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無人島サバイバル★漂流日誌(略)  作者: 名久井悟朗


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エリちゃん登場

 潰れてはいない。

 しかし、未だ視界はぼんやりとして淡い光しかとらえる事が出来ないでいた。

「君もちゃんと服を着るッス!」

「面倒じゃのぅ……これでよいか?」

「ちゃんと下も履くッス!パンツだけじゃなくてズボンも!!」

 見えない闇の向こうに魅惑の世界が広がっているのにっ!!

 終わってしまう!!

 生着替えが終わってしまう!!!

「センパイなんで泣いてるッスか?」

「アンが俺の目を指で突き刺したからだろうがっっ!!」

「し、失明するほどは刺してないッスから」

 徐々にぼんやりとした光が輪郭を持ち始めるが、痛んだ目に遮る物のない日光は刺激が強かった。

「眩しい」

「いやぁ~、ちょっとサービスしたとはいえそこまで言われるとテレるのぅ~」

 お前(推定幼女)の事じゃない。

 いや、確かに幼女であろうとこの歳になると女性のリアル裸は貴重なので見たかったけども、それが眩しいという事ではない。

 というか、アンよまた俺の目を潰そうと構えるのは止めろ。

 しかし、やっとまともに前が見えるようになった俺には、それらのツッコミ以上に気になる物が目に入った。

「なぜジャージ?」

 先ほどまで妖精と見まごうた幼女は赤い、それも芋と称されるくすんだ赤のジャージに身を包み、そのまっ平らな胸元の白い後付けの名札には『五の三 くりう』と書かれている。

 くりうちゃん一一歳か?

「楽なんじゃよ」

 幼女はそう気の抜けた表情で言うとポリポリと頭を掻いた。

「いや、楽なのは理解できるけど……もしかして、現地人っ!?」

 こんなくっそ気の緩んだ人前に出るにはちょっと……な服装をしているという事は、チョイと歩いて行ける近所に住んでいるのではっっ!?」

「こんな所に在住する人間がいると思うのか?」

 言われて見渡すが、海は青、山は緑、一面のクソ大自然。

「じゃあ何でそんな芋ジャージ着てるんだよ」

「楽なんじゃよ」

 くそ、会話が途中に戻った。

「まぁつまり、お嬢ちゃんも遭難者なのか?」

「その様子じゃと、同じ飛行機に乗っていたようじゃな」

「はぁ~」

 あからさまに溜息をつくと、幼女は慰めるように俺の肩へ手を置いた。

「なに日本での飛行機事故率は一〇万分の一以下らしいぞ?そんな稀有な例に当たった上、ほぼ無傷で生きとるんじゃ、ラッキーだと思わねば損じゃ!」

「なるほど、一理あるッス」

 一理ねぇよ。

 しかし、この幼女ジャージで飛行機に乗ってたのか?

「そんな同じ飛行機で墜落しても生きていた仲同士、そろそろ自己紹介でもどうじゃ?」

「なんだその『同じ釜の飯を食った仲』の嫌な亜種は……高校二年来芦長平だ」

「高校一年後藤杏ッス!」

 俺もアンも二度目なので大分端折ったが、幼女は満足そうに頷いた。

「うむ。ワシはエリザベス、永遠の一七歳じゃ!」

 絶対嘘だろ。

 どう見ても小学生だろ。

 エリザベスって髪こそ白銀だけど、顔つき完全に日本人じゃん。

 めっちゃ日本語堪能だし、誰がそんな戯言信じるんだよ!

「あ、センパイだったッスか!失礼しましたッス!」

 あ、信じる娘いたわー。

「なんじゃその顔。チョーヘイはワシの事疑っとるのか?」

「当たり前だろ。絶対一七歳はないだろ」

「そんなどうでもいい細かいこと気にするでない。禿げるぞ」

「そんなどうでもいい嘘つくなや。禿げない」

 俺がしばし自称エリザベスを胡乱な目で見ると、彼女はてへっ♪っと舌を出して誤魔化した。

 くっそ可愛いので全てを許そう。

「気軽にエリちゃんって呼んでよいぞ?」

「ボクの事はアンって呼んで欲しいッス、エリちゃん先輩!」

「よろしくザベス!」


読んでいただきありがとうございました。

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