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無人島サバイバル★漂流日誌(略)  作者: 名久井悟朗


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虫刺されに

「……はっ!?」

 さて、俺はどれだけセンパイらしい時間を保てていたのか。

 それは誰にも分らない。

 ただ、昨夜見た夢は素晴らしかったとだけ覚えておこう。

 まぁ、俺もアンも疲れてたのだから仕方ない。

 火を焚いていたお陰か、何事もなかったのだから今日の所はヨシとしておこう。

 しかし、それにしても……

「痒いッスね」

「だな」

 俺とアンは全身を蚊に刺され、バリボリと体中を掻き毟る。

 熟睡しきっていたから気づかなかったが、当然だがどうにもこの島は虫が多い。

 蚊取り線香やら虫刺されの薬やら何とかしないといかんが、こんな大自然で何とかなる物でもない。

 大自然だからこそ欲しいものが、大自然では手に入らない。

 なんと理不尽な事か!

 そのせいで俺もアンも掻いてはいけないとわかりながらも掻くしかない現状に甘んじている。

「でもまぁ、刺されたのが蚊で良かったな」

「ムカデとかダニじゃなかったのが不幸中の幸いッス」

 噛まれた所の様子から(多分)蚊だが、これがムカデならもっと痛かったし、マダニなんかだったら最悪死ぬまであり得る。

 まぁ、蚊も伝染病やら寄生虫の可能性もあるが、日本でならそれはほぼ考えなくていい。

 日本本土ならだが。

 この島にどれだけいる事になるかはわからないが、害虫対策は優先すべき課題の一つだ。

「それでセンパイ、今日はどうするッスか?」

 アンが蚊に刺され腫れた所に爪で☓を付けながら俺に尋ねた。

 この娘、昨日の今日で俺の事信用しすぎじゃないか?

 まぁ、むやみやたらに反発されるよりいいけど。

「まずは飲み水の確保だな」

 俺の答えにアンは椰子の実を掲げ、バリバリと外皮を剥きだした。

「いや待て。正確には真水の確保だ」

「何でッスか?」

 剥き終えた椰子の実を玩びながらアンは訊ねた。

「椰子の実にも限りがある。それに洗濯や煮炊きを椰子の実の汁でするわけにもいかんだろ?」

 あと単純にずっと椰子の実は飽きる。

 正直あの味あんまり好きじゃないし。

「なるほど!確かにアレで米は焚きたくないッス」

 まず米が手に入らないと思うが、納得してくれたならそれでいいや。

「それじゃあ悪いけど、アンも少し荷物を持ってくれるか?」

「了解ッス!」

 アンは率先し重い荷物をめい一杯持つと南に向けて歩き出した。

「そっちじゃない」

 そっちはどう見ても山だ。

「……どっちに行けばいいんスか?」

 山に登って島全体を見るのもいいが、北と南に二つある大きな山はどちらも標高が700mはありそうだし、そこまで行く道中も深い木々に覆われている。

 人の通るような道があるようにも見えないし、とても気軽に登れるようには見えない。

 まぁ、普通なら川を見つける為に海岸沿いを歩くだろう。

 今回も海岸沿いを歩こうと思っているのだが、実は水を見つけるという目的以外にもう一つ狙いがあった。

「実はな、昨日アンが寝たすぐ後に向こうの方で煙が上がっててな」

「……人がいるんスか!?」

 アンは少し考えた後嬉しそうにガッツポーズして無邪気に喜んだ。

「問題は相手が友好的かどうかだな」 

 俺の懸念にアンは不思議そうに首を傾ける。

「つまり、相手が攻撃的だったらやられる前にやれる準備をしろって事ッスか?」

「いやそこまでは言ってないが」

 いやそうなんだけど。

 物分かりがいいってレベルじゃねぇ。

 チョロいアホの娘かと思ったが、下手するととんでもないウォーモンガーだ。

 この娘別の方向にも心配になってきた。

「いざという時の覚悟だけしといてくれ」

「了解ッス!」

 アンはそう言うとシャドーボクシングの真似事をしてみせた。

 腕の振りの後から音が聞こえてくる気がするのは気のせいだろう。

 相手がニンジャでもない限り、彼女一人で何とかなりそうな気がするが、とりあえずお姫様(邪魔)にだけはならないように棒でも持っておこう。



読んでいただきありがとうございました。


ブクマ・評価してクレメンス。

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