21 私の『好き』をなめんな!
雑木林に向かって逃げようとするが、行く手を弾丸が飛来する。
パン!パン!パン!
「わああああ!」
笠原くんがわめきながら逃げ惑う。
男たちは走りながらどんどん近づいてきた。その数は5人。
私も身を低くして、シェルターの蓋の影に逃げるしかない。
そのとき……
パン!パン!
すぐ側で銃声が響いた。
シェルターからおにぃが飛び出し、銃を放ったのだ。
その勢いのまま剣を振りかざし、男たちをせん滅していく。
銃で一人を殺し、三人の首をはねた。後一人だ。
ところがそこでバランスを崩し、おにぃは膝をついてしまった。
その後ろ姿は背中から足まで血まみれだ。失血でもう限界なんだろう。
「おにぃ!」
そこで残った一人の剣がおにぃにむかってくる。
身体をひねって避けるがその剣はおにぃの肩に突き刺さった。
肩の前から後ろに差しぬかれた剣が、朝日を浴びて輝く。
「いやあああああ!」
私は走り出し、おにぃの身体に抱きつき、男を睨みつける。
一瞬躊躇したように見えたが、刺した剣をそのままにして、脇から小刀を取り出し私に向かって振り下ろしてきた。
やられる!
覚悟した瞬間、まるで爆発したような眩い光があたりを照らした。
新手の攻撃かと絶望したけれど、しばらくすると光が収まり、そこには10人ほどの男たちが現れた。
甲冑や盾をもった中世の騎士のような出で立ちで、その真ん中いる深紅のマントを着た黄金の甲冑男が声をあげる。
「聖女を害する者だ。殺せ!」
そうして周りの9人の銀色の甲冑男たちは、その追手を囲み、一斉に剣で串刺しにした。
たった一人のモーリス神側の男が、9本の剣に刺し抜かれたのだ。
「助けに来た! 王子がやっと助けに来た!」
鼻水を流しながら地面に伏せていた笠原くんが大声をあげた。
中央の黄金甲冑の男がその頭の甲冑を外した。
そうすると剣をしまった残りの9人も頭の甲冑をはずした。
皆、銀髪や金色の髪を持っていて、中でも金甲冑の男は黄金色の髪をもっていた。
ピカピカに磨かれた甲冑とキラキラ光る髪色が、朝日をサンサンと浴びて、ものすごく眩しい。
「妹よ無事か」
黄金男が声をかけてくる。
確かに私の本来の髪色と似ている。
だが美形かもしれないけど、私とは似てない気がする。
「敵は私が倒した。安心して良いぞ」
いや、やっつけたのはおにぃだし。
たった一人残ったのを9人で寄ってたかって殺しただけだし、しかもあんた立ってただけじゃん。
うさんくさい……ものすごーくうさんくさい!
「貴方が兄?」
「いかにも。聖女たる我が妹よ。お前を救うためモーリスの奴らから苦労してブレスレットを献上させ、志高き我が騎士たちに号令し……」
「話しは後でいいから! 早くおにぃを助けて!」
「おにぃ? あぁその奴隷か。よくぞアレクサンドラを守り続けた。褒めてつかわす」
「そんなのどうでもいいから! 早く病院に連れて行ってよ!」
「なんだ。その口のききかたは! やはり奴隷に育てられると王族でもこのようになってしまうのか……実に嘆かわしい」
「早くしろって言ってんの!」
「…なんと! なんと野蛮な物言い……! 即、アレクサンドラにブレスレットをはめよ! 早々に戻り聖女としての教育をし直さなければ!」
ガチャガチャと甲冑を鳴らして男どもが近づいてくる。
おにぃを置いてそんなとこ行けるか!
おにぃを見ると浅い息を繰り返し苦し気だが、私の顔を真剣に見つめ、大きく頷いている。
そういえばおにぃは異世界から助けが来ることを知っていたんだよね?
確かに助けてはくれたけど、この自称兄は私を異世界に連れ帰ろうとしてるんだけど!
それも知ってた訳?
私がおにぃを置いて異世界へ?
……冗談じゃない!
私から離れようとするおにぃにも、最高にむかっ腹が立った。
私の『好き』をなめんな!




