第九話「新たな身体と王国の依頼」
ヘルハウンドとの戦いでも、弱さを痛感したぼくは、新しく体をつくることを決意する。
(すこし経験をつんだだけでは、やはり動きの遅さはカバーできないな)
「まず石以外の素材をつくらないと、アイテムやモンスター生成のように魔力を込めて......」
魔力を込め素材をイメージし生成した。 なんどもなんどもつくるうち、そこには半透明な丸いものができた。
「ふう、できた! けどなんだ? 柔らかいものをイメージしたけど」
それを動かしてみる。 プルプルとゼリーのように動く。
「なんかスライムのようだ。 これで体をつくるか......」
体をつくってみる。 できたがうまく動けない。
「あっ! だめだ! 軸がないからぐらぐらしてまともにたてない!」
(さすがに軸がないと、まともに動けないな。 軸を他の素材でつくろうかな、それをなかに...... いや、そんな複雑にまだつくれないだろうな)
「まあ違う素材をつくれることはわかった。 あとはなにを素材にするか...... 木や鉄だと重い、鎧を着込むことを考えると、軽いものを圧縮してつくった方がいいか...... 紙や布あたりか、密度をあげたら軸になるかな」
その時、ミミックさんが外から帰ってきた。
「いやぁ、まいったよ」
「どうしたんですか?」
「ああ、マスターを倒したことをしらせたら、城にこいといわれてね。 断るのに苦労したよ」
「まあ、あれでダンジョンからモンスターがでてこないですし、当然かもしれませんね」
「しかし、あまり目立つのはね...... もしモンスターだとばれたら大変なことになる。 それはそうと、素材はできたのかい?」
「......それが、他の素材はつくれるみたいですが、柔らかいものだと動けなくて」
そうスライム素材でゆらゆらと揺れながら話した。
「ふむ、重心が取れてないな。 それでは歩くことも無理だろう。 ではこれならばどうかな」
そういうと、もっていた鞄から白いひもをだした。
「ひもですか?」
「ああ、【ハードスパイダー】というクモのモンスターの糸を束ねたものだよ。 トラップ用に買ってきたんだけど、軽くて強度と伸縮性に優れている。 普通はロープにするものだが、これでつくってみてはどうだろう」
そういってひもを床においた。
「クモの糸か...... たしかに弾力と強度がある。 よし!」
糸を吸収し、魔力で再現を試みると、何十回も失敗したが、夜にはついにできた。
「おお! できた! かなり柔らかいし、軸も作れる!」
体が自在に動く。
「ふむ、かなりの柔軟性だね。 体はそれでいいだろう。 ただまだ戦闘技術はないから、それを鍛えないと」
「そうなんです...... これは」
「どうしたんだい?」
「ダンジョンに誰かが集団で入ってきました」
「まさか、つけられてたか......」
ぼくたちは上にいく。
そこには鎧を着こんだものたちがいた。
「一体、なにかな?」
ミミックさんがきくと、その鎧の男は兜をぬいだ。
「私は【サロマス王国】騎士団の騎士団長、【バーロンド】という。 そなたがマスターを倒したものか」
(サロマス...... この国の名前)
「ああ、まあ二人でだけどね」
そうミミックさんがいうと、バーロンドはこちらをみる。
「なるほど、あのヘルハウンドを倒したのは君か」
「それでなんのようかな? 私たちはこのダンジョンで鍛錬中なのだけど」
「そうだな。 実は貴公たちに頼みがあるのだ。 我ら騎士団と共に【ロードモンスター】を倒してもらいたい」
「なんだって?」
(......ロードモンスター、ミミックさんがいってた)
魔王が産み出したとされる巨大な魔力をもつ【ロードモンスター】は、ダンジョンを複製するマスターを生むと、前にミミックさんから聞かされてはいた。
「......それはいくらなんでもね」
「無理な話だとはわかってはいる...... しかし、隣国との対立もあり、我が国のロードモンスター討伐は急務なのだ」
そうバーロンドは引き下がらない。
(どうするダンジョンさん...... 帰りそうにないぞ)
ミミックさんは念話でぼくに話しかけた。
(そのロードモンスターとやらは倒せそうなんですか?)
(倒せたのは私がしる限りでも数体だよ。 しかも国が傾くほどの兵力を投入してやっとだった)
(そんなに...... ただ国に目をつけられると、やりづらくなりますね)
(ああ、しかたない)
(ただ、ぼくたちだけでいきましょう)
「わかった...... ただし条件がある」
「条件とは」
「私と彼でいく。 君たちは私たちが帰ってこない場合のみでてくれ」
「危険すぎる! 許可できない!」
「隣国との戦争があるかもしれないんだろう。 もし、全兵力がダンジョンにはいったとき、戦争になったらどうする?」
「う、うむ。 それはたしかに......」
「我々はしがない探索者、死しても悲しむものもいない。 それに大勢だと私の広範囲の魔法が使えない。 巻き込むからな」
「そうか...... わかった。 ならば入り口に待機しておく。 無理そうなら引き返してくれ」
「ああ、わかった」
こうしてぼくたちはロードモンスターのいるダンジョンへと向かうことになった。




