第三十二話「敵対の理由なき声、光の魔法が響く時」
「ここだ」
日も暮れた夜、バーロンドが案内してくれたそこは砦が築かれていた。 かがり火のたかれた壁にのぼると向こうには多くのモンスターのたちがうごめく。 そこに兵士たちが弓や魔法で迎撃し、たまに騎馬で突撃して数を減らしていた。
「多いな......」
「かなり侵攻されているね」
「ああ、いくつかの町が落ちた。 我々も兵力を増強しているが、次々現れるモンスターに砦を築き防ぐのがやっとだ」
不安そうにバーロンドはいった。
「あの森の中にダンジョンを見たというものがいる。 そこからモンスターが涌き出てきたようだ。 ただ本当にあそこには入るつもりか、ここで防衛した方がいいんじゃないか」
「それだと財政的にも持たないだろう? このままだとじり貧になり、いずれ兵力も武器も尽きて砦を破られる」
ミミックさんがいうとバーロンドはモンスターをみながらうなづいた。
「......確かに、装備も破損や消耗が多い、魔法使いたちの魔力の回復の薬も高額だ。 税の徴収も限界か...... あなた方に頼むしかあるまい。 ただ私もついていこう」
「いや、もしあなたが倒れたら指揮できるものがいなくなる。 私たちが帰らない場合、兵力を投じてダンジョンを攻略してくれ」
バーロンドはミミックさんの言葉にすぐにはうなづかなかったが、少し考える。
「......しかし、いや、わかった。 確かに我らが死ぬと次がなくなるな...... 朝になったら我々も出陣する」
そういって納得してくれた。
夜の闇に乗じてぼくたちは門からでて、モンスターの間をすり抜けた。
「ここにいるのはロードモンスターでしょうか」
「おそらくね。 気を引き締めていこう」
(イビルエンシェントオクトパスといい、あの大亀といい、なにか嫌なものが胎動しているように感じる)
ぼくたちは森の中で、洞窟を見つけた。
「あれか」
「モンスターがでてきている。 間違いないね。 今度は凍らされないようにしないと」
「大丈夫! おいらがいるよ!」
鞄からひょっこりユグナが顔を出した。
「ついてきたのか!」
「んーん、ここで寝てたらいつの間にかここにきた」
あくびをして、ユグナがいった。
「まあユグナくんの才は本物だ。 頼りにしようじゃないか」
「まかせてよ!」
「仕方がないな」
ぼくたちは洞窟内部へとむかった。
「奥に進むにつれモンスターがいませんね......」
「ああ、他の部屋にはモンスターが生まれる袋があったけど、なにもいなくなった」
左右に別れた通路を魔力の濃いほうにすすむ。 どうやらアリの巣のような洞構造のようだ。
「ふぁ、あっ、真っ暗だ...... なんで転ばずに歩けるの」
歩いていると、眠っていたユグナが鞄の中から顔をだしていった。
「ぼくたちは魔力で周囲を感知しているから、暗闇は関係ないんだよ」
「ああ」
「そうなんだ。 おいらにはなんにも見えない。 あっ、明かりがある」
「魔力の濃度がこい...... あそこにいますね」
「ああ、気を付けよう」
慎重に奥に進むと、その部屋全体が青白く発光していた。
「なんだ、壁一つ一つの光に魔力を感じる......」
なにか空気が重く、胸がざらつく。
「ダンジョンさん」
ミミックさんにいわれてみると、そこには青く光るキノコが群生している。
「光るキノコだ! でもみたことないなぁ」
「貴様...... 何者だ。 人ではないな」
群生しているキノコから輪唱するように声がする。
「まさか、あのキノコが!」
「ああ、間違いないね」
「お前たちは敵対者という。 なぜ人と敵対する」
「......それが定め、我らの定め」
そういう声が反響して洞窟内に響く。
「理由をきいている!」
「理由などない...... 我らは人の敵...... 定め...... 定め...... 定め」
周囲からそう声が多重に響いた。
(人の敵...... 理由もないのに)
「ダンジョンさん!」
体に点在するように青い光がともる。
(これはまずい!!)
「ヤグナかばんに!」
ぼくはユグナを鞄に押し込め、後ろに放り投げた。
「ふぎゃ!」
すさまじい早さで青白い光が体をおおう。
(これは、キノコの胞子か!)
「くっ、魔法が使えない...... むぐっ」
ミミックさんが光に包まれた。
(魔法が使えない、魔力を奪っているのか! あの群生はモンスターに寄生したキノコ!! まずいぼくの魔力がなくなる。 くっ、体の中にはいられたのか!」
体を目一杯、収縮させ一気に解放する。
パァァァンン!!
青白い光が弾ける。
ミミックさんを抱えて脚を収縮すると後ろにとんだ。
「ユグナ!! あの魔法を使う頼む!!」
「えっ!? でもこの魔法は危ないって......」
「今はかまわない! ユグナしか頼れない!」
「わ、わかった! イグニストデストネーション!!」
鞄からでたユグナから白い球体が放たれた。 それはキノコの群生に当てると閃光と激しい衝撃波を放つ。
「がぁぁぁあ......」
そう反響しながら衝撃音にキノコの声はかき消されていった。




