第三十六話「三国の影と、銀翼の素体」
それから一月がたつ。 ミミックさんが帰ってきた。
「ミミックさん、なにかわかりましたか?」
「うん、世界各地で同様の魔王のダンジョンが発生していることがわかった。 各国が対応に苦慮しているようだね」
「しかも、モンスターもどんどん強くなってるみたいなんだ......」
ユグナも不安そうにいう。
「やはり、七賢者か誰かが魔王のダンジョンを増やしているのが理由でしょうね......」
「ただ、それをして何になるんでしょう?」
リガイアとジェスカはそういった。
「そこだ。 今世界で魔王のダンジョンが増えていない国がある。 ラクアーク王国、リマディ法王国、アレンゲスト帝国だ」
「つまり、その三つのうちに彼らが関わっているということですかな」
ディガルがミミックさんに聞いた。
「おそらく...... そこでダンジョンを破壊して回るうちに、国に潜入して調べたいと思うのだけど...... これはあくまでも私の個人的意見なので、拒否してもかまわない」
「いえ、このまま魔王のダンジョンが増え続ければ、いずれ人が対抗できなくなります。 カイさまたちはダンジョンをお願いします...... アレンゲスト帝国には取引がありますので私が部族を率いていきます」」
「ではリマディ法王国には俺が部族を率いていきます」
「私はラクアーク王国に向かいます」
ディガルにリガイア、ジェスカがそういった。
「みんな頼むよ。 無理せず、危険だと思ったらとにかく帰って」
みんながうなづいた。
「ここか......」
「うわぁ、でっかいのがいるぅ!」
ユグナがいうように、目の前には大きなモンスターたちが町を荒らしている。
魔王のダンジョンを破壊して回るべく、ぼくたちは【ゼノビア共和国】へときていた。
「ああ、しかもかなり強いね。 これを生んでいるのはおそらくロードモンスターだ。 この国が困っていたから、友好国のサロマスのライケス大臣から頼まれたんだよね」
そしてミミックさんがその話を持ってきた。
「それでどこにダンジョンが......」
「ああ、こっちだ」
そこには巨大な森がある。 そこにも多くのモンスターがうごめいていた。
「ここですか」
「そう、【リバルフォレスト】この樹海そのものがダンジョンとなったらしい」
「地下とか洞窟じゃないんだね」
ユグナは飛んで辺りのモンスターをみながらそういう。
「うむ、マスターやロードモンスターが支配する場所がダンジョンだからね」
「この中か......」
「でも、こんな一杯のモンスターだと疲れちゃうよ。 おいらの魔法で吹き飛ばす?」
「だめだよ。 ユグナくんのあの魔法だと炎で森が燃えて我々まで巻き込まれる」
「じゃあ、師匠、新しい魔法を教えてよ」
「帰ったらね。 しかし、確かにロードモンスターに会う前にこの数と戦うと、魔力がつきてしまいかねないな」
「大丈夫です。 そのためにこれを作りました」
ぼくは肩にいる銀色の鳥と足元の透明な犬をみせた。
「それが、新しい素体かい?」
「ええ、試作型なので、まだ二体ですが......」
「あっ! モンスターがくる!」
猪のようなモンスターがこちらに気付き突進してきた。
「ああ、さっそく動かしてみよう」
肩にいた銀の鳥が羽ばたくと、近づいてくる猪の横を飛ぶ。 すると猪から血飛沫が上がり猪は倒れた。
「すごい!!」
「ああ、剣で切ったみたいだね」
「ええ、手に入れた【ブルーバード】と【メタルリザード】の体から作り出した素体【シルバーウイング】です。 もう一体は【ゲルウルフ】」
もう一体の犬の体を動かしてみる。 その動きはすこしぎこちない。
「なんか歩きかたが変だけど、本当に自由に動かせるの? その今の体と、もうふたつなんて?」
ユグナが首をかしげる。
「う...... 正直、自由自在とはいかないな」
「まあ、元々一人の人間だったんだ。 急に増えた体を動かすのは難しいだろうね。 むしろダンジョンにいながら、体を動かしてるのさえ、かなりの難度なはずだ」
「ええ、この体を動かすのには慣れましたが、常識というか、慣習というか、そういうものが邪魔をしてるようです」
ぼくが頭をかくと、となりの犬も同じ様に頭をかいた。
「とりあえず、複数の体を動かすのには慣れるためにも、この二体を先行させます」
「わかった」
二体を前に出しながら、先へと進む。
「すごいよ! ここまでモンスターをあの一体で倒してきちゃった」
ユグナが驚いている。
「うむ、あの鳥かなりの強さだね」
「ええ、速さと強度と切れ味がありますから、広い空間で戦いやすいですね」
「モンスターじゃだめだったの?」
「モンスターはダンジョンからは出られないんだ。 あれは魔力でぼくが産み出すけど、動くのは自動で軽い指示しか出せないからね。 外に出られて自分の体として動かせる素体がこれだよ」
「へぇ! あっ! あそこになにか嫌な魔力を感じるよ!」
ユグナがいうほうに、確かに禍々しい魔力を感じた。




