、パンジー、くそばかロータスは、一階倉庫に集合してね。

 あの……さ。ローズお姉ちゃん。最近痩せてきたよ? だから無理しないで休んだ方がいいよ。釣果隊が帰ってきたらね、お魚一杯食べようね。

 サクラお姉ちゃんから。ナガセ捜索隊の話だけど――これはもうそっちでやって! わかんないよ! 何でほっとけないかなぁ! もう知らない!

 最後の連絡――

(ドアのスライドする音)

 え? 誰? 今放送中だよ――ってローズお姉ちゃん!? 駄目だよ! 今オンエア中!

 どきなさいパギ。私はどうしても皆に言っておかなければならない事があるの。これ聞こえているのね。ドームポリス全体に流れているのね。

 ねぇちょっと聞いてる!? 煙草を吸っているあんたたちよ、アンタたち! 外で吸えって言ってるでしょうが! 何で談話室が煙草臭いのよ! 何で灰が落ちているのよ! 約束守られていないじゃない! 私の目の前で吸うなって言ってるんじゃないの! 外で吸えって言ってるのよ! わかんないのかウガーォ! いい! 臭いが付くし、子供の身体に悪いの! だから皆の集まるところで吸うなって言ってるのオワカリィ!? いい!? そっちがその気なら私にも考えがアルワヨ! あなたたちに配布する全部の服に、くっさい香辛料を練り込んでアゲルワ! あのゲボのような臭いのする葉っぱをね! いやでしょ! 私はしたくないはそんな人が嫌な気分になる事! だからあなたたちももっと考えて! 私は吸うなとは言ってないの! 吸うべきところで吸ってって言ってるの! なんべん繰り返したと思ってるのこの文句! いい加減にして!

(再びドアがスライドする音)

 なんだ? 騒がしいけどどうした?

 プロテアお姉ちゃん!? 今マズいからヤメテ!

(クスクスとプロテアの笑い声)

 何だお前、また煙草のことか。お前さぁ、肉食ってないからそんなに神経質になるんだぜ?まぁ少しぐらいは大目に見てやれ。外は寒くて、長居できないんんだから。まぁ、ここじゃなんだから、むこうで話を聞くよ。落ち着きな。

(シュッっと、ライターが付く音)

 何テメェ目の前で吸ってんのよぉぉぉ!

 おわぁ! アブねぇなお前! いきなり何――

(揉みあう音。物が崩れる騒音がする。パギの悲鳴が重なる)

 アッ! ちょっと待って! そこデバイスがあるの! 踏んじゃいや――

(破壊音。放送が途切れる)

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