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第二十一話「牙の深層、交わらぬ正義」

「ここは、それほど複雑なつくりではありません。 ただ大きな部屋が横にたくさんアリの巣のようになっているダンジョンです」


 そうリガイアが先を歩きながら説明してくれた。


「ならば、下に行けば彼らに出くわすかな」


「そうだね。 はやく行こう」


 ぼくたちはダンジョンを8階まで進む。 いくつかの部屋には倒されたであろう人並みの巨大なアリの姿があった。


「大きいな」


「これは今までの【ポーンアント】と違い【ナイトアント】だ。 しかし入り口にだれもいなかったことを考えると、まだ倒されてはいないね」


「それなりの力をもっているということですね...... このナイトアントは私たちでも数人がかりだ」


 リガイアが真剣な顔をしている。


「精鋭というわけか。 はやく追い付こう」


「本当に我らだけで戦えますか...... いえ、疑っているわけではないですが」


 リガイアが不安そうにつぶやく。


「まあ、ミミックさんとリガイアは殺されると困るけど、ぼくは倒されても痛みだけですむ。 ぼくを盾にして戦えば何とかなると思うよ」


「そうですか......」


 まだ少し不安そうだが、リガイアはなんとか納得したようだ。


「追い付いたようだね」


 ミミックさんがいうほうから人の騒ぐ声がつたわる。


「どうやらモンスターと交戦しているみたいだ」


 近づくと、大勢の兵士とみられるものたちが、大きなアリたちと戦っていた。


「くっ! かこめ!」


「その間に魔法をたたきこめ!」


「うおおおお!!」


「ふむ、全員じゃなさそうだね。 ただここで私たちが倒してしまうと、彼らは死んでしまうから、吹き飛ばすのは無理だね」


 ミミックさんは戦いをみながらそういった。


「そうですね。 じゃあミミックさんモンスターに助力お願いします」


「ああ、わかった」


 ミミックさんはアリたちに魔法をかけた。


「な、なんだ! 動きが急に速くなった!」


「しかも力も増している!」


「ダメだ! このままだと...... うわぁ!」


 アリの猛攻で兵士たちは次々と倒され、あっという間に姿を消した。


「ふむ、なんとか送り返したね」


「ええ、さすがです、ミミックさん」


「いや、そんなことより! こっちにきてますよ!」


 リガイアが焦っている。 二体のアリたちはこちらにターゲットをかえてむかってくる。


「さてあとは頼むよ」


「はい」


 ぼくは地面に足を強く踏みつけ、圧縮するとはねとんだ。 その威力でアリ一体の体を貫き、そのまま壁でバウンドすると、もう一体を上から叩き潰した。


「ふぅ......」


「かなりうまくその体を使えるようになったね」


 リガイアが変な顔をして固まっている。


「な、なんなんですか! あのナイトアントは鉄のより硬い外殻をもつんですよ。 それをあっさり貫くなんて......」


「ああ、この体なら簡単だよ」


 そう答えると、唖然としてリガイアは言葉を失っているようだ。


「どうやらかれらはアレンゲスト帝国のものたちらしい」


 ミミックさんは倒れた兵士たちの装備をみていう。


「帝国の......」


「ああ、先を急ぐよ。 彼らは後発隊のようだ。 まだ先に行ったものたちがいる」


「そうですね。 どうみても十数人だった。 もっといるはずです」


 ぼくたちは先を進む。 そこから階を進むにつれ死闘を物語るように、倒れたモンスターと共に壊れた剣や槍、盾や鎧が転がっていた。


「このぶんじゃ、かなり兵士も減っているようだね」


「さすがに10階ともなるとかなり強くなるみたいです」


「ええ、ここで俺は限界でした。 親父は15階まで行けたようですが......」


(ザガルはかなり強いようだな)


 ぼくたちは先へとすすむ。



「ここが15階か...... ミミックさん」


「ああ、奥に魔力がたくさんあるね」


「どうやら追い付いたようですね」


 ぼくたちは少し遠目からのぞいた。 その部屋では今までより巨大なアリが暴れ、何人もの兵士たちが吹き飛ばされ消えていった。


「あれは【ジェネラルアント】か...... さすがに強いね」


「親父から聞いたことがあります。 その外殻は槍も通さなかったと......」


「みたいだね。 剣も矢も刺さらず地面に落ちている。 このままあのアリに倒してもらえれば楽なんだけど」


「うん、でもそうもいかないみたいだね」


 その時、一瞬辺りが光り白くなった。 つんざく音と衝撃がこちらにも届く。


「これは」


「おそらく魔法だね。 しかも高位...... かなりの使い手がいる」


 ジェネラルアントから煙があがっている。 


「ですが、ほとんどの兵士は倒されたようです」


 リガイアはそういうように、ジェネラルアントのそばには数人しか残っていなかった。


「そうだね。 ただ」


 その瞬間小手でナイフを受けた。


 後ろに突然ローブ姿の人物がいた。


「なにものだ...... 」


 後ろからジェネラルアントのそばにいたものたちが、こちらにちかづいてくる。


「あんたたちこそ何者なんだい? ここは獣人の領土、人間がなぜここに?」


「もはや魔族はさった。 ここは我らの領土だ」


 そう騎士のような鎧姿の男が両刃の大剣を向けた。


「ふざけるな! お前たちが木々を枯らして追いやったのだろうが!」


 リガイアがそうかみつく。


「ふん、魔族か。 それがどうした。 魔族など存在するのも汚らわしい」


「くっ! きさま!」


「まあ、リガイア。 ここは任せてくれ。 ミミックさん」


「ああ、彼は任せた。 私とリガイアは他を片付けよう」


 ミミックさんとリガイアは、後ろのローブを着たものと前の魔術師らしき者たちを警戒する。


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