岩の上に水着とかで座ってる写真とか絶対ケツ痛いよな
岩石海岸。
いや、磯と言った方がわかりやすいか。
ゴツゴツとした岩が無数に転がり、打ち寄せる波に白いさらしが生まれる。
宙に舞う飛沫が遠くにまで降り注ぎ、多くの岩が濡れたり苔が生えたりとどこも歩きにくくて仕方がない。
アンはそんな不安定な岩の上をまるで公園のアスレチックのようにピョンピョンと飛び跳ねて移動する。
そんな真似しちゃいけない、真似したくもないし真似できない彼女の後を俺は杖を突きながらおっかなびっくり進んだ。
「やぁっと追いついた」
比較的乾いた岩を歩いたつもりだが、濡れていないように見えて濡れている岩も多く、普段使わない筋肉を酷使し這う這うの体で追いついた俺をアンは大きな岩に隠れるようにして待っていた。
「センパイセンパイ」
アンが声を潜めて俺を手招きした。
「どうした?」
「あれッス。あの海に出た岩の下ッス」
陰に隠れながらアンのした方を見た。
少し離れ、磯の海に一つ飛び出た比較的滑らかな大岩。
そのすぐ近く、磯と岩との海流の関係か、わずかに潮の流れが弱まっている所の海面の下に何がが揺らめいた。
「アレは──」
俺が言葉を発しかけた時、それは海中より現れた。
小さく折れそうなほど繊細な手とそれに繋がる白く細い腕。
それが岩をむんずと掴んだ。
そして、それを追う様に小さな天女が海中より宙に舞った。
それは白い妖精のようだった。
体は俺よりも小さなアンよりも小さく、白亜の如き白い四肢はまるで砂糖細工の如く儚げでありながら細くしなやか。
一糸纏わぬ幻想の如き体に一切の余分な脂肪は存在せず、長い白銀の髪をかき上げようと腕を上げれば、艶めかしいあばらが浮き出た。
かき上げられた髪は上質の生糸の如く陽光を受けて艶やかに輝く。
それら芸術品の如き完璧な美を体現した体よりもなお美しく、幼くも整った顔はある種の究極であった。
しかし、見惚れたのは永遠に感じる程の一瞬だった。
「人魚って言うにはワイルドッスね」
その美しき幼女は片手に持った銛の先端に刺さった大きなエビを引き抜き、そのまま頭を引き抜きその味噌を啜りそれを捨てると素手でバリバリと殻を剥いてそのまま齧り付いた。
よく見れば、幼女の腰には紐が巻かれており、その先には数匹の魚が吊る下がっている。
「妖精と呼ぶには粗野、野人と呼ぶには可憐だな」
「じゃあ、妖怪ッスね……って、何女性の裸まじまじと見てるんスか!!」
突如アンの腕が伸び、俺の視界を塞ぐどころか眼球に指が迫った。
「ちょ、止めっ!?目に指がっっ!!」
「いいから見るのを止めるッス!責任取れないッスよ!!」
「何の責任だっ!」
目を潰さんと迫る文字通り魔の手から逃れんと足掻くが、まともにやりあってアンに力で敵うわけがない。
足が滑りアンが馬乗りになる形で俺を押し倒した。
普通逆だろ。
「観念するッス!」
「止めろ!話せばわかる……ってか、こんなに騒ぐとバレるぞ!!」
「いや、最初からバレとるぞ?」
突然の聞き知らぬ声に俺とアンは岩を見上げた。
逆光で良く見えないが、そこには先ほどまで幼女らしき影が蹲踞の姿勢でこちらを見下ろしていた。
「こ、こんにちわ~」
幼女は親指で口を拭うと口を開き──
「だから、裸の女性を見るのを止めるッス!!」
「ぎゃぁあぁああっっーーー!!」
アンの指が俺の眼孔に突き刺さった。
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