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無人島サバイバル★漂流日誌(略)  作者: 名久井悟朗


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ベーコンレタス


「本当にもう駄目かと思ったぞ?」

「……」

 結局あの後、念の為に三〇分ほど休憩したが、奏の体調に異常はなく、というか時間が経つにつれ血色がよくなっていった。

 言う必要もなく羞恥心から赤面していっただけだが、誰もその事には突っ込まなかった。

 それからかれこれ二時間以上、一行はひたすらに頂上を目指しているが、山道を進む面々の間に気まずい空気が流れる。

 心なしか、先を行く二人との距離がさっきよりも広い気までする。

 正直俺も離れて歩きたいが、本当に毒蛇が出たりしたら危険なので仕方なく彼女の少し前を歩く。

 ああ、早く頂上に着いてくれないものか?

「……ねぇ」

 二時間ぶりくらいに奏の声を聞いた。

「な、なんだよ」

 急な事に俺の声が裏返る。

「ありがと」

 少し笑いのこもった声が聞こえた。

「え?なんだって?」

 奏から感謝の言葉なんてめったに聞けるものじゃない。

 もう一度聞いておこう。

「悪かったって言ってるの」

 おや?

 何故か感謝が謝罪に変わったぞ?

 これはこれで貴重だが何故だ?

「……何がだ?」

 もう一度聞き返そうかとも思ったが流石に自重した。

 奏は俺の問いかけに口を開いた。

「アンタ。チョーヘイは何も悪くなくても……いや、アンタにも悪いところはたくさんあったけど、それにムキになって私まで嫌がらせみたいに色々した事」

 これは謝罪なのか?

 でもまぁ、最近はその当たりも弱くなってたし、それが俺と奏の距離感だと思っていたが、彼女には多少良心の呵責があったようだ。

「何でそんな事を?」

 俺の問いに奏はじっくり時間をおいてから、意を決したようにゆっくり口を開いた。

「私、昔男から凄くいやらしい……ひどい扱いを受けた事があるの」

 どうしよう。

 凄く重い話題が来ちゃった。

 そもそも俺は、何で誤ったのか聞きたかったのに、何で俺に嫌がらせをしたか答えさせてしまった。

 言葉が足りないばかりに、そんな歩きながら聞いちゃ駄目そうな重い話をしようとしないでっ!

「私には仲の良いお幼馴染の男の子が二人いたの」

 嗚呼もう、始まってしまった。

 

