第五十一話「黒のダンジョン、師弟の決裂」
「ここが黒のダンジョン」
近くにはモンスターの死体が山のようにある。 全て血を抜かれたようにミイラ化していた。
「これは......」
「おそらく魔力を奪われたのだろうね」
その異様さにミミックさんも緊張しているようだ。 そのままダンジョンへとはいる。 黒い壁は魔力を吸収していた。
(禍々しい魔力だ...... だが他のところとはちがう)
「ミミックさん大丈夫ですか」
「ああ、確かに魔力の吸収はすさまじいようだね。 ただ魔力でフィールドをはっているからしばらくは平気だろう」
(ミミックさんは生前並みに魔力が回復したといっていた。 ぼくも各地のダンジョンをつくって、吸収してきたことで、魔力がかなり増えている)
なにもいない黒い壁のダンジョンを闇に落ちるようにすすむ。
「ここは......」
入り口からすぐのところに大きな部屋があり、中央には若い男がいて、こちらをみている。
「まさか、我らの邪魔をしているのがリステンドとはな」
「あなたはラファライアさま......」
ミミックさんが一瞬、たじろぐようにいった。
「いや、やはりというべきか...... あのときも君は我らの忠告もきかず、神園の最下層を目指した」
「......そうですね。 私も若かった。 ですがその判断は間違っていなかった。 あなたたちの言うことを聞いていたら、あの時殺されずとも、この世界を終わらせていたのでしょうから」
「そうだな。 かもしれん...... しかし運命には誰も抗えん。 この世界は終わる」
「滅ぶならあなた方はなぜ管理者に手を貸すのです」
「我らはかつて管理者と対峙しそしてその力をみた...... そして次の世界に託すために協力を申し出たのだ」
ラファライアは右腕で剣を抜いた。 その剣は黒い炎を纏う。
「フリージングミスト!!」
ミミックさんが周囲を凍結する冷気を放つ。 しかし黒い炎に冷気は焼き払われた。
「くっ......」
「まさかそんな魔法まで使えるようになっていたとは...... 我が弟子ながら恐ろしいな」
ラファライアは剣を持たない左腕から黒い炎を放つ。
「させない!」
ぼくはミミックさんの前にでて左腕を出した。
「それは暗黒の炎...... 消えない炎だ。 小手で防げるものではない」
「どうかな!」
小手から刃がでると、黒い炎を跳ね返した。
「なっ...... 跳ね返すだと......」
黒い炎はラファライアに当たり燃え盛る。
(これはグルコフにつけてもらった鏡剣! 魔法を跳ね返す)
黒い炎はその場で炎にのまれていった。
「倒したか......」
「いや、そんな簡単に倒せる人ではないよ」
「そのとおり......」
後ろから声がすると、そこにはラファライアがいた。
「......かつて束縛をするものが何者であっても、それが理不尽に従うなといっていたあなたが、管理者とやらがこの世界を終わらせることに、抵抗せず従うのですか」
ミミックさんが語気を強めた。
「......そうだな。 確かにそういった。 しかし世の中には無理なこともある。 人は空を飛べぬし、魚は陸を走れぬ。 道理とはそういうものだ」
黒い炎を片手で何発も放ち、ラファライアは黒い炎剣をふるう。
ミミックさんとぼくが何度ラファライアを倒しても、再びその姿を現した。
「くっ...... これはグレンザと同じような実態のある分身か......」
「わからないね。 人形ではなさそうだ...... 魔力で調べられないかい」
魔力を感知するが周囲から魔力が流れているため、うまくつかめない。
「無理ですね。 このままだとこのダンジョンに魔力を全て奪われてしまう」
「ああ、仕方ない...... ここは私が生み出した魔法を最後に放つ。 あとは頼めるかい」
「ミミックさん、最後って!」
「......止めないでくれないか。 これは師である彼との決着でもある...... 私はかつての師の教えのほうが正しいと信じる。 今の彼はその道を違えた......」
ミミックさんは静かにそういった。
「わかりました...... あとは任せてください」
「ありがとう」
ぼくが前にでてラファライアと戦っていると、ミミックさんが詠唱を始めると、ダンジョン内が震える。
「なんだ...... その魔法は私でも知らないものか」
「ああ、私が作ったものです。 あなたが曲げた信念を、私が紡ぐ」
「ヴォルテックスフラッド」
ぼくがミミックさんの後ろに飛ぶと、ミミックさんの出した両手から輝く球体が放たれた。 それは魔力を飲み込みながら、渦を巻き前方へと大きくなっていく。
「これは......」
「それは私の魔力全てを込めた魔力球...... 魔力を飲み込みながら、収縮して一点にな......る」
そういってミミックさんはゆっくりと倒れた。
(ミミックさん......)
放たれ大きくなった球体は一瞬で小さくなり、その瞬間すさまじい閃光が起こった。




