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09 俺は最下層の奴隷だった【SIDEジーン】

 俺の父親は元戦闘奴隷の屈強な男で、奴隷商人の元で繁殖のために女奴隷と性交するためだけに飼われていたらしい。

 俺もその中の一人で、たくさんの子ども奴隷を生産していたらしく、おそらく俺の遺伝子上の義理の兄弟は100人は軽く超えるそうだ。


 5才になってある程度身体が出来上がると、奴隷商人は俺を農場に売った。

 その農場は食い扶持が少なくてすむという理由で、働いているのは子どもばかりというとんでもない場所で、使い捨て前提で働かされる非常に過酷な環境のため、1年すぎると半分は過労死していた。

 そんな場所から逃れるため、仲間10人と脱走したのは、雪の降る夜だった。

 とにかく走った。

 後ろで捕まり悲鳴をあげる声を聞いても、追手の馬に踏まれ、骨がひしゃげる音を聞いても……

 逃げて、逃げて――――二週間後にたどり着いたのは王都だった。


 ここでならまともな仕事にありつけるかもしれないと思ったが、俺みたいな子どもは安い賃金で搾取されるだけで、結局盗みを働き路上で寝て暮らすしか術がなかった。

 だが、盗みは危険が伴う。

 とうとう捕まってこっぴどく殴られてからは、何か上手く稼ぐ方法はないかと考えはじめた。


 深夜、道路の石畳を鉄の棒を使って剝がす、そして日中その穴に、はまってしまった馬車の車輪が抜け出す手伝いをする――これで駄賃をもらう事を考えついた。

 これが中々良い商売で、馬車の主が貴族ならさらに良い金になった。

 5人ほどの仲間でやっていたのだが、おかげで充分なメシが食えるようになったのだ。


 そんな風にいつものように手伝いをしていたある日、いきなり馬車に乗っていた貴族らしい身なりの男から怒鳴られた。


「馬車にさわるな! 浮浪児が! おい! 早くなんとかしろ!」

 すると前後を守っていた兵士らしき男たちが集まってきた。


 これはやばい!

 兵士が護衛にいるなんて、目に入らなかった!

 兵士に守られている馬車なんて、かなりの高位貴族だ。


「これはむりやり石畳を剥がしていますね。警備兵に報告しましょう」

 馬車の点検をしていた兵士の一人がそう言うと、怒鳴っていた貴族男が俺らに目を向けた。


「貴様らの仕業だな! 手伝うふりをして、金をせびるつもりだったんだろう! この蛆虫め! こいつらを拘束しろ!」


 たちまち兵士たちにみんな取り押さえられた。

 地面に抑えつけられ、みんな大声で泣き出した。


「俺が考えて、俺がやりました! 捕まえるのは俺だけにして、こいつらは見逃して下さい!」


 農場から逃げたとき聞こえた悲鳴、骨のひしゃげる音。

 仲間を見捨てて逃げた代償は、ここで払うのかと覚悟をして声を上げた。


「いい度胸だなコソ泥め! こいつを縛れ!」


「お待ちなさい!」

 馬車の奥から、凛とした女性の声が聞こえた。


 ゆっくりとその女性が馬車から出てくると、貴族男が慌ててエスコートした。


 ほおおおぅ~~~

 騒ぎを聞きつけて集まった群衆からため息がもれ、みな一斉に頭を下げる。


 子どもが歓声をあげる。

「せいじょさま!」


 その女性は黄金色の髪をなびかせ、眩いほどの純白のドレスを着ていた。

 まるで女神像のように整った顔立ちに青い青い――――空よりもずっと青いその瞳……


「ふふ。貴方が考えたの? 脱輪させて、手伝いでお金をもらうって」


「……はい」


「賢いのね。良い行いではないけれど……その姿じゃ仕方がないわね」


 俺の髪は皮脂で固まりシラミだらけ、顔は泥にまみれ、服は穴だらけだった。


「これも女神様のお導き……貴方にチャンスを与えましょう」

 女性は兵士向かって声をかけた。


「この子を私専属の下男見習いにするわ。後ろの馬車に乗せてちょうだい」


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