18 もう、おにぃに苦しんで欲しくない!
他サイト掲載の扉絵です!(^^)!
別荘の2階のベッドルーム、小さな部屋に二つ並ぶシングルベッドの上のそれぞれに私たちはいた。
危険だからといつも一緒に行動し、寝る時までもずーっと一緒なのだ。
「ふーう」
枕に頭を預けるおにぃは大きなため息を吐く。
2時間ほど前に襲撃があった。
今までの経験から丸1日は、次の襲撃はない。
おそらく時空をこえるブレスレットの数は10個ほどしかなく、異世界に戻った死体からそれを取り出して次の部隊が来るまでそれくらいのタイムラグがあるんだろうとおにぃは分析していた。
とは言ってもおにぃの精神的、肉体的疲労は相当なもので、全く気の抜けない状況だ。
「おにぃ……やっぱり【聖女殺しの剣】を使おうよ」
私はもう何回目にもなるセリフを口にした。
「でもピアノはおろか、左手が動かなくなる可能性もあるんだぞ」
「いいよそんなの! 命には代えられない! それに、いつまでもこんな生活続けられないよ」
おにぃを独り占めできる生活は嬉しいけれど、こんな形はヤダ。
「そうだな……高校だってちゃんと卒業したいよな」
「違うよ! 高校なんてどうでもいい! 私はおにぃが心配で…」
涙が我慢できなくなる。
「おにぃがケガするのが嫌! おにぃが辛そうなのも嫌!」
「別に俺は辛くなんか……」
「ウソ! おにぃが優しいってこと私、知ってるもん! 動物が大好きで、捨てられて死にそうな子猫の世話を必死にしていたの知ってるもん! そんなおにぃが敵とは言え、生き物を……人を殺すなんて辛くない訳がない!」
「……」
「もう、おにぃに苦しんで欲しくない! 私は……おにぃが好きなの…大好きなの!」
私の『好き』をおにぃはどう取るだろうか……いつものように家族愛と思うだろうか。
ギシリとベッドがきしみ、私の身体を暖かいものが包み込む。
「泣くな。大丈夫だから、もう少しで全て解決するから」
背中に感じる暖かいおにぃの身体からは、逃亡中だからいつものウッディノートの香りはしない。
だけど、やわらかな肌の匂いがして…これはこれでいいな~なんて、ゲスな変態脳ミソがこんな時なのに喜んでいる。
でもいいよね!
兄妹じゃないから、真性の変態からは卒業したんだもん。
好きな人に抱き着かれているんだから仕方ないよね!
「おにぃは私の『好き』の意味、分かってるの?」
「……あぁ」
「それなのに、こんな風に抱きしめてくるなんて、私がいい気になっても知らないからね」
「……お前こそどんなことがあっても、俺がお前を愛していた事を忘れるなよ」
「え?」
振り返っておにぃを見ようとすると、その熱は瞬く間に離れていき、その姿は背をむけた形で隣のベッドの布団の中にあった。どんな早業!?
「もう、とっとと寝ろ」
おにぃの背中から聞こえる声に、もしかしておにぃ照れてる?
私を愛してるって言ったよね?
きゃ~~~
なんて浮かれていた私は、おにぃのセリフが『愛していた』という過去形だったことにも気が付かず、本当に危機感のない恋愛脳だった事を後で後悔した。




