第四十三話「共に生きる者たち、鉱石の山の誓い」
洞窟内は仄かに青白く光っていた。
「これはグレミンス鉱石なのか」
「おそらく、少量含まれているのでしょうね」
ジェスカはそういう。
奥にすすむ。 なぜかモンスターはでてこない。 だがそこらにモンスターの死体はころがっている。
「モンスターはいないのか...... でもモンスターの死体はそこらにあった。魔力が全体から放たれていて探知しづらいな」
「これだけ魔力を含む鉱石に囲まれていますからね」
ディガルが壁をみていった。 そこかしこにノミやハンマーが落ちていた。
(前の採掘者か)
更に奥にすすむと、大きな空洞がある。 そこにも無数のモンスターが転がっていた。
「なんだ...... この数は」
「どうしました?」
「魔力を感じる」
「グレミンスシザーズですか!」
「わからないが...... いやな感じじゃないな」
(どういうことだ)
「何者だ......」
そう重く静かな声が洞窟に響いた。
奥から青白い光を放ち、丘のような大きな蟹がでてきた。 そのカニは傷を負っているようで何本か脚もない。
「グレミンスシザーズです! 私が!」
「ジェスカまって!」
「えっ?」
(何かこのカニからは悪意や敵意の魔力を感じない......)
「貴様たち何のためにここにきた...... いや、グレミンス鉱石か」
あきれたようにグレミンスシザーズはため息をついた。
「お前は敵対者とは言わないんだな」
「......それは、今、産み出されたモンスターたちだろう。 この近くにも魔力を食いにやってくる......」
「今ということはお前はちがうのか?」
「我は遥か昔、人間が生まれるより前からここにいる...... お前たちが勝手にモンスターと呼んでいるにすぎん」
「それと今のものはどうちがう?」
「奴らは魔力を奪うためにつくられたのだろう。 我や鉱石を食らっておる」
「魔力を奪うためにつくられた? 魔王にか」
「わからぬ...... 途方もなく大いなる力だろう」
「どういうことでしょう」
ディガルとジェスカも戸惑っている。
(何かはわからないが。 モンスターとちがうならば......)
「すまないが、ここでグレミンス鉱石をとらせてほしい」
「我から奪おうとは思わぬのか。 お前からは特殊な力を感じる。 しかもそのハンマーはグレミンス鉱石だろう」
「そうだが、話ができるものをむやみに殺したくはない。 我々はこの鉱石がほしいだけだ」
「変わっているな...... 勝手に取っていけ。 我から奪ってもかまわぬ。 このモンスターどもにいずれは殺されよう」
「......他にうつる気はないか?」
「......どういうことだ」
「なっ! カイさま、まさか!」
「よいのですか!」
二人から声をあげる。
「グレミンスシザーズ、ぼくたちはあるダンジョンにいる。 お前もそこに来ないか」
「共にいきようと...... なぜだ?」
「対立しないなら、一緒に暮らしたほうがいいだろう。 協力しあえる」
「協力? モンスターの我と」
「モンスターというならぼくも人ではないよ。 人との共存を望まないなら、隔離した階層をつくるよ」
「いや、我は昔、人とも共に暮らしていた。 そのあと人間たちは我をモンスターと呼び嫌った......」
グレミンスシザーズは懐かしそうに語り、その穏やかな口調からは少し悲しみを感じる。
「それならモンスターではなく精霊としよう。 グレミンスシザーズは言いづらい。 名前は精霊【甲殻王】がいいか」
「甲殻王...... 名前を与えてくれるのか」
「ああ、甲殻王、ぼくらときてくれるか」
「......わかった。 我もともにいこう」
甲殻王はゆっくりとその巨体を動かした。
「こいつは驚いた......」
グルコフと、ドワーフたちは口をあけて呆然としている。 目の前にはグレミンス鉱石が山のようにつまれている。
「まさかグレミンスシザーズ...... いや甲殻王をつれて来るとは......」
「ああ、甲殻王は鉱石を生み出す力を持つ。 かまわないか?」
「もちろんだ。 我らにとって鉱物は神の恩恵、それから生まれた甲殻王は確かに精霊といっていい。 共にいきられるならば感謝しかない」
そうグルコフはいう、ドワーフたちも甲殻王を畏敬の眼差しでみている。
「それなら、ドワーフたちと共存してもらおうか」
「我はかまわぬ。 共に生きよう」
甲殻王のその言葉は静かだが、とても嬉しそうな響きがあった。




