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第二十六話「敵対の定めを越えて、マーマンたちの新たな海」

「助かったよ、ディガル」 


 ぼくたちはタコを引っ張り洞窟に戻り、糸から元の体に戻った。


「なんなんだ...... 人間じゃないのか」 


 ディガルは驚いている。


「ああ、まあ、その説明は後で、それよりこのイビルエンシェントオクトパスだ」


 ディガルの攻撃で、息も絶え絶えのタコをみる。


「お前たちは、なぜ人間たちを襲う。 食べるだけなら人以外でもいいだろう?」


「......はぁ、はぁ、それが...... 目的だから...... だ......」


「人を襲うことがか?」


「我らは...... この世界の敵対者で...... あり続ける...... それが定...... め」


 そういうとイビルエンシェントオクトパスは動かなくなった。



「どういうことだろうね?」


 ミミックさんは首をかしげた。


(世界の敵対者であることが定め...... 誰が決めた。 魔王か)


 理解できないが、言い知れぬ不安がぼくの心にせまった。


「よし! 目的は果たした。 さて帰ろう!」


「......待ちたまえ、ダンジョンさん。 それをどうするつもりだい?」


 タコを引きずる私にミミックさんは眉をひそめた。


「いえ、このタコを体の素体にしようと......」


「だめだよ。 せめて脚にしなさい」


「ええっ!? でもこれを持っていけばダンジョンにイビルエンシェントオクトパスが生まれますよ!」


「こんな、わけがわからないものを生んでどうするつもりだい...... こんなものを人のいる場所をとおり持ち歩いていたら、どう考えてもおかしいだろう。 全部は必要ありません。 一本にしなさい」


 姉のようにミミックさんは注意した。


「ええ......」


 ぼくは心底がっかりする。


(......モンスターの牧場つくりたかったな)


「ま、まあ、カイさま。 脚を持ち帰りましょう」


「うん......」


 リガイアが脚を一本切ってくれた。


「ああ、ディガル、これでマーマンも助かるかな」


 唖然としてやり取りをみていたディガルにきいた。


「あ、ああ、だが......」


 その表情は暗い。


「どうしたの? イビルエンシェントオクトパスを倒したから、あなたの種族は安泰じゃないの」


 そうジェスカが不思議そうにきく。


「いや、確かにここのモンスターはいなくなるかもしれん。 しかしそうなったら、人間たちは漁場に集まるだろう」


「そうか、漁師たちもそれで船を出せないっていってた」


「そうだね。 共存は無理なのかい?」


「かつてから、漁場を巡り争いがあった。 人間たちにとっては我らもモンスターと変わらぬ。 また軋轢がおこるだろう。 モンスターの死者数が多くなったため戦いにきたが、人間とも戦わねばならないかもしれない......」


 そういってこちらをみた。


(そうか、ほくが人間の側にたつかもと考えているのか。 確かにどうしよう...... 人間とマーマンが戦うなら、ぼくはどちらにたてばいいんだ......)


「ふむ、悩ましいね。 君が思う方を選ぶしかないんじゃないか?」


 そうぼくの心を見透かすように、ミミックさんはいった。


(人間とは敵対したくない。 ただ、人間を守るためにマーマンと戦うのもいやだな...... こうなったら)


 ミミックさん見ると静かにうなづいた。


「......ディガル、少し話がある」


「なんだ」


「他の場所で生活しないか」


「他の場所...... それはさっき話したように、海は難しいのだ」


「いや、海じゃない。 ダンジョンだ」


 ぼくは彼に事情を話した。 最初ディガルは理解が及ばなかったようだが、リガイアたちからも説明され、なんとか話を聞いてくれた。



「な、なんだ...... ここは」


 ディガルたちマーマンはとても驚いている。 そこには浜辺と海があったからだ。 ぼくはダンジョンの五十一階に深い海を作り出していた。 


「こんなダンジョンに海があるなんて......」


「ああ、信じられない」


「わああい!」


 大人たちは驚き、子供たちがはしゃいでいる。


「とりあえず、漁師から生きている貝や魚を買って放ってはいるけど、まだ少ない。 海草なんかも仕入れるから、少し我慢してくれ」


「かまわない...... いやかまいません。 我らマーマン一族、ダンジョンのカイさまに忠誠を尽くします!」


 そうマーマンたちは皆で平伏して礼をいった。


「いや、そんなかしこまらなくてもいいよ」 


「まあ、受けておきなよ」


「そうですね。 我ら獣人族もカイさまには感謝しております」


「そう...... まあ、マーマンたちが気に入ってくれたなら、いいか」


 こうやってマーマンたちは、ぼくのダンジョンで生活することになった。

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