15 おにぃが撃たれた!
「もう食ったな。出るぞ」
そう言っておにぃは立ち上がり、リュックを担ごうとする。
チャックから見えたのは…
「【聖女殺しの剣】……」
「なんでお前がこれを知っている?」
「……【聖女殺し】って…その剣は私を殺すためにあるの?」
「これは…」
おにぃが突然顔を上げ、私を抱き込んだ。
ガーン!
「くっ!」
銃声のあと、おにぃの肩からじわじわと血がにじんでくる。
「きっ…」
悲鳴をあげようとした私の口をその手がふさぎ、内ポケットから銃を取り出し、おにぃも応戦する。
ガーン!
ガーン!
「カウンターの後ろに隠れろ!」
「お…おに…」
「大丈夫だ。絶対守るから」
床をはいずって、カウンターの後ろで身を縮める。
途端に剣戟の音と、鈍い殴打音が響き始める。
おにぃ!
おにぃ!
無事でいて!
死なないで!
しばらくすると音がやみ、おにぃのかすれた声が聞こえてきた。
「もう出てきてもいいぞ」
私はカウンターから飛び出し、おにぃにすがりついた。
「おにぃ! おにぃ!」
追手の姿はもうそこにはなかったが、座り込むおにぃの下の床には大量の血が……
「はぁ~やっぱりアイツらも銃を手にいれていたか…止血をしたい。何か布はないか」
ソファに敷かれた、のれんを持ってくる。
「きつく縛ってくれ」
だらだらと肩からは血が流れている。
パニックになりそうになるが、必死に深呼吸して冷静になろうと努める。
「うううっ」
おにぃがうめき声をあげるが、全力で肩をのれんで締め上げた。
「スマホを取ってくれ」
血まみれの手でスマホを操作すると、電話をかけ始める。
「銃でやられた。助けてくれ。姫をとにかく安全な場所に……」
10分ほどすると、数人の男たちが部屋に入ってきた。
男たちはいかにも、そのスジの男たちのようで…
「ふーん。あんたがジーンのお姫ちゃんか」
黒ずくめのスーツを着た、真ん中の恰幅のいい男がニヤリと笑った。
連れていかれたのは町はずれの総合病院だった。
おにぃはすぐに弾丸の摘出手術を受け、今は特別室のベッドで眠っている。
「ここはうちの組の息がかかった病院や。銃のケガでも警察に通報されへんから安心しぃ」
さっきの黒ずくめの男が病室に入ってきた。
「はい。ありがとうございます」
「わしとジーンはな、半年前に知りおうたんや。うちの組の末端組織に銃を買いにきよってな」
その頃からもうおにぃは追手と闘ってたんだ。
「どこのガイジンが買いにきよったんやと思ぉたら、有名な格闘家のジーン様やないか! こりゃええわって思ぉて、脅して金をむしり取ったろうと思ったんや」
「……」
「ほんならな、警察に言うなり、週刊誌に言うなり好きにせえって言いよる。世間の評判なんかどうでもええ、今の地位なんていらんってな。……なんやおもろい男やなと思ぉて見張りをつけとったら、路地裏でガンガン人を殺しとる。そんでもって、その死体が消えるんやで? ほんまビビったわ。ほんで詳しい話を聞いたら異世界から来たって言うやないか! わし、そーゆー話大好きやねん!」
「…そんな話、信じたんですか?」
「まぁ、半分は疑っとったけど、今は信じとる。だってさっきからあんたの命を狙って、古めかしい服を着て剣を持った男たちが、何人もこの病院に潜り込もうとしとんねんで」
「えぇ?」
「今、うちの若いもんに相手さしとる。殺してもうても、死体も血ぃも消えるんや。何のアシもつかへんし、ゲームみたいで根性試しにええやろ?」
ニタリと笑う男に寒気がする。
「今夜は熱が出るやろな。姫ちゃんがしっかり看病してやりや」




