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無人島サバイバル★漂流日誌(略)  作者: 名久井悟朗


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山から見えた光景……


「アレ?無いわよ?」

 沈黙を破ったのは奏の間の抜けた声だった。

 最初は何を言っているんだと、小銭でも落としたのかと彼女の方を向いたのだが、どうやら本当に深刻そうに足元やポケットではなく、遠く四方の海を見て何かを探していた。

「なんだ?立ちションするのにチ〇コが見つからないのか?」

「初めから無いわよ!!」

 怒りに任せた拳が俺の鳩尾を穿った。

 小粋なジョークなのに何も殴らんでもいいだろうに。

「ごっ……じゃあ、一体何がないんだ?」

「島よ!」

「島?」

 島は今いるじゃないか?

「エリちゃんが言ってた島よ!忘れたの?何しにこの山に登ったと思ってるのよ!」

 ……?

 山があるから登ったんじゃ?

 あ、島かっ!

「そうだよ島だよっ!!」

 山を登り切った事で満足して、何の為に登ったか完全に忘れてた。

「山があったから登ったんじゃなかったッスか?」

 アンが呑気に疑問を口にした。

 いや、俺もついさっきまでそう思っていたが。

「ほら、山に登ると決めた時や少し前にも言っただろ?島の周囲を確認するって?」 

 俺の言葉にアンは首を傾け、少しして手を叩いて叫んだ。

「思い出したッス!船とか飛行機とか、あと北か南に島を見つけるッス!」

 この子は頭はいいはずなのだが、基本的にアホの子なので時々本当に心配になる。

 まぁ、俺も少し前まで忘れてたわけだが。

「飛行機も船も島も見えないッス!!」

 叫んですぐ海を確認しだしたアンはそう叫んだ。

 アンの視力をして見つけられないなら俺が見つけられるわけもない。

 一応俺も確認はしたが、アンの言う通り船も飛行機も浮かんでないし飛んでいない。

 島だって北や南はもちろん、東や西にも見つからない。

 アンの言う通りなら緯度経度からして、この島の周囲にそれらが見えないわけがない。

 船や飛行機に関してなら、漂着初日から今まで一隻、一機も見ていない。

 日本近海でそんな事があり得るのか?

 ここまで登った意味は脆くも崩れ去ったのか?

 絶景の跡には絶望が聳え立っていた。

 どうしたらいいのだろうか?

「ま、ないなら仕方ないわね」

 一番帰りたがっていた奏があっけらかんと言った。

 見上げればその顔は、何か堪えているようでも負け惜しみを言っているようでもなく、本当に「まあいいか」程度の軽い物だった。

「じゃのぅ。脱出するなら多少準備が大掛かりになりそうじゃのう」

 エリちゃんは僅かに困ったような表情だったが、それは自身がではなく、俺達に対して申し訳ないという感情でしかなさそうだ。

 彼女にとってはこの島にいる事は大して問題ではないようだ。

「センパイセンパイ、大丈夫ッスか?」

 アンに至っては、自身の事よりまず俺の事を心配してくる。

「アンはいいのか?」

 俺の質問にアンはキョトンとした後、嬉しそうにニッコリ笑った。

「僕はセンパイと一緒に居れるなら何でもいいッス!」

 そう言うと、俺が心配してたのがうれしかったのか、凄い馬鹿力で抱き着いてきた。

 俺は胸の柔らかな感触と物理的な苦しさを秤にかけながら、傾きかけた太陽を眺めな頭を掻いた。

「まぁ、四人いりゃ何とかなるか」

 もうしばらくは、このサバイバルと言うには少しばかり生温い無人島の日々を続けなければいけないようだ。

 しかし、それは絶望ではない。

 むしろ、この曲者揃いの女の子に囲まれたトラブルと騒動の嵐に一杯一杯ながらもそれなりにラッキーな良い思いをしないでもないが何故か一線は越えられないというもどかしい現状と甘酸っぱいぬるま湯を天稟にかけながら生き延びる不思議な無人島サバイバル生活と美少女達とのキャッキャウフフな日々の行方を楽しむとしよう。


読んでいただきありがとうございました。

ブクマ・評価してクレメンス。

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