第三十四話「定めを語る者、重力の檻と魔法の渦」
「ずいぶんモンスターの数が多いね」
ミミックさんが魔法を放ちながらそういった。 地下の洞窟に入ってしばらくモンスターとの戦いがつづく。
「ええ、しかも強い。 吹き飛ばさないと、一体、一体倒していくときりがない」
(こういう複数の敵と戦う方法も模索するか...... ぼくは魔法が使えないからな)
ミミックさんいわく、ぼくはもとのダンジョンとこの肉体の操作に集中力がとられているという。 それは二つの動作を同時にするようなことらしい。
溢れるように現れるモンスターを倒しながら、先へと進む。
「あっちの方、すごく嫌な感じがする......」
ユグナが鞄から頭を出してそういった。
「ユグナくんは魔力感知は高いようだね」
「ええ...... 確かに濃い魔力を感じます」
慎重に先へと進む。 その濃い魔力の近くにきてのぞくと、そこに人らしき姿があった。
「......人がいるよ」
「ああ、まさかこんなところに人か......」
「ですがミミックさん、このモンスターの中ですよ」
ミミックさんたちと顔を見合わせる。
「......我がもとに集え......」
その長い杖を持った人物は黒いローブをはおり、しきりに何かを唱えていた。 その周囲から黒いモヤのようなものが放たれている。
「あれは......」
「どうやら闇魔法のようだ、しかしなにをしようとしている? 少し様子を見よう」
ローブの人物の目の前に黒いうごめくものがある。 それは小型のモンスターだったが、黒いモヤがモンスターに吸い込まれると、小型のモンスターは巨大に変異した。
「あいつ! モンスターを変えてるよ!!」
ユグナが驚くように声をあげる。
「......マスターを産み出せ......」
「御意......」
しわがれた老人の声に、産み出されたとかげのようなモンスターがそう答えた。
「ああ、ただのモンスターじゃない。 どうやらあれはロードモンスターをつくってるのか......」
「ロードモンスターは魔王に産み出されるんじゃないんですか?」
「そういわれているが、みたものがいないからね」
「止めましょう」
「ああ、できるならあいつを捕らえ......」
ローブの人物がこちらを見ると、それは老人だった。 ミミックさんは言葉を止めた。
「......まさか、あの男...... いやそんなはずは......」
ミミックさんが動揺しているようにみえる。
「いる。 敵だ」
六本足の黒いとかげがそういうと、男は杖をかまえた。
「何者だ......」
「私だよ。 リルガミン......」
ミミックさんがでていくと、老人は目を見張る。
「ば、ばかな...... リステンド、なぜ貴様が......」
「それはこちらの台詞だ。 なぜあなたが生きている......」
(知り合い、そんなミミックさんは数百年前に死んだのに......)
「......いけ、ダークソウルリザード」
リルガミンという老人がそういうと、黒いとかげはこちらに進み出た。
「イグニストデストネーション」
ミミックさんの魔法はとかげを一瞬で焼き付くした。
「くっ...... この力、本物か...... いや」
「話してもらうよ」
リルガミンのまとう魔力がまし、黒いモヤが濃くなる。
(なんだ...... あれはまずい!)
「ミミックさん!!」
ぼくはとっさに持っている鞄とミミックさんを遠くに投げた。
「......エンドグラビティ」
「ぐはっ!!」
体が押し潰される。 動けないほど地面へと押し付けられた。
「あれは重力! くっ、イグニストデストネーション!」
ミミックさんの魔法は届かずその場でかききえた。
「お前が本物かはわからんが...... かつてほどの力はないようだな」
リルガミンは口元に笑みを浮かべる。
(ぐっ...... 動けないほどの圧力、さっきミミックさんが重力といっていた...... これが闇魔法か)
ペチャンコのままぼくは様子を伺う。
「くくくっ、このままこやつを潰し、お前も潰してくれよう」
「リルガミン、ロードモンスターを産み出してなにをしようとしている」
ミミックさんがそう聞いた。
「......定めだ。 この世界のな。 お前たちは抗うことなく滅べばよい」
(定め...... こいつも同じことを)
「もう話すこともない...... このまま広げて貴様もつぶれろ」
「ユグナくん! 魔法だ!」
ミミックさんがいうと鞄からユグナがでてきた。
「いたたっ! あの魔法をうつの!?」
「ああ、今すぐだ!」
「わかったよ! イグニストデストネーション!」
「イグニストデストネーション!!」
ユグナにあとから放たれたミミックさんの二つの魔法が絡み合い回転する。
「なっ...... エンドグラビティ」
リルガミンの重力が広がる。 二つの魔法がぶつかり渦のような衝撃を起こし消え去った。
「くっ、だがその魔法何度も使えまい...... さあ諦めて死がよい」
「それはどうかな」
ミミックさんは不敵に笑う。
(人を殺したくはないが......)
重力のなかなかためていた収縮をぼくは解放して、リルガミンに向かいとんだ。
「ぐはぁぁあ!!!」
ぼくがぶつかると、リルガミンは壁へとめり込む。 そしてズルズルと地面に崩れ落ちていった。




