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第二十五話「糸と炎と刃が交差する、海底の死闘」

 強い魔力が奥から感じ取れた。 それはとても重苦しく嫌な感じだ。


(今までのものたちとは違う。 異様だな。 これはマスターではなくロードモンスターか......)


「みんないるよ。 気をつけて......」


 奥へとさらに進むと、そこは巨大な空洞で奥には地底湖のように水が満ちている。


(あれが海と繋がっているのか......)


「来るぞ!」


 ディガルの緊張した声が聞こえると、ブクブクと海面が沸き立ちゆっくりと其の巨大な姿が現れた。 それはタコだった。 その体表は青く揺らめくようにみえ、その巨大な目がこちらを見た。



「獣人...... そしてマーマン、人間、いや違うな...... なんだ貴様らは」


 イビルエンシェントオクトパスはどこからかそう言葉を発した。


「イビルエンシェントオクトパスか。 少し話がある」


「話......」


「会話ができるなら対話しないか?」


「貴様はエサと会話するのか......」


(そういう認識か。 それとも脅しか)


「わざわざ戦う必要はないだろう。 無駄な争いを避けるために......」


 そう会話途中にぼくは衝撃を受け視界が歪む。 そして地面へと落ちた。


「うっ......」


 イビルエンシェントオクトパスの巨大な腕で叩かれ、壁にぶつかったようだ。


「この!!」


「まって、リガイア、大丈夫だ」


 ぼくは立ち上がり、前にでた。


「話をするつもりはないか......」


「下らぬ...... 我は魔力を食らうために産み出された...... 貴様らはただのエサ」


「魔王はなぜ人間と対立する......」


「そんなものは知らぬ...... さっさとつぶれろ」


 巨大な腕が振り下ろされた。 ぼくはそれを腕で受け止める。 金属がつぶれる音がする。 小手がひしゃげたようだ。


(なるほど...... 確かにかなりの威力だ...... だが糸の体を切り裂ける威力はない)


「なぜ、つぶれぬ...... 貴様は人間ではないのか......」


「ああ、そうだ」


 つぶれた右腕の小手が地面に落ちる。 ぼくは右腕の糸をほどいてタコの体に放った。


「ぬうっ......」


 だがそのヌメッとした表皮はつかめない。


「どうやら、とらえるのは無理みたいだね。 もういいかいダンジョンさん」 


「話をしたかったが、しかたないですね...... ミミックさん、お願いします」


「ああ、フレアースフィア」


 ミミックさんは炎の火球を放つ。 それは轟音を放ちながら、タコの体を灼熱の炎で包みこんだ。


「ぐぅ...... こんなもの...... アクアピラー」


 海面から水柱がたち炎を消した。


「驚いた魔法をつかうんだね」


「なんなんだあんたたちは...... あの打撃を片手でうけ、それに今の魔法の威力もあり得ないほどだった」


 ディガルが驚いて声をだした。


「ミミックさん、リガイア、ジェスカ、ディガルと離れていて」


「はいよ」


「はい!」


「いくぞ! ディガルくん!」


「まさか、あの鎧の男、一人で戦うつもりか!」


「いいから」


 三人はディガルをつれて距離をとる。



「さて」


 イビルエンシェントオクトパスは海からはいあがり、その無数の腕を揺らしている。


(糸で捕らえるのは無理...... ということは打撃だな)


 何本もの腕がぼくに振り下ろされ、それを糸の腕で受けるが、横に振った腕で壁に叩きつけられた。


「ぐっ...... いたいな」


(痛みで気絶したらまずいか。 早く決着をつけた方がいいな)


 レガースをぬぎ、地面に限界まで糸を圧縮、タコが腕を振り上げた瞬間とんだ。


 バチンッ!!! 


 ぼくが飛びその頭にぶつかると、タコはよろめき声をあげた。


「ぐおっ......」


 再びとぶとタコは体勢を建て直し腕を叩きつけてきた。 ぼくは地面を跳ねた。


(ぐっ...... けっこうな痛みだ。 ただ向こうもきいている。 このまま仕留められるが......)


「申し訳ないが、最後にもう一度、対話はできないか」


「なめるな...... エサが!」


 タコはその腕をむやみやたらに振り下ろした。 地面がえぐれ土煙が舞う。


(精度と威力を落として早さで飛ばせない気だな。 頭を使わない訳じゃない。 なら話し合いたかった...... でも人をエサと呼ぶなら、生物として生き残る選択をするしかない)


 ぼくは覚悟をきめ、鎧を捨てて全身の糸を圧縮、最大まで縮むとはねとんだ。


 ドオオオオオンッ!!


 当たった瞬間、タコの巨体が浮き、そのまま地面におちた。


「ぐあっ......」 


 動かなくなったタコに近づく。


「死んだか......」


 そのとき、タコは突然腕でぼくをつかむと海面に飛びこんだ。 すごい水圧が襲う。


(ぐっ、しまった...... このまま窒息死させたいのか。 だがぼくは死なない、いやまずい! 魔力の届かないところまでいかれるとこの体は使えない! みんなが危なくなる!)


 体の糸をばらして八方の周囲に放った、洞窟の壁に糸が引っ掛かる。


(なんとか動きはとめた。 とはいえ、糸にしてしまったから体が動かせない。 タコがこのまま離さないとどうしようもない...... ミミックさんが何とかしてくれるのを待つしかないのか......)


 そのとき、タコのつかむ腕が緩む。 見るとディガルが水中を高速で移動してタコを切りつけている。


(そうかマーマン、水中なら彼の独壇場だ。 よし!)


 体をほとんど糸にして弱っているタコを絡めとる。 


「すまない、このままさっきのところまで引っ張ってくれる?」


 ディガルはうなづくと糸を引っ張り、元の場所に戻ってくれた。



 

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