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12 そうして俺たちはこの異世界に来た【SIDEジーン】

 空気口は複雑に折れ曲がり、途中極端に狭い場所もあったがなんとか通り向け、出口は2階ほどの高さがあったが低木が生い茂っていたため、身体は傷だらけになりながらも骨折することなく飛び降りることができた。

 幸いにも周辺には敵はおらず、闇に紛れて庭園を走り続ける。


『姫様どうか泣かないで下さい』と願いながら周辺を警戒して進む。

 背後の神殿からはたくさんの悲鳴が聞こえる。


 あぁまたか……農場から脱走した時仲間を見捨てたことを思い出す。

 ……いや違う! 今回は違う!

 ぎゅっと両手に抱えた温かい命を抱きしめなおす。


 アレクサンドラ様を必ず守る!

 何が何でも! 命をかけてお守りする!



 その時アレクサンドラ様からまばゆい光が放たれた。


「な……!」


 その光が収まると、その小さな左手の甲には聖女の聖痕、神花のアザが現れていた。


 ……ということは聖女様は…!

 木々の合間から見える神殿を見上げる。

 涙がこぼれそうになるのを必死に耐えた。

 今はそれどころではない! 聖痕は身体のどこかに現れるものだが…まずいな、手の甲なんてこんな目立つ場所に現れるなんて!


「おい! こっちで何か光ったぞ!」

「そっちの森の奥だ!」


 ガチャガチャと敵兵の甲冑の音が近づいてくる。

 必死に逃げるが、行く手に矢が飛んできて足止めされる。


「おい! とまれ! 次は射殺すぞ!」

「白い服……神職者か。殺せ!」

 一斉に10人ほどの兵が飛び掛かってくる。

 武器は【聖女殺しの剣】しかない! 鞘を抜き応戦する。


「なんだぁ? その小刀……光ってるぞ」

「変なもの持ちやがって!」


 そこで動き回る俺の手の中のおくるみから、アレクサンドラ様の左手が見えてしまった。


「おい! あれは聖痕だぞ!」

「あいつの抱いてる赤ん坊に聖痕がある!」

「聖女の子どもだ! 継承されやがった!」


 ピーと一人の男が笛を吹き大声で叫ぶ。

「聖女を発見したぞ!」


 わぁっと歓声が聞こえ、敵兵がどんどん集まってくる。


 もう、逃げ切れない!

 30人ほどに囲まれた時点で、覚悟を決めた。


 大人サイズの【ゲート】のブレスレットに、子どもの俺と赤ん坊の王女様の手首はすっぽりと収まる。

 そしてブレスレットの赤い石を押し、決して離れないようにとアレクサンドラ様を強く抱きしめた。





 ガー!!

 次に目の前に見えたのは鉄の塊だった。

 それがものすごいスピードで迫ってくる。


 アレクサンドラ様をかばいながら横に飛びのくと、それはそのスピードのまま通り過ぎていった。


「ここは……異世界か…」


 無事、時空の狭間ではなく、どこかの異世界にトリップできたようだ。

 周りには王宮より大きな四角い石の建築物がひしめき、道にはさっき当たりそうになった鉄の塊が、すごいスピードで大量に走っている。

 俺らがいた世界よりも、随分文明が進んだ世界のようだ。


 とにかく命は助かったのだと大きく息を吐き、姫様の状態を確かめる。

 あれだけの騒ぎがあったのに、アレクサンドラ様をすやすやとお眠りだ。


「姫様は肝がおすわりだな」

 笑みを浮かべ、その頬を撫でていると側から声がかかる。


「君! 赤ちゃん抱いてどうしたの!? 車道にいたら危ないわよ! 歩道こっちにおいで!」


 どうやらここは危ない場所らしい。


 声をかけてきた中年女性は、黒髪に黄味がかった肌をしている。

 見たことのない容姿に、やはりここは異世界なんだと実感する。

 彼女の側に行くと心配げな顔をされた。


「どうしたの? 君、小学生でしょ? お母さんは?」


「えっと…いなくて…」


 声を出すと、ものすごい違和感があった。

 ヴィーナ語を話しているつもりなのに、その口から紡がれるのは、全く知らない言葉だ。


「え? いないの? 君どこからきたの?」


 そして女性の言葉はヴィーナ語に聞こえるけれど、口の動きと音が合っていない。

 異世界語が翻訳されている?

 これはブレスレットの力なのか?

 そう思いブレスレットを見つめて…


「えっと…俺は…#$%&」


 そこでピシッと音がしてブレスレットが、真っ二つに割れた。


「ああっ!」


 さっき鉄の塊をよけた時に、手首を打ち付けた気がする。

 それで…


「&%$&&###?」

 もう女性の言葉は、意味のない音の羅列にしか聞こえなかった。


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