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19 おにぃの背中は血まみれだった

 次の日は襲撃もなく、穏やかな1日だった。しかしその深夜…


「アリー起きろ!」


 おにぃに起こされ目が覚めると、きな臭い匂いが立ち込め、ドアの隙間から煙が入ってきていた。


「センサーに引っ掛からない距離から火矢を撃ちやがった」


 別荘の外壁には、ストーブ用の薪が高く積み重ねられていた。

 追手は私を殺すのが目的だから、焼き殺したっていいんだ。


 おにぃは枕元から例の黒いリュックと銃を取り出し、暗視ゴーグルをかける。

「靴を履いたか?」

 襲撃に備え、私はベッド下に靴を置いていたし、おにぃは靴を履いて寝ていた。


「うん」


 窓から外の様子を見ながらおにぃが私を抱き上げた。


「舌をかまないように歯をくいしばれ」

 そう言って前のようにまた2階から飛び降りた。



 雑木林の中を二人で走り抜ける。

 パン!パン!


 追手は銃を撃ってくるが、暗闇の中を闇雲に打ってきてるようで私たちには当たらない。

 だが、足の速い男がいたようで、私たちに追いつき剣をふるってくる。


 パン!


 おにぃがそいつに銃を撃ちやっつけたのだが、その火花が見えたのだろう、追手の玉が今度は正確にこちらを狙ってきた。


 パン!パン!

「ぐっ!」


「おにぃ!」


「大丈夫だ。かすっただけだ。逃げるぞ」


 なんとか追手をまき、町まで出てタクシーをつかまえた。


 1時間ほど走ってもらい、着いたのは小さな集落。

 夜明け前の薄暗い闇に包まれる村には、起きている人がいないのかとても静かだった。



「ここから山に入る」


 30分ほど山を登ると、大きな原っぱに出た。その地面をおにぃが手探りで何かを探し始める。

 すると金属の取っ手のようなものが見えた。


 おにぃがそれを引き上げると、それは大きな蓋の取っ手だったようで、蓋の表面は土や草でカモフラージュされており、閉めれば外からは発見できないようにされていた。

 蓋の中には大きな穴があいており、急な階段が見え、奥には空間があるみたいだった。


「入るぞ」


 中に入り、蓋を閉めると真っ暗になったが、おにぃが入口のスイッチを押すと灯りがついた。中は4畳半ほどの空間で、床には水や毛布、備蓄食料らしきもの、剣や銃などの武器類も置いてあった。


「シェルター?」


「あぁ、そうだ。しばらくここに隠れよう。奴らは聖女の位置をだいたいの方向でしか探知できない。建物がないからうろうろと山じゅうを探し回ることになる。しばらく時間が稼げるだろう」

 おにぃがドカリと座り込み、壁に背中を預ける。


「もし奴らにここが見つかっても、入口が狭く一人づつしか入れないから、切り捨て易い。そして、もし奴らが入ってきたらお前はそこから逃げろ」

 おにぃが顎をしゃくって示した場所には、横穴が開いていた。


「50mほど進むと地上に出る」


「おにぃもすぐ来るんだよね」


「当たり前だ。疲れただろう、そこに水があるぞ」


「……うん」

 シェルターの隅に山積みにされたペットボトルを取り出す。


「おにぃもいるよね?」


「……」


「おにぃ?」

 おにぃの頭は垂れ、返事をしない。


「寝たの? おにぃ…」


 ペットボトルを持ったまま近づくと、見えたのは座り込んでいるおにぃのお尻あたりに溜まっているおびただしい血。


「おにぃ!」

 リュックはぐっしょりと濡れ、背中は血まみれだった。


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