第五十二話 最終話「運命に抗う者、可能性の果てへ」
「ミミックさん......」
閃光が収まると、そこは球体状にえぐりとられたように、ぽっかりと大きな穴になっていた。
(この魔力!!)
魔力を探知すると、そこには透明な球体が露出している。
「魔核石か...... まさか!」
「そうだ...... 私だ」
頭のなかに声が聞こえる。 それはラファライアの声だった。
「お前は魔核石になっていたのか」
「......ああ、だがもう魔力がない。 リステンドの魔法に、全て奪われてしまった。 あれは魔力を奪い取る魔法だったのだろうな」
「管理者はどこにいる」
「あれだ......」
地面が動くと、その奥に黒い球体がある。
「あれが」
「あれは理そのもの、どうするつもりだ」
「会話ができるのか」
『こちらに......』
その時、静かな声が頭に響いた。
「話してなんとかなる存在ではないぞ」
「やるだけやる」
「もう私にはとめる術もない...... 好きにするがいい......」
そういうとラファライアの魔核石はただの石になった。
「おまえが管理者か」
『そうですね。 あなたたちがそう呼ぶものです』
とても静かで優しげな声が頭に響く。 それは心をつかむような声だった。
(悪意などは感じない......)
「この世界が終わるのは本当か」
『ええ、この世界は終わらせます』
「終わらせるというのはお前が決めるのか」
『はい、私はすべての世界を司るのもの。 ゆえに管理者と呼ばれます』
「なぜ、この世界は終わらなければならない」
『私はすべての世界の推定された今後を見ることができます。 あなたも見てみますか?』
その時、頭に膨大な映像が流れてきた。 それはこの世界がどのような分岐を辿るのかという映像だった。
「これは......」
それは亜人種族たちがこの世界を支配する、または人間たちが支配する未来。 そして亜人種族、人間共々支配下におかれ、さまざまな残虐な行為が行われている。
「これが未来に起こるのか......」
他の未来も、また他の未来も、分岐を辿り未来はどれも救いがない道ばかりだった。
『お分かりいただけたでしょうか。 この世界の未来は全て滅びへとつながる。 憎悪と怒りにみちた救いなき道...... ゆえにモンスターを産み出し憎しみの方向性を他に向けてもまた同じ...... いずれ人や亜人種族が他のものを強いたげる未来しかない』
その声からは静かで優しげだが感情は感じない。
『いずれ終わる世界は継続の意味がない』
「だから終わらせるのか」
『はい、人、亜人種族同士が争うよりはいいでしょう』
(この管理者はただ自らの役割を行動しているだけ。 プログラムのようなものか)
「七賢者はそれでお前に協力をしたのか?」
『はい、彼らは知識と記憶を次の世界に紡ぐために、私に協力しました。 魔力には記憶と知識が刻まれます』
(それで、七賢者は永遠といっていたのか......)
「では、ぼくはなんなんだ? 神や魔王のダンジョンとはなんなんだ?」
『先ほどいったように魔王のダンジョンは私が作り上げた。 人や亜人種族の対立を避けるためにつくった仮の敵対者。 神のダンジョンはこの世界の防衛本能といったところでしょう』
「......この世界の防衛本能」
『世界にも無意識はあります。 世界が滅びを感じて神のダンジョン、またはあなたを作ったのだと思います』
(そうか、滅びの危機を感じたこの世界がぼくをつくったのか)
「この世界を終わらせるのはやめてくれ」
『なぜです? あなたもご覧になったはず。 この世界は亜人種族と人間の争いで滅ぶのは決まっています。 あなたがたがいう運命です』
「まだ決まっていない...... そうだろう」
『膨大な分岐の末、全てが滅びへとつながっています。 この世界の存続は無意味です。 それを覆らせる方法があるというのですか?』
「管理者、お前はぼくがこの世界につくられたのではないか、といったな」
『はい、その可能性があります』
「それは、お前にも予期せぬことだったはず」
『ええ、世界が本能で起こしたこと』
「つまり可能性はある。 ぼくがこの世界に来たことは別の分岐があるってことだ」
『確かにあなたの行動は予想外でした。 ですが、その未来さえ滅びに向かっています。 やはり無駄です』
「いいや、無駄じゃない。 ぼくがこの世界にいること、これからこの世界に関与し続ければその可能性は無限に広がっていく」
『可能性だけはあります。 ただそれは終わりのない生。 理の外のこと、永劫の苦しみの始まりです』
「それでいい...... ぼくはこの世界を守りたい」
ぼくは絶望的な分岐をみてきた。 だがそのなかにはジェスカ、リガイア、ディガル、ユグナ、他のものたちがなんとか、争いを阻止しようと命を懸ける姿を見つけた。
(ぼくが出会ったものたちは諦めず運命に抗う姿をみた。 ぼくも諦めない!)
『......ですが、この世界の終わりは運命です』
「ああ、ぼくは、ぼくたちはその運命に抗い続ける」
『わかりました。 あなたたちが諦めるその時まで猶予を与えます』
そういうと黒い球体はその姿を消した。
「......そうだ。 ぼくはこの世界にいき続ける。 そして滅びを回避する」
ぼくはダンジョンから外にでようとする。
「そうだね。 私も手伝うよ」
「えっ!? ミミックさん!」
ぼくの体の中から声がする。
「どうやら、リスポーンしたようだね。 私もこの世界に望まれているようだ...... いや、私が望んだのか...... そして魔力の記憶により、再びこの世界に形をなしたようだね」
「よかった...... いや、ミミックさん。 このままだと永遠に生きることになりますよ」
「そうだね。 もしそれが苦痛になったなら、それはその時考えよう。 私たちは可能性があるのだろう。 そうでなけば管理者の決定に抗う意味はないだろう?」
「ですね...... 確かに全ての可能性はここにある」
「それで、またみんなの元にかえるかい?」
「いいえ、皆自立しようとしている...... ぼくが力を貸すのはあくまでも外から、この世界の終わることを阻止します」
「そうだね。 それがいい」
ーーぼくはダンジョンを各地につくり、そのまま生きていく。 この世界の可能性を信じてーー