──────────────────────


 私には物心ついた時から二人の幼馴染がいた。

 『猫』と『スキッパ』だ。

 勿論動物の猫ではないし本名でもない、所謂あだ名だった。

 猫は苗字に猫の字がついていたからそう呼ばれ、スキッパは周りで一番早くに乳歯が抜け、その時の歯の抜けた顔からついたあだ名だ。

 猫は小さく可愛らしいあだ名のイメージとは裏腹に、大きく少し乱暴者だが、友人思いの猫と言うより虎のようないい男だ。

 スキッパは、男子の中では背が小さい方で、性格も大人しくて思慮深く、猫と比べると見た目も性格もかなり対照的だった。

 そんな対照的な二人と女の子の私。

 接点と言えば、家が近くだったというだけだったが、なぜかとても気が合い、幼稚園の頃から毎日のように一緒に遊んでいた。

 普通は小学校も高学年になれば男女で分かれて遊ぶものだろうが、私達は多少時間の減少こそあれど、幼稚園から小学校、中学校とずっと仲の良い友人だった。

 スキッパなんて頭がよく。私と猫が通うからと三つは下のランクの高校へ通い、教師や親を嘆かせていた。

 本人は「勉強なんてどこでも出来るから、それより二人と一緒に居たいんだよ」なんて、今どきドラマでも言わないような臭いセリフを吐いていた。

 そんな仲の良い私達だったが、高校生にもなると関係に変化が生まれてきた。

 いや、気づかないふりをしていただけで兆候は中学校時代にはもうあった。

 思春期の少年少女だ、色気づきもする。

 周りで付き合いだす男女が増え、そういう話も聞こえてくれば私だって興味が出てくるものだ。

 いくら関係な振りをし手も年頃の少女だ彼氏の一人や二人欲しくなる。

 気づけば今まで以上に三人で遊ぶ事も減りだしたと思った時、私は二人から同時に呼び出された。

 これはついに私にも彼氏が出来るのかとドキドキした。

 しかし、同時に私はどちらを選べばいいのか。

 今までの関係が壊れてしまうのではないか。

 どちらか一方と今以上に深い関係になるのはいいが、もう一人と疎遠になってしまうのは嫌だ。

 それならいっそ二人と同時に付き合てしまいたい。

 いつまでも三人でいたい。

 そんな独りよがりな考えを抱きながら、私は立ち入り禁止のロープを乗り越え、鍵の壊れた扉から二人の待つ人気のない旧校舎へと足を踏み入れた。

 老朽化し取り壊しを待つだけの埃っぽい旧校舎は、照明もなく昼なお薄暗く、それでいて締め切られ淀んだ空気は異常に蒸し暑かった。

 二人が待っていると約束した教室の前に付いた時、私はそこから発せられる言い知れぬ異様な雰囲気と息遣いに気づき不安に伸ばしかけていた手を止めた。

 この扉を開けていいのか?

 私は正体不明の不安に怯えながらも意を決し、バラ色の学園生活を夢見て勢いよく扉を開いた。

 そして、私は呆然と立ち尽くす事となった。

 扉を開いた先で二人の男が貪るような荒々しい口付けをしていたのだ。

 それはいまだ乙女な私が夢描いていた小鳥のついばむような可愛らしいものではなかった。

 獰猛な肉食獣が、本能のまま肉欲のまま獲物を貪るような獣欲に塗れたそれが私が初めて見た愛の現実だった。

 二人はすぐに私に気づいた。

 しかし、二人の口付けは終わらなかった。

 むしろ、私に見せつけるかのように激しさを増し、背の低いスキッパが大柄な猫を汚れた地面に組み敷き、覆いかぶさるように口付け、滴る汗と唾液が猫の顔を濡らす。

 スキッパは押し倒したか細い両腕で逞しい猫の身体を嬲るように弄り、乱暴にそのシャツを剥ぎとるとその皮膚に爪を立てるよう激しく舐った。

 猫と目が合った。

 スキッパも私を見ると、手で口元を拭って言った。

「悪い。俺達こういう関係なんだ」

 知らない。

「内緒にしようと思ったけど、奏にだけは知っててほしくて」

 知りたくない。

「無理にとは言わないけど、出来る事なら奏だけでも俺達を祝福して欲しい」

 夏休みも間近、麦茶の注がれたグラスが汗をかくような暑い日、旧校舎で私の恋とも呼べない恋心は彼等によって汚された。

 私は何も言えずただこの真夏の昼の悪夢のような光景をただ茫然と見ている事しか出来なかった。

 そして二人は、私の放心をあろう事か祝福ととらえたのか、この暑い夏よりも熱く激しい獣欲の手綱を手放した。

 そこから先の光景はすべて覚えている。

 今でも目を閉じれば二人の肌を滴る体液の軌跡さえ思い出せる。

 二人はその熱く滾る自分自身で互いに穿ち、貪り、掘り返し、汚し、嬲り、その全身で愛し合った。

 その脈動、飛沫、猛り、嗚咽、叫び、体温すら私は全て覚えている。

 そして、その日以降二人は度々私をその行為の現場に同席を要求した。

 時には見張りとして、時には盛り上げるためのスパイスとして、時には秘密を共有する友人として……


──────────────────────


※BL表現が含まれます。

本編にはほぼ関係ないのでBL表現が苦手な人は飛ばして次の話をお読みください。


読んでいただきありがとうございました。

ブクマ・評価してクレメンス。


……僕はNLです。

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