第十九話「誇りと屈服」
「なんだと!! 親父! ここを捨てるというのか!」
リガイアが怒号をはっする。
「そうだ。 我らはここを捨てカイどののダンジョンへとうつる」
そう国王は静かにいった。
「ふざけるな!!」
「兄さまふざけてなどいません! 彼らのもってきたポーションで父上の病がかなり改善したのです!」
「ジェスカお前まで!」
そうリガイアは声をあげた。
「親父! それも奴らの策略じゃないといえるのか! そうやって信用させて囲んで襲うかもしれん! そもそも病とて人間のやったことだ! 奴らなら回復させることもできるだろう!」
「......これは国王としての決定だ」
「俺は従わん! 弱きものの下にはつかん!」
「ならば...... ぐっ」
国王は槍をとろうとしたがたちくらむ。
「もはやあなたは王ではない! 強き俺が王となる!」
「リガイア......」
「じゃあさ。 君がこのダンジョン...... カイさんと戦ってみればいい。 強いものなら従うのだろう」
ミミックさんはそういって、後ろにいるぼくの鎧をたたいた。
「なんだと...... いいだろう。 お前の首を人間たちへの宣戦布告にしてやろう!」
そう剣をぬいた。
「しかたないですね......」
「ああ、殺さない程度にやってあげなよ」
ぼくは外にでてリガイアと対峙する。 周囲に人々があつまり歓声をあげた。
「さあ、剣をぬけ」
「持ってきていない。 敵意がないことを示すためにおいてきた」
「なんだと...... なめやがってその首斬ってすてる!」
リガイアは怒り、地面を跳ねるようにとぶと剣をふるってきた。
(速いな...... でもヘルハウンドほどじゃない)
その剣を小手で受けた。
(威力もある...... でも小手を切り裂けるほどじゃないな)
「なっ!! おれの剣を小手で! くそっ!」
左右に高速で移動して再度攻撃してくる。 それを軽くかわす。
「くっ!! かわされる! ばかな」
「わかっただろう。 もうよせ」
「うるさい!! 頭の中でしゃべるな!」
リガイアは何度も攻撃してくる。 それをかわして数度打撃をあたえる。
「ぐはっ!」
地面を転がる。
「く、くそっ、こんなに力の差があるなんて」
「嘘だろ...... あのリガイアが」
「全く歯が立たないなんて」
周りからざわつく声がする。
(よし、このまま人間と戦っても勝てないと思わせよう...... それには)
「外のもの全員でかかってきても構わないよ」
「なんだと!」
「いや、リガイアが勝てないんじゃどうしようもない」
「なめるな! 俺たちは誇り高い獣人だぞ!」
十名あまりがこちらに迫ってきた。
(少し少ないが......)
「がはっ!」
「ぐぅ!!」
「がっ!!」
「ぐふっ!」
それらを片っ端から殴りつけ、地面に転がした。
「これでもうわかっただろう。 戦っても無駄だ。 ただ犬死にするとめに種族を巻き込むつもりか」
そう見ているものたちにぼくは告げる。
「確かに......」
「ふざけるなよ!」
「しかしあいつらはこの国でもかなりの強者だ。 それがこうもあっさり」
「だが、祖先より守ってきたこの土地をうしなう!」
どうやら賛否どちらもいて紛糾している。
(圧勝すれば、したがってくれると思ったけど)
(まあやむを得ないな。 ずっと住んできた土地を離れろといわれればやむをえまい)
そうミミックさんはいった。
「まて!」
倒したリガイアが地面に手をついてふらふらとたちあがる。
(まだやるか)
「......俺はこの人たちについていく」
リガイアはそういうと、ざわめきがひろがる。
「本気か! リガイア!」
「どうして...... 人間を信じるのか」
「このまま屈していいのか!」
「よく考えてみろ。 この人の力なら、俺たち全員を殺すのは簡単だ。 なのにわざわざ来て移転を進めにきた...... 力ずくで奪えるのにな。 あいつらとは違う」
そういうと、周囲も静まり返る。
「我が息子、リガイアのいうとおり、我らはこれより神のダンジョン【神の園】へとむかう。 よいな」
そうジェスカに支えられ国王が現れると、みな平伏した。
「怒りで我を忘れた。 失礼なことをして本当にすまない。 皆のことをよろしくお願いしたい」
そうリガイアは頭をさげた。
(さすがに王子だけはある。 相手の力量を認め、自分の間違いを認める度量もある。 ただの愚かな若者ではなかったんだ)
(みたいですね。 さて、ミミックさん頼めますか)
(ああ、やってみる。 少々つかれそうだが......)
そういうとミミックさんは獣人たちの姿を人間に変化させていった。




